IPF標準治療へのziritaxestat追加、努力肺活量への影響は?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/05/25

 

 特発性肺線維症(IPF)でピルフェニドンまたはニンテダニブの標準治療を受けている患者、あるいは標準治療を受けていない患者において、開発中の新規オートタキシン阻害薬ziritaxestatの追加は、プラセボとの比較で臨床アウトカムを改善しなかったことが、2つの第III相無作為化試験で示された。米国・南カリフォルニア大学のToby M.Maher氏らが26ヵ国で行った「ISABELA 1試験」と「ISABELA 2試験」の結果で、両試験ともにデータ・安全性委員会の判定で早期に終了となった。IPFについては効果的で忍容性良好な治療の開発が待ち望まれている。JAMA誌2023年5月9日号掲載の報告。

26ヵ国で約1,300例を対象に試験

 2試験はアフリカ、アジア太平洋地域、欧州、中南米、中東および北米の26ヵ国で、IPF患者1,306例(ISABELA 1試験:106施設525例、ISABELA 2試験:121施設781例)を対象に、同一の試験デザインにて行われた。

 研究グループは被験者を無作為に1対1対1の3群に分け、ziritaxestat(経口)600mg、ziritaxestat(経口)200mg、プラセボをいずれも1日1回、試験地域の標準治療(ピルフェニドン、ニンテダニブ、または何も投与せず)に追加して少なくとも52週間投与した。

 主要アウトカムは、52週時点の努力肺活量(FVC)の年間減少率だった。主な副次アウトカムは、病勢進行、呼吸器関連の初回入院までの期間、SGRQ(St. George's Respiratory Questionnaire)総スコア(範囲:0~100、高スコアほど健康関連QOLが不良であることを示す)のベースラインからの変化だった。

 2018年11月に試験登録が開始され、ISABELA 1試験は2021年4月に、ISABELA 2試験は2021年3月に終了となったため、いずれもフォローアップは早期に完了となった。

FVCの年間減少率、両試験いずれの用量でも効果が認められず

 試験終了時点で、ISABELA 1試験の被験者数は525例(平均年齢70.0歳[SD 7.2]、男性82.4%)、ISABELA 2試験の被験者数は781例(69.8歳[7.1]、81.2%)だった。独立したデータ・安全性委員会が、ziritaxestatのリスク対効果プロファイルが試験継続を支持しないものであると結論付けたため、両試験は早期に終了した。

 両試験において、ziritaxestatはプラセボとの比較で、FVCの年間減少率を改善しなかった。ISABELA 1試験では、FVCの最小二乗平均年間減少率は、ziritaxestat 600mg群が-124.6mL(95%信頼区間[CI]:-178.0~-71.2)に対しプラセボ群は-147.3mL(-199.8~-94.7)であり(群間差:22.7mL、95%CI:-52.3~97.6)、同200mg群では-173.9mL(-225.7~-122.2)であった(プラセボとの群間差:-26.7mL、95%CI:-100.5~47.1)。

 ISABELA 2試験でも、FVCの最小二乗平均年間減少率は、ziritaxestat 600mg群が-173.8mL(95%CI:-209.2~-138.4)に対しプラセボ群は-176.6mL(-211.4~-141.8)であり(群間差:2.8mL、95%CI:-46.9~52.4)、同200mg群では-174.9mL(-209.5~-140.2)であった(プラセボとの群間差:1.7mL、95%CI:-47.4~50.8)。

 主な副次アウトカムについても、ziritaxestat群のプラセボ群に対するベネフィットは認められなかった。

 全死因死亡率が、ISABELA 1試験ではziritaxestat 600mg群8.0%、同200mg群4.6%、プラセボ群6.3%、ISABELA 2試験ではそれぞれ、9.3%、8.5%、4.7%報告された。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)