CLEAR!ジャーナル四天王|page:74

女性の片頭痛は心血管疾患イベントおよび死亡リスクを増大(解説:中川原 譲二 氏)-556

ドイツ・ベルリン大学附属シャリテ病院のTobias Kurth氏らは、約12万例の女性を対象とした20年以上に及ぶ前向きコホート研究を解析し、女性の片頭痛と心血管死を含む心血管疾患イベントとの間に一貫した関連が認められたことを報告した(BMJ誌オンライン版2016年5月31日号掲載の報告)。

カテーテル関連尿路感染症の予防プログラム(解説:小金丸 博 氏)-555

カテーテル関連尿路感染症は、デバイスに関連して起こる代表的な医療関連感染症の1つである。医療関連感染症を減少させることは非常に重要な課題であり、国を挙げて取り組みが行われている。本論文では、米国において国家的プロジェクトとして行われているCAUTIの予防プログラムが、非ICU患者における尿道カテーテルの使用率およびCAUTIの発生率を有意に低下させることが示された。

関節リウマチに対してリツキシマブはTNF阻害薬と効果は同等(非劣性)で費用対効果はむしろ高い(解説:金子 開知 氏)-554

リツキシマブは、CD20(成熟B細胞の表面抗原)を標的としたキメラ型モノクローナル抗体であり、TNF阻害薬やIL-6阻害薬とは異なる作用点を有する生物学的製剤である。リツキシマブの投与により自己抗体産生が低下し、自己免疫性疾患の治療効果が期待されている。わが国では、関節リウマチ(RA)に対するリツキシマブの保険適用はないが、欧米ではTNF阻害薬に抵抗性のRAに対して認可されている。これまでRA治療の生物学的製剤導入療法として、リツキシマブとTNF阻害薬の有効性、安全性、費用対効果などを直接比較した臨床研究はなかった。

BMJは権威ある“一流”雑誌?〜大規模試験の意義を考える〜(解説:西垣 和彦 氏)-553

『ありがとう、センテンス・スプリング…』。今年前半にはやった“ゲスの極み”と化した大衆雑誌に掲載された記事であるが、これが信じられないほど売れた。この記事からは、何ら自身の生産性を上げるものでも、何ら知識欲を満たすものでもなく、単に時間を浪費させるだけのものに過ぎないことは明白であるが、現実として、とにもかくにもこの雑誌の当該号は売れたのである。

アスピリンの脳卒中早期再発予防効果(解説:内山 真一郎 氏)-552

一過性脳虚血発作や急性虚血性脳卒中に対するアスピリンの長期再発予防効果は有意ではあるものの、わずかであるが、TIAやAISは早期の再発リスクが大きいことが知られている。そこで、オックスフォード大学のRothwell教授らは、これまでに行われたアスピリンのプラセボ対照比較試験の対象となった症例の生データを用いて、TIAやAISにおけるアスピリンの早期再発予防効果を発症後の期間別にメタ解析した。また、同様な解析をアスピリンとジピリダモールの併用療法についても行った。

BMIと全病因死亡率関係の正しい理解のために! (大規模システマティックレビューとメタ解析からのメッセージ)(解説:島田 俊夫 氏)-544

BMIと全病因死亡率(全死亡率)の関係は、世界的に大きな注目を集めている。また、メタボ症候群との絡みからも、BMIと全死亡率との関係の重要性は増加している。2016年5月5日にBMJ誌に掲載されたDagfinn Aune氏らの論文は、BMIと全死亡率の関係に関する大規模システマティックレビューとメタアナリシス(SR-MA)である。

「研究」からプロの「ビジネス」への転換:ランダム化比較試験の現在(解説:後藤 信哉 氏)-542

長らく臨床をしていると、日本にいても肺塞栓症などの経験はある。1980年代~90年代には循環器内科以外の内科の病棟管理もしていたが、一般の内科の救急入院症例に対して一般的に抗凝固療法が必要と感じたことはなかった。中心静脈カテールを内頸静脈から入れることが多かったが、内頸静脈アプローチが失敗した場合、下腿静脈アプローチとならざるを得ない場合もあった。後日、米国に友人を持つようになると、彼らにとっては下腿静脈からの留置カテーテルは血栓源として恐れられていることを知って、日米の差異に驚愕した。

医療機器臨床試験の事前届出システム:日米どちらのシステムが良いのか?(解説:折笠 秀樹 氏)-541

米国FDAは医療機器をリスクの程度に応じて、Class I~IIIの3種類に分類している。承認プロセスとしては、免除(Exemption)・届出510(k)・承認(Premarket approval;PMA)の3種類がある。Class I(低リスク)ではほとんどが免除であり、Class II(中リスク)ではほとんどが届出510(k)、そしてClass III(高リスク)は承認(PMA)を課せられることが多い。先発機器と実質的同等(substantially equivalent)であれば届出で済ませられるが、そうでなければ承認が必要となる。承認の場合には、安全性・有効性を証明する臨床データ、つまり臨床試験が必須となる。

SPRINT試験:frailな高齢者でも厳格な降圧が有用であることを示した点で画期的、ただし腎機能の悪化や有害事象も起こりやすい(解説:桑島 巖 氏)-540

今回のSPRINTサブ解析では、75歳以上の高齢者高血圧では収縮期血圧140mmHg未満を目指す標準降圧群よりも、120mmHg未満の厳格降圧群のほうが生命予後の改善に良好であることを示した点で画期的である。サブ解析とはいえども対象数は2,636例と、解析には十分堪えられる症例数であり、信頼性は高い。

SOCRATES試験:薬剤開発は難しい~良いと示すか、良さそうで終えるかの大きな相違(解説:後藤 信哉 氏)-539

薬剤の適応取得には、薬剤の有効性、安全性の科学的証明が必須と考えるのが世界のルールである。抗血小板薬を長期大量投与すれば出血イベントは増えると予想され、血栓イベントは減ると予想される。当局の認可承認を目指す試験では、過去の標準治療に比較して血栓イベントを減らし、出血イベントに差がないことを示すことが求められる。登録症例数が増えれば、臨床試験にかかるコストは増える。症例登録に時間がかかれば、認可承認されても十分利益を得る前に、薬剤の特許と独占販売権が消失してしまう。薬剤の認可承認を目指す臨床試験は本当に難しい。盲検のキーを開けるまで、試験関係者は胃がただれるほどのストレスであろう。

サブプライムローンとEBMの類似性(解説:後藤 信哉 氏)-537

日本語と異なり、英語は決定論的、論理的言語である。日本語で考えるわれわれ日本人は、英語で考える米英人の発想法を完全には理解できない。サブプライムローンを販売した米国の金融会社は、「将来経済は成長する」という前提が正しい限り「サブプライムローンは破綻しない」と人々を説得し、その説得には論理性があったので、多くの人は自分の今の収入以上のローンを抱えた。確かに、100年の視点でみれば「経済は成長する」のかもしれないが、数年の規模では成長したり衰退したりすることを、われわれは感覚的に実感している。日本語の論理性は英語ほど精緻ではないので、日本人であれば自分の収入に見合わない借金は「なんか怖い」と感じる人が多いだろう。日本語は論理性では英語に劣るが、その分、日本語で考えるわれわれは米英人より直感力が優れている。