新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で重症化リスクが高くニルマトレルビル治療の適応があると評価された患者において、ニルマトレルビル治療により65歳以上ではCOVID-19による入院および死亡が有意に減少したが、40~64歳では有益性は認められなかった。イスラエル・Clalit Research InstituteのRonen Arbel氏らが、同国半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析し、報告した。ニルマトレルビル治療は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のデルタ変異株(B.1.617.2)に感染した高リスクでワクチン未接種の患者において有効性が示されているが、オミクロン変異株(B.1.1.529)によるCOVID-19の重症化予防に関するデータは限られていた。NEJM誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。
40歳以上の高リスクCOVID-19患者を対象に、ニルマトレルビル治療の有効性を検証
研究グループは、イスラエル国民の約52%、高齢者の約3分の2が加入している同国最大の医療保険組織「Clalit Health Services」のデータを用い、同国でニルマトレルビル治療が開始された2022年1月9日から3月31日のデータを解析した。研究期間中、イスラエルではオミクロン株が優勢であった。
解析対象は、SARS-CoV-2感染が確認されCOVID-19と診断された40歳以上の外来患者で、重症化リスクが高くニルマトレルビル治療の適応があると評価された患者である。
主要評価項目はCOVID-19による入院、副次評価項目はCOVID-19による死亡で、時間依存共変量を用いるCox比例ハザード回帰モデルにより社会人口統計学的要因、併存疾患およびSARS-CoV-2免疫状態を補正し、ニルマトレルビル治療との関連を推定した。
65歳以上では、非投与と比較しCOVID-19入院/死亡が有意に低減
計10万9,254例が適格基準を満たし、このうち3,902例(4%)が研究期間中に1回以上ニルマトレルビル治療を受けた。65歳以上は10万9,254例中4万2,821例(39%)で、このうちニルマトレルビル治療例は2,484例(6%)であった。
65歳以上において、COVID-19による入院は、ニルマトレルビル治療群で11例(10万人日当たり14.7)、未治療群で766例(10万人日当たり58.9)に認められ、補正後ハザード比(HR)は0.27(95%信頼区間[CI]:0.15~0.49)であった。また、COVID-19による死亡は、ニルマトレルビル治療群で2例、未治療群で158例に認められ、補正後HRは0.21(95%CI:0.05~0.82)であった。
一方、40~64歳の患者では、COVID-19による入院は、ニルマトレルビル治療群で7例(10万人日当たり15.2)、未治療群で327例(10万人日当たり15.8)に認められ、補正後HRは0.74(95%CI:0.35~1.58)であった。また、COVID-19による死亡は、ニルマトレルビル治療群で1例、未治療群で16例に認められ、補正後HRは1.32(95%CI:0.16~10.75)であった。
(ケアネット)