医療一般|page:492

いま一度、ハロペリドールを評価する

 ハロペリドールは世界中で最も高頻度に使用されている抗精神病薬の1つである。過去の解説的(narrative)非システマティックレビューにより、さまざまな第一世代(従来型、定型)抗精神病薬との間に有効性の差がないと報告され、それに基づき「各種第一世代抗精神病薬の有効性は同等である」という根拠のない精神薬理学的な仮説が確立され、テキストや治療ガイドラインに組み込まれている。しかし一方で、仮説は臨床で受ける印象と相反する面があり、質の高いシステマティックレビューの実施が強く求められていた。ドイツ・ミュンヘン工科大学のMarkus Dold氏らは、ハロペリドールの有効性、受容性、忍容性を他の第一世代抗精神病薬と比較するため、メタ解析を実施した。その結果、ハロペリドールにおいてアカシジアの発現が少なかったことを除き、統計学的な有意差は確認されなかった。ただし、「解析対象となった臨床試験はサンプルサイズが小さく、方法論的に質が低いものであった。明確な結論を得るには質の高い臨床試験が必要である」と指摘している。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2015年1月16日号の掲載報告。

モノクロロ酢酸はいぼ治療の新たな選択肢

 疣贅(いぼ)の治療として凍結療法やサリチル酸が用いられるが、効果が得られないことも多い。オランダ・ライデン大学のSjoerd C Bruggink氏らは、モノクロロ酢酸が凍結療法あるいは凍結療法+サリチル酸併用療法に代わる、痛みのない効果的な治療選択肢となりうることを無作為化試験で示した。Journal of Investigative Dermatology誌オンライン版2015年1月13日号の掲載報告。

アリピプラゾール持効性注射薬の安全性は

 米国・大塚製薬のArash Raoufinia氏らは、統合失調症患者に対するアリピプラゾール月1回投与(アリピプラゾール持効性注射薬400mg:AOM400)の導入について、薬物動態学的(PK)データ、PKシミュレーションおよび臨床試験を概説し発表した。すべてのデータ所見は、統合失調症患者へのAOM導入時の投与量は400mgとすることを支持するものであり、すでに経口アリピプラゾールを服用し症状が安定している患者への導入の有効性、安全性、忍容性が確認されていることなどを報告した。Current Medical Research & Opinion誌オンライン版2015年1月14日号の掲載報告。

神経症傾向だと認知症リスクが高い

 パーソナリティ特性は認知症リスクと関連している。しかし、認知機能の推移との関連はほとんどわかっていない。イタリア・ボローニャ大学のMartina Luchetti氏らは、高齢者における主要なパーソナリティ特性と認知機能ならびにその低下との関連性を検討し、既報のメタアナリシスを行った。その結果、パーソナリティは高齢者における認知機能低下と関連しており、これはすでに確立している臨床因子やライフスタイル因子に匹敵することが明らかになった。The journals of gerontology. Series B, Psychological sciences and social sciences誌オンライン版2015年1月12日号の掲載報告。

重症うつ病と双極性障害の関係:徳島大

 重症うつ病は、双極性障害(BD)へと診断が変わるリスク因子の可能性がある。また精神病性うつ病(PD)は、BDと一貫した関連が認められる。徳島大学の中村 公哉氏らは、重症うつ病を有し初回入院した患者の、BDのリスクと精神病性特徴を調べ、重症うつ病診断の安定性、およびPDと非PDとの違い、さらに電気痙攣療法(ECT)の効果について検討した。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2014年12月22日号の掲載報告。

腰痛に対する植物薬の実力は?

 非特異的腰痛に対する植物薬(herbal medicine)の有効性を検討する目的で、米国・ミシガン大学のHanna Oltean氏らはシステマティックレビューを行った。その結果、トウガラシはプラセボに比べ疼痛軽減に有効であることを報告した。また、デビルズクロー、セイヨウシロヤナギ、ヒレハリソウおよびラベンダー精油もプラセボより有効である可能性が示唆されたが、エビデンスの質が低~中であったという。今後、適切にデザインされた大規模試験による検討が必要だと指摘している。Cochrane Database of Systematic Reviews誌2014年12月23日号の掲載報告。

抗精神病薬は脳に委縮などのダメージを与えるのか

 最近のデータで、抗精神病薬治療と統合失調症患者における皮質灰白質減少との関連が示され、抗精神病薬の脳の構造・機能への影響に関する懸念が生じている。しかし、統合失調症患者個人の皮質機能を直接測定し、抗精神病薬に関連する灰白質の減少を示した研究はこれまで行われていなかった。米国・カリフォルニア大学のTyler A. Lesh氏らは、初回エピソード統合失調症患者を対象としたケースコントロール横断研究を実施し、抗精神病薬が脳の構造と機能に及ぼす影響を検討した。その結果、抗精神病薬による治療を行った患者は、行わなかった患者に比べ前頭葉皮質の有意な菲薄化が認められたが、前頭葉機能の活性亢進ならびに行動パフォーマンスの上昇がみられたことを報告。有害な影響ばかりではなく認知機能の改善に働く可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年1月14日号の掲載報告。

