乳がんの診断時年齢が50歳以上で根治手術から3年が経過し、再発のない女性では、年1回のマンモグラフィ検査に対し、2年または3年に1回の低頻度マンモグラフィ検査は、乳がん特異的生存率、無再発率、全生存率に関して非劣性であることが、英国・ウォーリック大学のJanet A. Dunn氏らが実施した「Mammo-50試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年2月1日号で報告された。
英国の非劣性を検証する無作為化第III相試験
Mammo-50試験は、年1回のマンモグラフィ検査に対する年1回以下の低頻度マンモグラフィ検査の非劣性の評価を目的とする実践的な無作為化第III相試験であり、2014年4月~2018年9月の期間に英国の114の病院で参加者を登録した(英国国立衛生研究所[NIHR]Health Technology Assessment programmeの助成を受けた)。
侵襲性または非侵襲性乳がんの初回診断時年齢が50歳以上で、根治手術を受けた後、再発のない状態で3年が経過した女性を対象とした。被験者を、年1回のマンモグラフィ検査を受ける群、または年1回以下の低頻度マンモグラフィ検査(乳房温存術を受けた患者は2年ごと、乳房全切除術を受けた患者は3年ごと)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付け、6年間追跡した。
主要評価項目は2つで、乳がん特異的生存率および費用対効果とした。なお本論では、乳がん特異的生存率の解析結果を報告している。乳がん特異的生存は試験登録日から乳がんによる死亡までの期間とし、非劣性マージンは3%に設定した。
副次評価項目として、無再発期間(初回局所領域再発、遠隔転移、新たな原発乳がんの発生のない期間)、全生存期間などを評価した。
5年乳がん特異的生存率:98.1%vs.98.3%
5,235例(年齢中央値66歳[四分位範囲[IQR]:60~71])を登録し、年1回群に2,618例、低頻度群に2,617例を割り付けた。3,858例(73.6%)が60歳以上で、4,202例(80.3%)が乳房温存術を受け、4,576例(87.4%)が浸潤性の病変を有し、1,159例(22.1%)がリンパ節転移陽性、4,330例(82.7%)がエストロゲン受容体陽性、3,811例(72.8%)がホルモン療法を継続中であった。
追跡期間中央値は5.7年(IQR:5.0~6.0、根治手術後8.7年)で、この間に343例が死亡し、うち116例は乳がんによる死亡であった(年1回群61例、低頻度群55例)。
5年乳がん特異的生存率は、年1回群が98.1%(95%信頼区間[CI]:97.5~98.6)、低頻度群は98.3%(97.8~98.8)だった。補正後ハザード比(HR)は0.92(95%CI:0.64~1.32)であり、年1回群に対する低頻度群の非劣性が示された(非劣性のp<0.0001)。
大幅なコスト削減の可能性も
5年無再発率は、年1回群で94.1%(95%CI:93.1~94.9)、低頻度群で94.5%(93.5~95.3)であった。補正HRは1.00(95%CI:0.81~1.23)であり、年1回群に対し低頻度群は非劣性であった(2%マージンにおける非劣性のp=0.0024)。また、5年全生存率は、年1回群94.7%(95%CI:93.8~95.5)、低頻度群94.5%(93.5~95.3)で、補正HRは1.07(95%CI:0.87~1.33)と、低頻度群の非劣性が確認された(2%マージンにおける非劣性のp=0.0078)。
乳がんイベント345件のうち224件(64.9%)が緊急入院または症状の発現による病院システムへの再紹介によるもので、内訳は年1回群が175件中108件(61.7%)、低頻度群は170件中116件(68.2%)であった。
著者は、「本試験のデータは、これらの女性では診断から3年以降にマンモグラフィによるサーベイランスの頻度を少なくしても、安全性が保たれ、生存、再発の発見、新たな原発がんの検出に有害な影響を及ぼさず、大幅なコスト削減の可能性があることを示している」「これらのエビデンスは、この患者群におけるマンモグラフィ・サーベイランスに関するガイドラインの改訂に使用可能と考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)