最新の心理測定法を用いて開発された包括的な患者報告アウトカムの評価法である「long COVID症状負担質問票(symptom burden questionnaire for long COVID:SBQ-LC)」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を経験した生存者において、long COVIDによる重要な症状の測定に有用で、介入効果の評価が可能であり、臨床管理における最良の診療法に結び付く有益な情報をもたらす可能性があることが、英国・バーミンガム大学のSarah E. Hughes氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年4月27日号に掲載された。
英国の新たなlong COVID評価法の開発と妥当性の検証
研究グループは、long COVIDによる症状負担の患者アウトカム評価法(SBQ-LC[第1版])を新たに開発し、その妥当性を検証する目的で、多段階的な混合研究法を用いた前向き研究を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成を受けた)。
2021年4月14日~8月1日の期間に、英国において実地試験のための遠隔データが収集され、ソーシャルメディアのチャンネルで特定されたlong COVID患者の支援グループで、実地試験への参加者の募集が行われた。
自己申告によるlong COVIDの成人(年齢18歳以上)患者13人(20~60歳、女性10人[77%])と臨床医10人により、SBQ-LCの項目内容の妥当性が評価された。次いで、274人(平均年齢45.0歳[範囲:21~70]、女性88%)のlong COVID患者により、質問票の草案が実地に検証された。
SBQ-LCの概念的枠組と初期の項目群は、既報の系統的レビューを参考に作成された。認知デブリーフィング(cognitive debriefing)のための患者へのインタビューとオンラインでの臨床医の調査の記録から主題分析が行われ、内容的妥当性(content validity)が確認された。
また、患者と住民参加型の支援グループによる合意形成のための議論(Therapies for Long COVID in non-hospitalised individuals: From symptoms, patient reported outcomes and immunology to targeted therapies[TLC研究])で、表面的妥当性(face validity)が確定された。
実地試験データのRasch分析により、項目と尺度が改良され、SBQ-LCの測定特性(measurement properties)に関する初期の証拠が提示された。
国際的な臨床試験に有用な可能性
SBQ-LC(第1版)は、患者報告アウトカムを測定するモジュール式の評価法であり、有望視されている心理測定特性を有する17の独立の尺度で構成される。回答者は、過去7日間の症状負担を二者択一形式または4点評定尺度を用いて評価する。
各尺度は、異なる症状の領域を対象としており、線形スコア(0~100点)への変換が可能な素点の合計となる。点数が高いほど、症状負担が大きいことを表す。
評定尺度の改良と項目の削減を行ったところ、すべての尺度でRaschモデルの一次元性(unidimensionality)と項目適合度(item fit)の要件が満たされた。また、評定尺度のカテゴリーは、許容範囲内のカテゴリー適合度統計量で順序付けされた。
17の尺度は、person reliability(r≧0.70:許容範囲、r≧0.80:良好、r≧0.90:きわめて良好)の範囲が0.34~0.87、person separation(1.5~2.0:許容範囲、2.0~3.0:良好、≧3.0:きわめて良好)は0.71~2.56、item separationは1.34~13.86、internal consistency reliability(クロンバックα係数≧0.7:許容範囲)は0.56~0.91だった。
著者は、「2021年12月現在、英国で約130万人、世界で1億人以上のlong COVIDまたはpost-COVID-19症候群の患者が存在し、本症はかなりの症状負担を伴い、労働能力や生活の質に悪影響を及ぼす多系統疾患であることが知られている。この新たな質問票は、long COVIDの国際的な臨床試験を行う際に有用と考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)