医療一般|page:460

抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症にアリピプラゾール補助療法

 高プロラクチン血症は、いくつかの抗精神病薬に関連した好ましくない有害事象である。ドパミンパーシャルアゴニストであるアリピプラゾールの併用は、効果的に抗精神病薬誘発性の高プロラクチン血症を減弱させる可能性があるが、理想的な投与レジメンは不明である。中国・北京Hui-Long-Guan病院のJing-Xu Chen氏らは、統合失調症患者のプロラクチンレベルや高プロラクチン血症に対する、アリピプラゾール補助療法の用量を評価することを目的に、検討を行った。Psychoneuroendocrinology誌2015年8月号の報告。

統合失調症の同胞研究、発症と関連する脳の異常

 先行研究において、統合失調症における構造的な脳結合性の異常が観察されている。それら異常の長期的なマッピングと、同胞研究による遺伝的リスクの理解は、統合失調症に関連する漸進的な発達的変化について重要な見識を与えてくれる。オーストラリア・メルボルン大学のAndrew Zalesky氏らは、小児期発症統合失調症(COS)の青年において発達過程の変化を示す皮質間結合を確認し、類似の変化が非罹患同胞にみられるかどうかを検討する前向き研究を行った。その結果、非罹患同胞の統合失調症発症に対するレジリエンスと関連する中間表現型を伴う後頭側頭部の結合性の成熟遅延が、COS患者の特徴的なマーカーであることが示唆されたことを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年7月15日号掲の載報告。

繊維摂取と大腸がんの関連~性別や部位で異なる

 これまでの研究において、繊維摂取量と大腸がん発症の間に負の相関が認められているが、がんのステージによる違いは検討されていない。スウェーデン・ルンド大学のAlexandra Vulcan氏らは、The Malmo Diet and Cancer Studyで、繊維摂取量とその供給源、および大腸がん発症との関連を、性別、腫瘍部位、TNM分類ごとに検討した。その結果、繊維摂取量と大腸がんの間に、性別、腫瘍部位、繊維供給源により異なる関連が認められた。とくに果物やベリー類からの高い繊維摂取は、女性において大腸がん発症を防ぐ可能性があるという。The British journal of nutrition誌オンライン版2015年8月18日号に掲載。

失明患者の視覚を回復、人工網膜システムが欧米で初承認

 これまで治療法がなかった網膜色素変性症に対する、人工網膜システムArgus II(Second Sight社)が開発された。網膜色素変性症は光受容体の消失により失明に至る遺伝性のまれな疾患である。開発されたシステムは、メガネに搭載された小型カメラと映像プロセッサにより、イメージを電気信号に変換し網膜に移植した電気デバイスに送信して視覚を提供するというもの。今回、米国・ウィルズ・アイ・ホスピタルのAllen C. Ho氏らは、Argus II移植後1年および3年の臨床試験成績を報告。網膜色素変性症による失明に対し、視覚を回復するArgus IIの長期的な安全性と有用性が認められたことを明らかにした。なお、本研究の中間解析結果により承認申請がなされ、Argus IIシステムは世界初かつ唯一の網膜移植システムとして米国および欧州で承認された。Ophthalmology誌2015年8月号(オンライン版2015年7月8日)の掲載報告。

2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは

 統合失調症患者に対する2つの持効性注射剤の有用性を評価するため、ドイツ・ハンブルク大学エッペンドルフメディカルセンターのDieter Naber氏らは直接比較試験を行った。アリピプラゾール400mg/月1回(AOM400)とパリペリドンパルミチン酸エステル月1回(PP)について、Heinrichs-Carpenter QOL評価尺度(QLS)、健康関連QOL、機能尺度を用いて検討した結果、AOM400はPPと比較し、健康関連QOLの優れた改善や良好な忍容性プロファイルにより、高い全般的有効性が示唆された。Schizophrenia research誌オンライン版2015年7月28日号の報告。

