標準治療に不応・不耐の若年性特発性関節炎、バリシチニブが有効/Lancet

標準治療で効果不十分または不耐の若年性特発性関節炎患者の治療において、JAK1/2阻害薬バリシチニブはプラセボと比較して、再燃までの期間が有意に延長し、安全性プロファイルは成人のほかのバリシチニブ適応症で確立されたものと一致することが、英国・ブリストル大学のAthimalaipet V. Ramanan氏らが実施した「JUVE-BASIS試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月6日号で報告された。
20ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験
JUVE-BASISは、日本を含む20ヵ国75施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年12月~2021年3月に患者の登録が行われた(Incyteのライセンス下にEli Lilly and Companyの助成を受けた)。対象は、年齢2~<18歳で、若年性特発性関節炎(リウマトイド因子陽性の多関節型、リウマトイド因子陰性の多関節型、進展型少関節炎型、付着部炎関連関節炎型、乾癬性関節炎型)と診断され、1剤以上の従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)または生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)による少なくとも12週間の治療で効果不十分、または不耐の患者であった。
安全性/薬物動態の評価を行う期間(2週間)に年齢に基づくバリシチニブの用量(1日1回)が確定され、非盲検下の導入期間(12週間)として全例に成人(4mg)との等価用量のバリシチニブ(錠剤、懸濁剤)の投与が行われた。
導入期間の終了時に、若年性特発性関節炎-米国リウマチ学会(JIA-ACR)の30基準を満たした患者(JIA-ACR30レスポンダー)が、二重盲検下に同一用量のバリシチニブを継続投与する群またはプラセボに切り換える群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、疾患が再燃するか、二重盲検期間(最長32週[バリシチニブは導入期間と合わせて44週])が終了するまで投与した。
主要エンドポイントは、二重盲検期間中の疾患再燃までの期間であった。また、二重盲検期間中の有害事象の曝露補正発生率を算出した。
健康関連QOLも良好
220例(年齢中央値14.0歳[四分位範囲[IQR]:12.0~16.0]、女児152例[69%]、診断時年齢中央値10.0歳[IQR:6.0~13.0]、診断後の経過期間中央値2.7年[IQR:1.0~6.0])が登録された。このうち219例が非盲検下の導入期間にバリシチニブの投与を受け、12週時に163例(74%)がJIA-ACR30基準を満たした。二重盲検期間に、81例がプラセボ群、82例がバリシチニブ群に割り付けられた。二重盲検期間中の疾患再燃例(最小二乗平均)は、プラセボ群が41例(51%)、バリシチニブ群は14例(17%)であった(p<0.0001)。また、再燃までの期間は、バリシチニブ群に比べプラセボ群で短く(補正後ハザード比[HR]:0.241、95%信頼区間[CI]:0.128~0.453、p<0.0001)、再燃までの期間中央値はプラセボ群が27.14週(95%CI:15.29~評価不能[NE])、バリシチニブ群はNE(95%CI:NE~NE)(再燃例が50%未満のため)だった。
疾患活動性(JADAS-27など)や健康関連QOL(CHQ-PF50、CHAQ疼痛重症度スコア[視覚アナログ尺度])に関する有効性の副次エンドポイントも、プラセボ群に比べバリシチニブ群で良好であった。
バリシチニブの安全性/薬物動態評価期間または非盲検導入期間中に、220例中6例(3%)で重篤な有害事象が発現した。二重盲検期間中には、重篤な有害事象はバリシチニブ群の82例中4例(5%)(100人年当たりの発生率:9.7件、95%CI:2.7~24.9)、プラセボ群の81例中3例(4%)(10.2件、2.1~29.7)で報告された。
治療関連の感染症が、安全性/薬物動態評価期間または非盲検導入期間中に220例中55例(25%)で発現し、二重盲検期間中にはバリシチニブ群の31例(38%)(100人年当たりの発生率:102.1件、95%CI:69.3~144.9)、プラセボ群の15例(19%)(59.0件、33.0~97.3)で報告された。また、重篤な有害事象として二重盲検期間中にバリシチニブ群の1例で肺塞栓症が報告され、試験治療関連と判定された。
著者は、「バリシチニブによるJAKシグナルの阻害は、若年性特発性関節炎に関連する複数のサイトカイン経路を標的とし、既存の治療法に代わる1日1回投与の経口治療薬となる可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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