顎関節症による慢性疼痛に有効な介入とは/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2024/01/10

 

 顎関節症(TMD)に伴う慢性疼痛の管理では、エビデンスの確実性が「中」または「高」の臨床試験に限定すると、バイオフィードバック療法またはリラクゼーション療法で補強した認知行動療法(CBT)や、顎関節のモビライゼーションなどの、対処を促す介入や、顎関節の可動を促進する介入が最も効果的であることが、中国・蘭州大学のLiang Yao氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年12月15日号に掲載された。

介入的RCT論文のネットワークメタ解析

 研究グループは、顎関節症に伴う慢性疼痛に対する種々の治療法の有効性を比較検討する目的で、無作為化臨床試験(RCT)の系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(Chronic Pain Centre of Excellence for Canadian Veteransの助成を受けた)。

 2021年5月までに医学関連データベース(MEDLINE、EMBASE、CINAHL、CENTRAL、SCOPUS)に登録された文献を検索し、2023年1月にも再検索を行った。対象は、顎関節症に伴う慢性疼痛を呈する患者を登録した介入的RCTの論文とした。

 レビューでは、疼痛緩和、身体機能、情緒機能、役割機能、社会的機能、睡眠の質、有害事象など、患者にとって重要なアウトカムをすべて把握した。GRADEアプローチを用いて、エビデンスの確実性を評価し、有益性が最も高い介入から最も低い介入に分類した。

疼痛緩和には8つの介入が有効

 233件のRCTをレビューの対象とし、このうち153件(8,713例、59の介入または介入の組み合わせ)をネットワークメタ解析に含めた。以下は、プラセボまたはシャム(偽治療)との比較で有効性を評価したRCTに関する解析結果である。

 疼痛に対しては、8つの介入が、「中」または「高」の確実性のエビデンスに基づきその有効性が支持された。

 疼痛緩和に関して、最も有効な治療は次の3つと考えられた。(1)バイオフィードバック療法またはリラクゼーション療法で補強したCBT(1~10cmの視覚アナログ尺度で、疼痛緩和における意義のある最小差[MID]を達成するためのリスク差[RD]:36%[95%信頼区間[CI]:33~39])、(2)セラピストの支援による顎関節のモビライゼーション(RD:36%[31~40])、(3)徒手的トリガーポイント療法(RD:32%[29~34])。

 次の5つの介入はRDが23~30%の範囲であり、上記の治療法に比べ有効性は劣るが、プラセボと比較して高い効果を示した。(1)CBT、(2)監視下姿勢訓練、(3)監視下開口訓練とストレッチング、(4)監視下開口訓練とストレッチングと徒手的トリガーポイント療法、(5)通常ケア(自宅での訓練、自己ストレッチング、恐怖/不安の緩和[reassurance]など)。

身体機能の改善には4つの介入が有効

 身体機能については、確実性が「中」のエビデンスに基づき、次の4つの介入の改善効果を確認した。(1)監視下開口訓練とストレッチング(SF-36の身体機能の要約スコアにおけるMIDの5点達成のRD:43%[95%CI:33~51])、(2)マニピュレーション(RD:43%[25~56])、(3)鍼治療(RD:42%[33~50])、(4)監視下開口訓練と顎関節のモビライゼーション(RD:36%[19~51])。

 これら以外の介入による疼痛緩和、身体機能の改善に関するエビデンス、および有害事象に関するエビデンスはすべて、確実性が「低」または「非常に低」であった。

 著者は、「BMJ Rapid Recommendationでは、エビデンスに基づくガイダンスが示されている」としている。

(医学ライター 菅野 守)