CLEAR!ジャーナル四天王|page:82

高齢者に対する高用量インフルエンザワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-238

高齢者では若年成人と比較して、インフルエンザワクチン接種後に誘導される抗体価が低いと報告されている。そこで米国では、2009年に通常の4倍量の抗原を含む高用量インフルエンザワクチンが、65歳以上の高齢者を対象に認可された。高用量ワクチン接種により高い抗体価が得られることは報告されていたが、インフルエンザ様疾患の発症を減らすことができるかどうかはわかっていなかった。

高血圧治療は個々のリスク因子合併を考慮した“トータルバスキュラーマネージメント”が重要(解説:桑島 巌 氏)-237

日本動脈硬化学会によるガイドラインでは、高脂血症の薬物治療開始基準を一律に決定するのではなく、性、年齢、血圧、糖尿病の有無など血管系リスク層別化を考慮した治療目標を設定すべきことが示されている。これは、これまでのメタ解析で、血管合併症のリスクの高い症例ほど薬物治療による絶対的リスク減少が大きいことが明らかになっているからである。

慢性心不全治療のパラダイムシフト:ACE阻害薬はもはや標準薬ではない!(解説:平山 篤志 氏)-236

慢性心不全患者では、代償機転としてレニン・アンジオテンシン(RA)系が活性化され血管収縮による後負荷や水分貯留による前負荷が増加している。一方で、Na利尿ペプチド、アドレノメジュリンなどのペプチドがネプリライシンにより分解され、その血管拡張作用が減弱し、後負荷増加となる。このような代償機転の持続が慢性心不全の悪化につながることから、RA系阻害に加え、ネプリライシン阻害が心不全の予後改善につながると期待された。

脳卒中発症後の手術では、心血管有害事象のリスクが高く、時間依存的に関連(解説:中川原 譲二 氏)-234

虚血性脳卒中新規発症例に対する手術タイミングは重要な問題であるが、これまで不十分に扱われてきた。デンマーク・コペンハーゲン大学のMads E. Jorgensen氏らは、同国住民コホートで待機的非心臓手術を受けた約48万件の手術データを後ろ向きに解析し、とくに発作後9ヵ月未満で手術を行った場合は、脳卒中既往は術後の心血管系の有害転帰と関連することを明らかにした。

2型糖尿病コントロール困難例におけるインスリンポンプ療法の有用性(解説:七里 眞義 氏)-231

強化インスリン療法によっても血糖コントロールに難渋する2型糖尿病患者は数多い。OpT2mise試験は1日平均100単位以上のインスリンを使用してもコントロール不良な331例を、インスリンポンプ療法群と頻回注射療法群に割り付けて比較した「無作為化並行群間比較試験」であるが、より少ないインスリン量で低血糖も増やさず、より良好な血糖コントロールを達成でき、CGMで計測した高血糖持続時間も大きく減少させることができた。

閉塞性睡眠時無呼吸への夜間酸素療法 ―CPAPよりアドヒアランスはよいが効果は劣る―(解説:高田 佳史 氏)-230

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者への持続陽圧呼吸(CPAP)療法は、高血圧の発症予防や降圧に有効であるが、その効果はアドヒアランスに依存することも知られている1,2)。本論文は、アドヒアランスに優れた夜間酸素療法との無作為割り付け試験の報告である。

アポ蛋白C3は動脈硬化性疾患の新たな治療標的か?(解説:山下 静也 氏)-229

APOC3は血清アポリポ蛋白(アポ)C3をコードする遺伝子であり、アポC3はトリグリセライド(TG)リッチリポ蛋白、とくに動脈硬化惹起性の強いレムナントリポ蛋白の蛋白成分の1つである。カイロミクロン、VLDLなどのTGリッチリポ蛋白のTGが、リポ蛋白リパーゼ(LPL)の働きで分解され、遊離脂肪酸を放出してレムナントリポ蛋白となる過程で、アポC3はLPLによる加水分解を阻害することにより血清TGレベルを上昇させる1)。この作用はアポC2のLPL活性化作用とはまったく逆である。さらに、アポC3はTGリッチレムナントリポ蛋白の肝臓での取り込みを抑制する2)。したがって、アポC3の過剰は高TG血症、高レムナント血症、食後高脂血症を引き起こすことが知られている。

慢性呼吸器疾患増悪の入院症例に対する、入院中早期リハビリテーション導入についてのランダム化比較試験(解説:小林 英夫 氏)-228

本論文は、慢性呼吸器疾患による入院症例において、入院早期の呼吸リハビリテーション開始が1年間の観察期間にどのような影響を及ぼすかを検討したランダム化比較試験である。結果を概括すると、早期リハビリテーション導入は再入院リスクを低下させず(主アウトカム)、機能回復増進にも結び付かず、1年間の死亡率が高いという結果であり、早期リハビリテーション導入は推奨されない、としている。

炎症性腸疾患患者における抗TNF-α薬と発がんリスクとの関連(解説:上村 直実 氏)-227

炎症性腸疾患(IBD)に対して、成分栄養を含む食事療法、サラゾピリン・メサラジン、ステロイド、免疫抑制薬、血球成分除去、外科的腸切除術など種々の治療が行われているが、最近では高い有用性が報告されている分子標的薬の抗TNF-α薬が頻用されている。抗TNF-α薬は発がんリスクを増大する可能性を指摘する報告もあったが、今回、デンマークにおけるIBD、ならびに、がん患者の全国レジストリを用いて施行された大規模コホート研究の結果、抗TNF-α薬投与は発がんリスクの増大と関連しないことがJAMAに報告された。

DESは生命予後改善効果を持つ!?従来の説に一石(解説:野間 重孝 氏)-226

 安定型冠動脈疾患に対する冠動脈再建術の最も重要な目的は生命予後の改善であり、その目的のために心筋梗塞や不安定狭心症の発生を予防することにある。同時に、狭心症状の改善による生活の質(QOL)の向上もまた重要であることはいうまでもないが、両者は必ずしも両立するとは限らない。

EBMがもたらした、究極の“心血管イベント抑制”薬ポリピルは、実現するか(解説:石上 友章 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(224)より-

Lawらは、2009年BMJ誌に、冠動脈疾患、脳卒中の発症の予防に対する異なるクラスの降圧薬の効果を定量的に決定するとともに、降圧薬治療の適切な対象を検討する目的で、5種類の主要降圧薬群(チアジド系薬剤、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬)を対象にした、1966年~2007年の間の臨床試験、全147試験のメタ解析を行った結果を報告した1)。

「心筋梗塞治療」を追いかける「虚血性脳卒中治療」(解説:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(223)より-

歴史は繰り返す。1980年代に、急性心筋梗塞に対するt-PA治療が米国を中心に広く普及した。当初、「発症後6時間以内の心筋梗塞」が適応とされていたが、「発症後24時間以内」でも有効とされ適応が広まった。医療機関へのアクセスが遠い米国では、心筋梗塞症例を救急搬送するときに救急車内での投与も施行された。血栓溶解により虚血を改善すれば、臓器機能の改善の著しい症例が一部ある。