妊婦の罹患・死亡リスク、オミクロン株優勢中に増大/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/01/26

 

 新型コロナウイルスのオミクロン株が懸念される変異株となった半年間について調べたところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を受けた妊婦は、MMMI(maternal morbidity and mortality index、妊婦の罹患率・死亡率指数)リスクが増大していたことが明らかにされた。とくに、ワクチン未接種の重症COVID-19妊婦で、同リスク増大はより顕著だった。また、COVID-19の重症合併症に対するワクチンの有効性は、完全接種(2回またはAd26.COV2.Sワクチン1回)で48%と高かった。英国・オックスフォード大学のJose Villar氏らが、4,618人の妊婦を対象に行った大規模前向き観察試験「INTERCOVID-2022試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2023年1月17日号で発表された。

18ヵ国41病院を通じて試験

 INTERCOVID-2022試験は、18ヵ国41病院を通じて行われ、リアルタイムPCR検査でCOVID-19が確定した妊婦1人について、COVID-19と診断されていない2人の妊婦(マッチングなし)を、同時かつ連続的に対照として被験者に加えた。母親と新生児について、退院まで追跡した。

 主要アウトカムは、MMMIとSNMI(severe neonatal morbidity index、重度新生児罹患率指数)、SPMMI(severe perinatal morbidity and mortality index、重度周産期罹患率・死亡率指数)だった。

 ワクチン有効性は、母体リスクプロファイルで補正し推算した。

COVID-19妊婦、MMMIリスクは1.16倍、ワクチン非接種では1.36倍

 世界保健機関(WHO)がオミクロン株に対する懸念を表明した2021年11月27日から、2022年6月30日までに4,618人の妊婦を被験者として登録した。うち、1,545人(33%)がCOVID-19と診断され(中央値:妊娠36.7週)、3,073人(67%)はCOVID-19と診断されなかった。

 COVID-19群は対照群に比べ、MMMIリスク(相対リスク[RR]:1.16(95%信頼区間[CI]:1.03~1.31)、SPMMIリスク(1.21、1.00~1.46)の増大が認められた。SNMIについては、COVID-19群の対照群に対する増大が認められたが(1.23、0.88~1.71)、95%CI下限値は1を下回っていた。

 COVID-19群でワクチン非接種の妊婦は、MMMIリスクのさらなる増大が認められた(RR:1.36、95%CI:1.12~1.65)。

 重症COVID-19の妊婦は、重度母体合併症リスク(RR:2.51、95%CI:1.84~3.43)、周産期合併症リスク(1.84、1.02~3.34)、他科への紹介・集中治療室(ICU)入室・死亡のいずれかの発生リスク(11.83、6.67~20.97)の総合的なリスク増大がみられた。ワクチン非接種で重症COVID-19の妊婦は、MMMIリスク(RR:2.88、95%CI:2.02~4.12)と、他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生リスク(20.82、10.44~41.54)の増大がみられた。

 被験者のうちCOVID-19ワクチンを1回以上接種していた女性は2,886例(63%)で、完全接種またはブースター接種(3回またはAd26.COV2.Sワクチン2回)は2,476例(54%)だった。

 他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生に関するワクチン有効性(全ワクチン統合)は、ワクチン完全接種妊婦が48%(95%CI:22~65)、ブースター接種妊婦が76%(47~89)だった。COVID-19診断妊婦の同有効性は、それぞれ74%(48~87)、91%(65~98)だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 前田 裕斗( まえだ ゆうと ) 氏

東京科学大学 医歯学総合研究科 公衆衛生学分野