日本における慢性疼痛・片頭痛患者の医療アクセスへの障壁

慢性疼痛および片頭痛は、患者のQOLや生産性の低下などの経済的な負担が大きいにもかかわらず、十分に治療されていないケースが少なくない。治療を受けない理由を明らかにすることは、介護を求める行動を改善するための介入を可能にするためにも重要である。しかし、日本において、疾患特有の治療を受けない理由に関する報告は限られている。順天堂大学の唐澤 佑輔氏らは、慢性疼痛および片頭痛を有する未治療の患者における医療アクセスへの障壁を明らかにするため、調査を行った。その結果から、痛みに伴うリスクとその原因、安価な治療選択肢の利用の可能性、適切な治療施設へのアクセスについて患者教育を行うことで、治療率が向上する可能性が示唆された。Frontiers in Pain Research(Lausanne, Switzerland)誌2023年10月3日号の報告。
慢性疼痛および片頭痛患者を対象に、非介入的な横断的インターネット調査を行った。主要評価項目は、慢性疼痛および片頭痛の未治療の理由とした。副次的評価項目は、患者背景、患者報告ベースのアウトカム、ジェネリック医薬品またはオーソライズド・ジェネリック(AG)の認知度、医療アクセスに関する因子を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・2021年、慢性疼痛患者1,089例(未治療:605例、55.6%)および片頭痛患者932例(未治療:695例、74.6%)を対象に調査を行った。
・治療を受けない理由は、慢性疼痛では「痛みを我慢できる」、片頭痛では「市販薬で疼痛管理が可能」であった。
・未治療の慢性疼痛と有意な関連が認められた因子は、若年であること、最寄りの医療機関までの移動時間が短い、痛みが少ない、ADLスコアが高い、後発医薬品やオーソライズド・ジェネリック(AG)に対する認識の低さであった。
・未治療の片頭痛と有意な関連が認められた因子は、女性であること、最寄りの医療機関までの移動時間が短い、人口5万人未満の自治体に居住、中等度~重度の痛みを経験、ADLスコアが高い、AGに対する認識の低さであった。
・AGの認識率は、治療を受けた患者のほうが、未治療の患者よりも2倍高かった。
(鷹野 敦夫)
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