症候性の孤立性遠位深部静脈血栓症(DVT)の患者に対して、リバーロキサバンによる6週間の治療の後、さらに6週間の同薬の投与を行うと、プラセボと比較して、出血のリスクを増加させずに静脈血栓塞栓症の再発リスクが低減することが、イタリア・インスブリア大学のWalter Ageno氏らが実施した「RIDTS試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年11月23日号に掲載された。
6週と12週投与を比較するイタリアの無作為化試験
RIDTS試験は、イタリアの28施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2017年1月~2020年3月の期間に患者の登録が行われた(Bayerとインスブリア大学の助成を受けた)。
対象は、年齢18歳以上、下肢の症候性孤立性遠位DVTと診断され、標準的な用量のリバーロキサバンの投与を6週間受けた患者であった。被験者は、さらに6週間の同薬(20mg、1日1回)の追加投与を受ける群、またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、24ヵ月間追跡された。
有効性の主要アウトカムは静脈血栓塞栓症の再発であり、孤立性遠位DVTの進行、孤立性遠位DVTの再発、近位DVT、症候性肺塞栓症、致死的肺塞栓症の複合と定義された。安全性の主要アウトカムは、無作為化から最終投与後2日までの大出血の発現であった。
大出血は両群とも発現せず
402例が登録され、リバーロキサバン群に200例(平均[SD]年齢65.0[16.0]歳、女性58%、高リスク例93%)、プラセボ群に202例(65.3[15.4]歳、59%、94%)が割り付けられた。誘因のない孤立性遠位DVTは、リバーロキサバン群が81例(40%)、プラセボ群は86例(43%)であった。
有効性の主要アウトカムは、リバーロキサバン群が23例(11%)で発現し、プラセボ群の39例(19%)に比べ有意に少なかった(相対リスク:0.59、95%信頼区間[CI]:0.36~0.95、p=0.03)。有効性の主要アウトカム発現を1件防止するのに要する治療必要数は13(95%CI:7~126)であった。
孤立性遠位DVTの再発は、リバーロキサバン群が16例(8%)、プラセボ群は31例(15%)で認められた(相対リスク:0.52、95%CI:0.29~0.92、p=0.02)。近位DVTまたは肺塞栓症は、それぞれ7例(3%)および8例(4%)で発現した(0.88、0.33~2.39、p=0.80)。
大出血は、両群ともに認められなかった。臨床的に重要な非大出血は、両群とも1例(0.5%)であった。
著者は、「これらの知見は、本試験で除外されたがん関連の孤立性遠位DVTを有する患者には適用されず、他の抗凝固薬治療に外挿すべきではない。今後、抗凝固薬治療を必要としない可能性のある低リスク患者を特定するための検討が求められる」としている。
(医学ライター 菅野 守)