骨髄異形成症候群の患者へのメチル化阻害薬治療後に、がん遺伝子の脱メチル化とアップレギュレートが起こることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のYao-Chung Liu氏らによって確認された。2つのコホートの患者サンプルの分析と遺伝子座特異的脱メチル化技術「CRISPR-DNMT1-interacting RNA」(CRISPR-DiR)を組み合わせた検討で明らかになったという。メチル化阻害薬は現在、がん患者の治療に用いられているが、腫瘍遺伝子の再活性化およびアップレギュレートも可能かどうかは、十分に解明されていない。今回の結果を踏まえて著者は、「さらなる検討の必要性があることが判明した」と述べている。NEJM誌2022年5月26日号掲載の報告。
患者68例のメチル化阻害薬治療前後のサンプルを採取
研究グループは、2つの骨髄異形成症候群の患者コホートについて、メチル化阻害薬治療前後の骨髄サンプルを採取し、骨髄異形成症候群やその他がんで重要な役割を果たしている既知のがん遺伝子
SALL4へのメチル化阻害薬の影響を検証した。
第1コホートとして新たに骨髄異形成症候群の診断を受けた37例について、骨髄サンプルを採取。うち25例について、5-アザシチジンの4サイクル投与前後の骨髄サンプルを採取した。第2コホートでは、骨髄異形成症候群の診断を受けた43例について、メチル化阻害薬の5サイクル投与前後の骨髄サンプルを採取した。また、対照群として、健康なドナー10例からCD34-骨髄単核細胞を、また同5例からCD34+骨髄単核細胞を採取した。
SALL4発現の変化、治療反応性、臨床アウトカムについて、メチル化阻害薬治療との関連を調べた。
SALL4発現が低いか検出限界以下の白血病細胞株を用いて、
SALL4メチル化と発現との関連を調べた。
SALL4発現にきわめて重要なCpGアイランドを同定するためCRISPR-DiRを用いた。
SALL4アップレギュレートを30~40%で確認、不良なアウトカムと関連
メチル化阻害薬による治療後、
SALL4のアップレギュレートが第1コホートの40%(25例中10例)と第2コホートの30%(43例中13例)で認められ、不良なアウトカムと関連していた。
CRISPR-DiRの結果、5'非翻訳領域のCpGアイランドの脱メチル化が、
SALL4発現に非常に重要であることが判明した。細胞株や患者について、メチル化阻害薬による治療は、同じCpG領域の脱メチル化と、
SALL4発現のアップレギュレートを引き起こしたことが確認された。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)