発症100日以内の10~30歳の1型糖尿病患者に対し、バリシチニブの48週間経口投与は、プラセボ投与と比較して、混合食負荷後のC-ペプチド濃度で測定したβ細胞機能を維持すると思われることが、オーストラリア・St. Vincent's Institute of Medical ResearchのMichaela Waibel氏らによる第II相の二重盲検プラセボ対照無作為化試験で示された。バリシチニブなどJAK阻害薬は、サイトカインシグナル伝達を阻害することで、いくつかの自己免疫疾患に対して有効な疾患修飾薬である。バリシチニブが1型糖尿病のβ細胞機能を維持可能かどうかは明らかになっていなかった。NEJM誌2023年12月7日号掲載の報告。
対プラセボで、2時間混合食負荷試験中のC-ペプチド濃度平均値を比較
研究グループは2020年11月~2022年2月に、オーストラリアの医療機関4ヵ所を通じて、1型糖尿病の診断後100日以内の10~30歳を対象に試験を開始した。
被験者を無作為に2群に分け、一方にはバリシチニブ(1日1回4mg)を48週間経口投与、もう一方にはプラセボを投与した。
主要アウトカムは、48週時点の2時間混合食負荷試験中の平均C-ペプチド濃度で、濃度-時間曲線下面積で算出した。副次アウトカムは、糖化ヘモグロビン値のベースラインからの変化、1日インスリン投与量、持続血糖モニタリングで評価した血糖コントロールの指標などだった。
1日インスリン投与量、糖化ヘモグロビン値は両群同等
被験者総数は91例(バリシチニブ群は60例、プラセボ群は31例)だった。
48週時点の混合食負荷後平均C-ペプチド濃度の中央値は、バリシチニブ群は0.65 nmol/L/分(四分位範囲[IQR]:0.31~0.82)、プラセボ群0.43 nmol/L/分(0.13~0.63)だった(p=0.001)。
48週時点の1日インスリン投与量平均値は、バリシチニブ群0.41 U/kg/日(95%信頼区間[CI]:0.35~0.48)、プラセボ群で0.52 U/kg/日(0.44~0.60)だった。糖化ヘモグロビン値平均値も両群で同等だった。
一方で、48週時点の持続血糖モニタリングによる血糖値の変動係数平均値は、バリシチニブ群29.6%(95%CI:27.8~31.3)、プラセボ群33.8%(31.5~36.2)だった。
有害事象の発現頻度および重症度は両群で同程度で、重篤な治療関連有害事象は報告されなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)