安定した基礎療法を受けている肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者において、sotaterceptはプラセボと比較し6分間歩行距離(6MWD)で評価した運動耐容能を有意に改善させることが、ドイツ・ハノーバー医科大学のMarius M. Hoeper氏らが21ヵ国91施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「STELLAR試験」の結果、報告された。PAHは肺血管リモデリングが関与する進行性の疾患で、治療法の進歩にもかかわらずPAH関連疾患の有病率/死亡率は依然として高い。sotaterceptは、PAHに関与するアクチビンと成長分化因子を捕捉するアクチビン受容体IIA-Fc(ActRIIA-Fc)融合タンパク質で、第II相のPULSAR試験において24週後の肺血行動態を改善することが示されていた。NEJM誌オンライン版2023年3月6日号掲載の報告。
24週時の6MWDの、ベースラインからの変化量を比較
研究グループは、安定した基礎療法を受けているPAH成人患者(WHO機能分類クラスIIまたはIII)を、sotatercept(開始用量0.3mg/kg、目標用量0.7mg/kg)群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、それぞれ3週ごとに皮下投与した。
主要エンドポイントは、24週時における6MWDのベースラインからの変化量。副次エンドポイントは、次の9項目を階層的に検定した。(1)複合項目の改善(6MWDの改善、NT-proBNP値の改善、WHO機能分類の改善またはクラスIIの維持)、(2)肺血管抵抗(PVR)のベースラインからの変化、(3)NT-proBNP値のベースラインからの変化、(4)WHO機能分類の改善、(5)死亡または初回臨床的悪化までの時間、(6)Frenchリスクスコア、(7)PAH-SYMPACT質問票の身体的影響ドメインスコアのベースラインからの変化、(8)同質問票の心肺症状ドメインスコアのベースラインからの変化、(9)同質問票の認知/感情影響ドメインスコアのベースラインからの変化。死亡または初回臨床的悪化までの時間は、最後の患者が24週時の診察を完了した時点に評価し、それ以外の項目はすべて24週時に評価した。
6MWDの変化量の群間差は40.8m
2021年1月25日~2022年8月26日の期間に適格性を評価された434例中、323例が無作為化され(sotatercept群163例、プラセボ群160例)、24週間の主要評価期間を完了した(データカットオフ日2022年8月26日)。
24週時における6MWDのベースラインからの変化量(中央値)は、sotatercept群34.4m(95%信頼区間[CI]:33.0~35.5)、プラセボ群1.0m(-0.3~3.5)で、群間差(Hodges-Lehmann推定量)は40.8m(95%CI:27.5~54.1、p<0.001)であった。
副次エンドポイントについては、(1)~(8)はプラセボ群と比較してsotatercept群で有意な改善が認められたが、(9)のPAH-SYMPACT質問票の認知/感情影響ドメインスコアは両群で有意差はなかった。
プラセボと比較してsotatercept群で多く発現した有害事象は、鼻出血、めまい、毛細血管拡張症、ヘモグロビン値上昇、血小板減少症、血圧上昇などであった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)