NSAIDsは大腸がんを予防しうるか

 以前より、NSAIDsの使用が大腸がんのリスクを低減するという実質的なエビデンスがあるが、どのようなサブグループで化学的予防効果が副作用のリスクを上回るかについては特定されていない。米国・Fred Hutchinson Cancer Research CenterのXiaoliang Wang氏らは、VITAL試験のコホートを対象に、大腸がんのあらゆるリスク因子とNSAIDs使用との関連性を調べた。その結果、NSAIDsの高頻度・長期投与と大腸がんリスクとの関連性について、サブグループ間の有意差は認められなかったとしたうえで、「NSAIDsは他の因子に大きく影響されることなく、大腸がん予防において全体的に有益な役割を持つ」と結論付けた。Cancer epidemiology, biomarkers & prevention誌オンライン版2015年1月22日号掲載の報告。

抗コリン薬は高齢者の認知機能に悪影響

 高齢者、とくに認知症を有している場合は抗コリン薬の有害な影響を受けやすい。オーストラリア・ニューカッスル大学のKaren E. Mate氏らは、高齢者における抗コリン薬処方の実態とそれに関連する患者背景因子を調査した。その結果、認知症を有する例は、認知症を有していない例に比べて薬剤数が有意に多く、抗コリン薬負荷が有意に高いことを報告した。そのうえで著者は、「抗コリン薬の有害な影響を考慮すると、認知症患者に対する抗コリン薬処方について改善の余地がある」と示唆した。Drugs & Aging誌オンライン版2015年1月8日号の掲載報告。

SSRIの薬物治療モニタリング、実施率は

 SSRIの薬物治療モニタリング(TDM)の実施について、高齢患者を対象とするものが若年患者を対象としたものと比べて非常に少ないことが、ノルウェー・オスロ大学のM. Hermann氏らによる調査の結果、明らかにされた。結果について著者は、「TDMは高齢患者になるほど重要だとするガイドラインと対照的な状況である」と指摘している。Therapeutic Drug Monitoring誌オンライン版2015年1月6日号の掲載報告。

統合失調症の慢性化に関連する遺伝子か

 米国・ピッツバーグ大学のD Arion氏らは、統合失調症患者では背外側前頭前皮質 (DLPFC)に存在する錐体細胞の活性に依存する作業記憶(ワーキングメモリー)の異常が生じていることに着目し、錐体細胞特異的な遺伝子発現の状況について検討を行った。その結果、統合失調症患者ではDLPFCの第3層および/または第5層に存在する錐体細胞に特異的な遺伝子の発現が低下していること、これらは統合失調感情障害ではみられないことを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2015年1月6日号の掲載報告。

非喫煙者にも広がる電子タバコ

 電子タバコ愛用者は増えているのか。米国・ミシシッピ大学のRobert C McMillen氏らは、米国成人を対象に、電子タバコ使用の人口統計学的予測因子、および電子タバコ使用者の喫煙状況について検討した。その結果、2010年からの4年間で電子タバコが急速に普及していること、電子タバコ使用者の3分の1は非喫煙者や過去喫煙者などであり、電子タバコがニコチン摂取や再習慣化につながっている現状が明らかになった。Nicotine & tobacco research誌オンライン版2014年11月6日号の掲載報告。

ハワイの認知症入院患者、日系人高齢者が多い

 ハワイで認知症と診断され入院している患者を調べたところ、ネイティブ・ハワイアンと日系人の高齢者が多いことが、米国・ハワイ大学のTetine L. Sentell氏らによる調査の結果、明らかにされた。結果について著者は、「ネイティブ・ハワイアンと日系人高齢者集団に対する公衆衛生および臨床ケアにおいて、重要な意味がある」と指摘している。認知症入院患者はそうではない入院患者と比べて、コスト、入院期間、また死亡率が高いが、米国においてこれまでネイティブ・ハワイアンおよびアジア系サブグループの認知症に関するデータは限定的であった。Journal of the American Geriatrics Society誌2015年1月号(オンライン版2014年12月23日号)の掲載報告。

筋骨格系慢性疼痛へのウォーキングは有用?

 英国・クイーンズ大学ベルファストのSean R. O’Connor氏らは、筋骨格系慢性疼痛患者の疼痛や機能に対するウォーキングの効果を検討する目的でシステマティックレビューを行った。その結果、ウォーキングは対照と比較して疼痛や機能の有意な改善と関連していることを明らかにした。ただし、長期的な効果については不明であったとしている。著者は、「筋骨格系慢性疼痛に対する効果的な介入法としてウォーキングが推奨されるが、介入維持を目的とした戦略、ならびに健康に関連した効果に関するさらなる検討が必要」とまとめている。Archives of Physical Medicine and Rehabilitation誌オンライン版2014年12月18日号の掲載報告。

なぜSSRIの投与量は増えてしまうのか

 抗うつ薬の処方は上昇の一途をたどっており、その原因として長期投与や高用量投与の増加が挙げられる。しかし、高用量処方に関連する患者背景因子については不明のままである。英国・NHS Greater Glasgow and ClydeのChris F Johnson氏らは、うつ病に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の1日投与量と関連する患者背景因子を明らかにするため、プライマリケアにおける横断的研究を行った。その結果、SSRI高用量処方と関連する因子の1つとして、同一抗うつ薬の2年以上の処方が明らかとなったことを報告した。結果を踏まえて著者は、「抗うつ薬の長期使用の増加に伴い、高用量処方の使用はさらに処方の増大に寄与する可能性がある」とまとめている。BMC Family Practice誌オンライン版2014年12月15日号の掲載報告。