結節性硬化症の白斑、mTOR阻害薬の有効性を確認

 結節性硬化症(TSC)の白斑病変に対する、局所ラパマイシン(mTOR阻害薬、別名:シロリムス)治療の有効性と安全性が確認された。大阪大学医学部皮膚科 講師/医局長の金田 眞理氏らが患者6例について行った前向きベースライン対照試験の結果、報告した。著者はその改善機序として、「今回示された効果は、TSCメラニン形成細胞におけるメラニン形成障害の改善によりもたらされることを強く支持するものであった」と述べている。これまでTSC患者の、腫瘍に対する哺乳類ラパマイシン標的蛋白質複合体1(mTORC1)の効果については多くの検討が行われてきたが、白斑への効果については不明であった。JAMA Dermatology誌2015年7月号の掲載報告。

双極性障害の自殺予防、どうすべきか

 双極性障害は自殺企図および自殺死リスクの増加と関連している。国際双極性障害学会(ISBD)では、双極性障害における自殺企図・自殺死に関する疫学、神経生物学および薬物治療に関して現存の文献を検討し、タスクフォース報告書としてまとめた。その中で筆頭著者のカナダ・トロント大学のAyal Schaffer氏らは、推定自殺率が過去の報告よりも低かったことを報告した。そのほか、最も多い自殺の方法や全体的なリスクなどを明らかにしたうえで、「こうした理解が、双極性障害における自殺予防に対する認識の高まりや、より有効な治療法の開発につながる」と述べ、「リスク低減や治療進展のために、遺伝学的知見の再現研究や治療オプションの、より信頼できる前向きデータが必要である」と指摘している。Australian & New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年7月16日号の掲載報告。

コーヒー4杯/日以上で結腸がんの再発が減少?

 座りがちな生活や肥満、食事による糖負荷増大などの相対的インスリン過剰状態では、結腸がんの再発が増加することが観察研究で示されている。一方、コーヒーの高摂取が、2型糖尿病リスクの減少とインスリン感受性の増大と関連しているが、結腸がんの再発と生存率に対するコーヒーの影響は不明である。米国・ハーバード大学のBrendan J. Guercio氏らは、コーヒー摂取量とステージIII結腸がん患者の再発および死亡との関連を検討し、コーヒーの高摂取が結腸がんの再発や死亡の減少に関連する可能性を報告した。Journal of clinical oncology誌オンライン版2015 年8月17日号に掲載。

ベンザルコニウム低濃度タフルプロスト、緑内障治療中の点状表層角膜炎を軽減

 緑内障点眼治療では点状表層角膜炎(SPK)などの眼表面障害がみられることがある。山口大学医学部眼科 准教授の鈴木 克佳氏らは、ベンザルコニウム塩化物(BAC)濃度を0.01%から0.001%へ低濃度に最適化したタフルプロスト(商品名:タプロス)の安全性および有効性を評価する多施設非盲検試験を行った。その結果、BAC最適化タフルプロストは眼圧下降効果を維持しつつSPKを軽減することが示され、著者は「BAC最適化タフルプロストは、プロスタグランジン関連点眼薬で治療中にSPKが認められた緑内障患者に対する治療選択肢となりうる」と報告している。Journal of Glaucoma誌2015年8月号の掲載報告。

性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大

 不眠症状、日中の眠気、短い睡眠時間、あるいは睡眠覚醒スケジュール後退などの睡眠関連障害は、うつ病のリスクファクターとなることが知られている。一般的に、うつ病は男性より女性に多いが、睡眠関連障害については必ずしも同様の性差が示されるわけではない。うつ病の発症過程における睡眠関連障害の影響には性差があると考えられるが、この問題に注目した研究はこれまでほとんどなかった。東京医科大学の守田 優子氏らは、睡眠関連障害を有する日本人若年成人のうつ病発症に及ぼす性差について検討を行った。その結果、睡眠関連障害がうつ病発症に及ぼす影響には性差が認められ、女性では睡眠覚醒スケジュール後退の影響が大きいことを報告した。結果を踏まえて著者らは「睡眠関連障害に起因するうつ症状の軽減・予防には性別に基づくアプローチが必要である」と指摘している。Chronobiology International誌2015年8月号の掲載報告。

肺がん左上葉切除術は脳梗塞の危険因子か

 脳梗塞は肺切除術後のまれな合併症であるが、重度の後遺症をもたらしうる。千葉大学の山本 高義氏らが、肺がん術後に脳梗塞を発症した患者の特徴を検討したところ、脳梗塞が左上葉切除を受ける肺がん患者で高頻度に発症しており、左上肺静脈断端における血栓症がその原因となっている可能性が示唆された。Surgery Today誌オンライン版2015年8月14日号に掲載。

