新規抗体薬teclistamab、再発・難治性多発性骨髄腫に有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/06/22

 

 新規の抗体製剤teclistamabは、3クラスの薬剤(免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、抗CD38抗体)の投与歴がある再発・難治性多発性骨髄腫の治療において、深く持続的な奏効を高率にもたらし、安全性も良好であることが、フランス・University Hospital Hotel-DieuのPhilippe Moreau氏らが実施した「MajesTEC-1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年6月5日号に掲載された。teclistamabは、T細胞表面に発現しているCD3と、骨髄腫細胞表面に発現しているB細胞成熟抗原(BCMA)の双方を標的とし、T細胞の活性化とそれに続くBCMA発現骨髄腫細胞の溶解を誘導するT細胞再指向型二重特異性抗体で、本試験の用量設定第I相試験で有望な有効性が確認されていた。

9ヵ国の第I/II相試験の結果

 MajesTEC-1試験は、再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療におけるteclistamabの有効性と安全性の評価を目的とする国際的な多施設共同臨床試験であり、今回は、第I/II相試験の結果が報告された(Janssen Research and Developmentの助成による)。本試験では、2020年3月~2021年8月の期間に、9ヵ国35施設で参加者の登録が行われた。

 対象は、年齢18歳以上、国際骨髄腫作業部会(IMWG)の診断基準で再発・難治性骨髄腫と診断され、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、抗CD38抗体を含む、少なくとも3つの治療ラインを施行され、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance-status(ECOG PS)が0または1の患者であった。

 被験者は、teclistamab 0.06mg/kgおよび0.3mg/kgを2~4日間隔で漸増投与後に、全用量1.5mg/kgを週1回、皮下投与された。1サイクルの期間は、第I相試験が21日、第II相試験は28日だった。teclistamabの投与は、病勢進行、許容できない毒性、同意の撤回、死亡、試験終了(最後に登録された患者への初回投与から2年後と定義)のいずれかが発生するまで継続された。

 主要評価項目は全奏効(部分奏効以上)であった。

感染症、サイトカイン放出症候群、血球減少の頻度が高い

 165例(第I相試験40例、第II相試験 125例)が登録された。年齢中央値は64歳(範囲:33~84歳)で、女性が69例(41.8%)であった。前治療ライン数中央値は5(範囲:2~14)で、148例(89.7%)が直近の前治療ラインに抵抗性であり、128例(77.6%)が3クラスの薬剤(少なくとも1種の免疫調節薬、少なくとも1種のプロテアーゼ阻害薬、少なくとも1種の抗CD38抗体)に抵抗性、50例(30.3%)が5薬剤(少なくとも2種の免疫調節薬、少なくとも2種のプロテアーゼ阻害薬、少なくとも1種の抗CD38抗体)に抵抗性だった。

 追跡期間中央値14.1ヵ月(範囲:0.3~24.4)の時点で、全奏効は165例中104例(63.0%、95%信頼区間[CI]:55.2~70.4)で達成された。また、最良部分奏効以上は97例(58.8%)、完全奏効以上は65例(39.4%)で得られた。

 44例(26.7%)では、微小残存病変(MRD)が認められなかった。完全奏効以上の患者におけるMRD陰性割合は46%(30/65例)であった。

 奏効は持続的で深く、奏効期間中央値は18.4ヵ月(95%CI:14.9~評価不能)、無増悪生存期間中央値は11.3ヵ月(95%CI:8.8~17.1)、全生存期間中央値は18.3ヵ月(95%CI:15.1~評価不能)だった。

 有害事象では、サイトカイン放出症候群(72.1%[119例]、このうちGrade3は0.6%[1例]、Grade4は0%)の頻度が高かったが、これにより投与が中止された患者はいなかった。そのほか、好中球数減少(70.9%、Grade3/4は64.2%)、貧血(52.1%、Grade3/4は37.0%)、血小板減少(40.0%、Grade3/4は21.2%)の頻度が高かった。

 感染症の頻度も高かった(76.4%[126例]、Grade3/4は44.8%[74例])。また、神経毒性イベントが24例(14.5%、Grade4が1例)で発現した。このうち5例(3.0%、すべてGrade1/2)の9件のイベントは免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群で、7件はサイトカイン放出症候群と同時に発現したが、9件とも投与中止や減量をせずに消退した。

 著者は、「この集団において深い持続的な奏効が高い割合で達成されたことは、本薬剤がより広範な患者集団に臨床的利益をもたらす可能性を示している」としている。

(医学ライター 菅野 守)