閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)と心血管疾患の双方を有する患者の治療において、持続陽圧呼吸療法(CPAP)はこれを行わない場合と比較して、主要有害心脳血管イベント(MACCE)の2次予防に全般的には有効ではないものの、CPAPのアドヒアランスが良好な患者ではMACCEのリスクを低減することが、スペイン・リェイダ大学のManuel Sanchez-de-la-Torre氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年10月3日号で報告された。
MACCE再発リスクへのCPAPの影響をIPDメタ解析で評価
研究グループは、OSAに対するCPAPによる治療がMACCEのリスクに及ぼす影響を評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(スペイン・カルロス三世保健研究所などの助成を受けた)。
医学関連データベースを用いて、2023年6月22日までに発表された論文を検索した。対象は、心血管疾患とOSAの双方を有する成人患者において心血管アウトカムおよび死亡に及ぼすCPAPの治療効果を評価した無作為化臨床試験であった。
選択された3つの研究(SAVE[2016年]、ISAACC[2020年]、RICCADSA[2016年])の論文の著者に、個別被験者データ(IPD)の提供を求めた。1段階および2段階のIPDメタ解析により、混合効果のCox回帰モデルを用いてMACCEの再発リスクに及ぼすCPAPの影響を評価した。また、CPAPの良好なアドヒアランス(≧4時間/日)の効果についても検討した。
主要アウトカムは、初発MACCE(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術、心不全による入院、不安定狭心症による入院、一過性脳虚血発作による入院)であった。
1段階と2段階解析の双方で同様の結果
3研究の参加者4,186例を解析に含めた。82.1%が男性、平均BMIは28.9(SD 4.5)、平均年齢は61.2(SD 8.7)歳で、平均無呼吸低呼吸指数は31.2(SD 17)イベント/時であり、71%が高血圧を有し、50.1%がCPAPを受けており(平均アドヒアランス:3.1[SD 2.4]時間/日)、49.9%はCPAPを受けていなかった(通常治療)。平均追跡期間は3.25(SD 1.8)年。
主要アウトカムであるMACCEは691例(16.5%)で発生した(CPAP群349例、非CPAP群342例)。1段階解析によるITT解析では、MACCEの発生に関して両群間に統計学的に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.87~1.17、p=0.94)。
2段階解析は1段階解析の結果を裏付けるもので、両群間に有意差はみられなかった(HR:0.99、95%CI:0.82~1.19、p=0.32)。
一方、on-treatment解析では、CPAPのアドヒアランスが不良な患者(<4時間/日)と比較して良好な患者(≧4時間/日)では、MACCEのリスクが有意に低下した(HR:0.69、95%CI:0.52~0.92、p=0.01)。
著者は、「OSA患者における心血管疾患の2次予防では、CPAPのアドヒアランスが重要な因子であることが示唆された」とまとめ、「このメタ解析の結果は、OSAと心血管疾患を有する患者のうち、CPAP治療が最も有益である可能性が高い患者を特定するための厳格な根拠を提供し、患者の異質性が治療効果にどのように影響するかに関するより広範な議論に寄与する」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)