侵襲的冠動脈造影(ICA)のために紹介された、安定胸痛を有する閉塞性冠動脈疾患(CAD)の検査前確率が中程度の患者において、初期画像診断に用いるCTはICAと比較して、有害心血管イベントのリスクは同等であることがすでに報告されているが、その有効性に男性と女性で差はないことが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のKlaus F. Kofoed氏ら「DISCHARGE試験」グループが報告した。CTは、CADの検査前確率が低~中程度の患者において、閉塞性CADを除外することが可能であるが、男性より女性で精度が低くなる可能性があり、CADの診断および臨床管理において、CTとICAの臨床転帰に関する有効性の男女差はこれまで不明であった。BMJ誌2022年10月19日号掲載の報告。
無作為化試験で主要評価項目MACE発生を比較
DISCHARGE試験は、欧州16ヵ国の26施設で実施された医師主導、実用的、評価者盲検、無作為化比較試験である。研究グループは、安定胸痛を有し、閉塞性CADの検査前確率が中程度(10~60%)で、ICAの目的で紹介された30歳以上の患者を、性別および施設で層別化してCT群とICA群に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。
男女別のサブグループ解析は事前に規定され、主要評価項目は主要有害心血管イベント(MACE:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)、重要な副次評価項目は拡張MACE(MACE、一過性脳虚血発作、主要な手技関連合併症の複合)および主要な手技関連合併症であった。
MACEリスクに男女差なし、CT群の男性で拡張MACE、女性で合併症が少ない
2015年10月3日~2019年4月12日の間に計3,667例(女性2,052例、男性1,615例)が無作為化され、検査を受けた3,561例(女性2,002例、男性1,559例)が修正intention-to-treat解析対象集団となった。
追跡調査期間中央値3.5年において、女性98.9%(2,002例中1,979例)、男性99.0%(1,559例中1,544例)が追跡調査を完了した。
MACE(p=0.29)、拡張MACE(p=0.45)、および主要な手技関連合併症(p=0.11)に関して、女性と男性で統計学的有意差は確認されなかった。また、女性と男性のいずれにおいても、MACEの発生率にCT群とICA群で差はなかった。
一方男性では、拡張MACEの発生率がCT群においてICA群より少なかった(22例[2.8%]vs.41例[5.3%]、ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.31~0.87)。女性では、主要な手技関連合併症のリスクがCT群においてICA群より低かった(3例[0.3%]vs.21例[2.1%]、HR:0.14、95%CI:0.04~0.46)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)