統合失調症再発予防、遠隔医療に改善の余地あり

 チェコ共和国・国立精神保健研究所のF. Spaniel氏らは、統合失調症患者に対する遠隔医療プログラムが入院回数を減らすかについて検討を行い、有効性は認められなかったことを報告した。著者らは「先行研究で、この予防的戦略の失敗は、精神科医と患者両者のアドヒアランス不良にあることが示唆されている。統合失調症の3次予防は大きな課題であり、患者と治療に当たる精神科医の両者のより積極的な参加の下、戦略を実施する必要がある」と指摘している。Journal of Psychiatric and Mental Health Nursing誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。

テリパラチド連日投与の市販後調査中間解析結果

 近畿大学医学部 奈良病院 整形外科・リウマチ科の宗圓 聰氏らは、骨折リスクが高い日本人骨粗鬆症患者における、テリパラチド連日投与の有効性および安全性を検討する観察研究Japan fracture observational study(JFOS)について、試験デザイン、患者背景および中間解析結果を報告した。その中で、日常診察下におけるテリパラチドの有効性プロファイルは臨床試験ならびに欧州・米国で行われた観察研究の結果と類似していることを提示した。Current Medical Research & Opinion誌オンライン版2015年7月20日号の掲載報告。

がんを疑う症状があっても気付きにくいのは?

 社会経済的地位(SES)が低い人々では、がんが後期のステージで診断されるリスクが高い。これに対してはさまざまに解釈されているが、最近注目されているのは、がんが疑われる症状に関する患者の知識の低さであり、これが治療の遅れにつながるという。英国・サリー大学のKatriina L Whitaker氏らは、実際にがんの典型的な症状を経験している人々における「がんを疑うこと」の差を調査した。その結果、今回対象とされた集団では、全体的にがんを疑うレベルが低かったが、なかでも低学歴の人々でより低かった。このことから著者らは、初期症状の見逃しが診断時のステージの差につながっている可能性があるとしている。European journal of cancer誌オンライン版2015年8月8日号に掲載。

双極性障害の自殺、どの程度わかっているのか

 双極性障害患者の自殺企図や自殺死には多くの要因が影響を及ぼしている。国際双極性障害学会(ISBD)では、こうした要因の存在やその影響度に関する文献をまとめた自殺に関するタスクフォース報告書を発表した。筆頭著者であるカナダ・トロント大学のAyal Schaffer氏らは、「研究の対象やデザインが不均一性であるため、これら要因の影響度を再検討し確定するさらなる研究が必要である。このことが最終的には、双極性障害患者のリスク層別化の改善につながる」と述べている。Australian & New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年7月14日号の掲載報告。

ビタミンEとセレニウムは喫煙者の前立腺がんリスクを下げるか

 ビタミンEとセレニウムの疫学研究において、これら抗酸化物質が前立腺がんリスクを下げるとの仮説があるが、明確なベネフィットは示されていない。また、喫煙がこれらの効果に影響する可能性も示唆されている。米国・エモリー大学のYeunjung Kim氏らはメタ解析により、ビタミンEおよびセレニウムの摂取と前立腺がんリスクとの関連性を非喫煙者と喫煙経験者(現喫煙者/元喫煙者)について比較検討した。Anticancer research誌2015年9月号の掲載報告。

脳卒中リスク、日本でも居住地の経済状況が影響

 地区の社会経済状況の水準を指標化したものを、地理的剥奪指標(areal deprivation index)という。これまで欧米の多くの研究で、この地理的剥奪が循環器疾患リスクに影響する因子であることが示されている。しかし、アジアにおける検討はこれまでなかった。今回、国立がん研究センターによる多目的コホート研究(JPHC研究)で、地理的剥奪指標と脳卒中死亡および発症リスクとの関連が前向き研究で検討された。その結果、居住地の剥奪指標が脳卒中の発症に影響することが明らかになった。著者らは「地区の社会経済状況は脳卒中リスクを減少する公衆衛生介入の潜在的なターゲットになりうる」としている。Journal of epidemiology誌オンライン版2015年3月5日号掲載の報告。