医療一般|page:72

マウンテンバイクはそんなに危険でない

 一見けがのリスクが高そうに思えるマウンテンバイクは、実はそれほど危険な乗り物ではないとする研究結果が報告された。カーティン大学(オーストラリア)のPaul Braybrook氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に8月30日掲載された。マウンテンバイク利用に伴うけがの大半は軽度の切り傷や打撲などにとどまることから、健康のためのスポーツの良い選択肢の一つと言えるという。  近年、自然環境でのサイクリングやジョギング、ハイキングなどの「トレイル」と呼ばれるアウトドアスポーツの人気が、世界的に高まっている。Braybrook氏は、「それらのスポーツ中に発生する傷害に対する医療体制を整えるために、傷害のリスクやタイプを把握する必要があった」と、この研究の背景を述べている。そこで同氏らは、既報研究を対象とするシステマティックレビューにより、その実態の把握を試みた。

善玉コレステロール値は高くても低くても認知症リスクと関連

 HDLコレステロール(HDL-C)は、心臓や脳の健康に良い「善玉コレステロール」と考えられているが、その値は高過ぎても低過ぎても認知症の発症リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で示唆された。この研究論文の上席著者である米ボストン大学公衆衛生大学院のMaria Glymour氏は、「この研究は、非常に多くの参加者を長期間追跡したものであるため、得られた結果は極めて有益だ。われわれは、コレステロール値の非常に高い場合から非常に低い場合まで、あらゆる値と認知症の発症リスクとの関連を推定することができた」と話している。研究の詳細は、「Neurology」に10月4日掲載された。

皮膚のバイオプリンティングが創傷治療に有望か

 将来、傷や重度のやけどに対しては、3Dバイオプリンターで作られた皮膚を用いた治療が行われるようになるかもしれない。ヒトの皮膚の主要な6種類の細胞を使って3Dバイオプリンターで作成した、正常なヒトの皮膚と同様の3層構造の皮膚をマウスやブタに移植したところ、皮膚の再生と創傷治癒が促されることが確認できたとする研究結果が報告された。米ウェイクフォレスト再生医療研究所所長のAnthony Atala氏らによるこの研究の詳細は、「Science Translational Medicine」に10月4日掲載された。

自殺企図リスクと関連する遺伝子座を同定

 自殺に関する大規模なゲノム研究2件を統合解析した研究により、自殺企図リスクと関連する12の遺伝子座が同定された。米ユタ大学ハンツマン・メンタルヘルス研究所の精神医学准教授であるAnna Docherty氏らによるこの研究の詳細は、「The American Journal of Psychiatry」に10月1日掲載された。この結果から、自殺の生物学的原因の理解が深まることが期待される。  Docherty氏らは、既存の大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)であるInternational Suicide Genetics ConsortiumおよびMillion Veteran Programのデータを用いて、GWASメタアナリシスを実施。解析対象には、民族的背景の多様な22集団(ヨーロッパ系15、東アジア系3、アフリカ系3、ヒスパニック・ラテンアメリカ系1)から構成される自殺企図歴のある4万3,871人(一部、自殺既遂者を含む)と、民族的背景が同じで自殺企図歴のない91万5,025人が含まれていた。

食中毒発生率がパンデミック前の水準に増加

 米国では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック発生とともに低下していた食中毒発生率が、パンデミック前の水準に戻ったことが報告された。米疾病対策センター(CDC)のMiranda J. Delahoy氏らの研究によるもので、詳細はCDC発行「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」6月30日号に掲載された。  2020年以降、COVID-19パンデミックに伴う人々の行動変容、公衆衛生対策、患者の受療行動の変化、検査施行件数の変動などの影響によって、さまざまな感染症の罹患率が低下していた。食中毒も同様に、米国ではカンピロバクターやサルモネラ菌による消化器感染症が、2020~2021年にはその前年より減少していた。しかし、感染症減少につながった多くの要因が取り除かれたことによって、再びそのリスクが増大してきている。

血圧が高い十代の男性は高齢になる前に健康危機に直面しやすい

 十代という人生の早い段階で血圧が正常域よりも高い男性は、高齢期に入ってリタイアするより前に、心血管疾患を発症するリスクやそのために亡くなるリスクが高いという実態が報告された。ウメオ大学(スウェーデン)のHelene Rietz氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に9月26日掲載された。同氏は、十代の若者の血圧高値の潜在的リスクに対する医療従事者の理解が不足していることに懸念を表している。  成人期以降の血圧高値が、心血管イベントリスクと密接に関連していることは、十分明らかになっている。しかし、十代の若者の血圧と将来の心血管イベントとの関連についてのデータは少ない。Rietz氏らはこの点について、スウェーデンの軍人のデータを用いて検討した。

COVID-19の影響で日本人の死亡率が東日本大震災以来の増加

 日本人の年齢調整死亡率は年々低下が続いていたが、2021年には増加に転じたことが明らかになった。主な要因は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、循環器疾患、老衰による死亡の増加だという。国立がん研究センターがん対策研究所データサイエンス研究部の田中宏和氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open」に8月31日掲載された。  日本人の死亡率(死亡者数が人口に占める割合)は高齢化のために年々上昇している。その一方で、高齢化の影響を統計学的に取り除いた年齢調整死亡率(ASMR)は、社会環境や生活習慣の改善、医療の充実などの影響を受けて、年々低下してきている。ASMRが上昇した近年での数少ない例外は、東日本大震災のあった2011年だった。

既治療の進行NSCLC、Dato-DXdがPFS改善(TROPION-Lung01)/ESMO2023

 TROP2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)のdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、複数のがん種において臨床試験が実施されており、有用性が検討されている。その1つに、前治療歴のある進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相比較試験TROPION-Lung01試験があり、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)において、米国・カリフォルニア大学のAaron Lisberg氏が第1回中間解析の結果を報告した。本試験において、Dato-DXdは2次治療の標準治療の1つとされるドセタキセルと比較して、有意に無増悪生存期間(PFS)を改善した。

インフルワクチン接種、コロナ前後でどう変化した?

 コロナ禍を経て、インフルエンザワクチン接種に対する意識はどう変化しただろうか。米国・ブリガム・ヤング大学のTy J. Skyles氏らによる研究の詳細が、Journal of Community Health誌オンライン版2023年9月11日号に報告された。  本研究では、同大学に通う440人の学生にアンケートを実施し、2007年のデータと比較した。アンケートでは、インフルエンザワクチン接種に対する意識の実態および過去16年間の変化の要因を調査した。また、回答者には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経験やCOVID-19によるワクチン接種への意識の変化についても質問した。

BA.2.86「ピロラ」感染3週間後の抗体応答が大幅に増強/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株であるオミクロン株BA.2.86(通称:ピロラ)は、2023年8月初頭にデンマークで初めて報告され、スウェーデンでは8月7日に初めて検出された。本症例(インデックスケース)は、慢性疾患のない免疫不全の女性であった。本症例の血清および鼻腔粘膜の抗体応答について、2023年2月に得られた検体と、BA.2.86感染から3週間後に得られた検体を用いて比較したところ、BA.2.86感染後ではIgA値およびIgG値の上昇が認められ、感染前より抗体応答が大幅に増強されることが示唆された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOscar Bladh氏らによる、NEJM誌2023年10月26日号CORRESPONDENCEに掲載の報告。

転移乳がんのエリブリン2投2休、後治療のPFSを有意に延長/日本癌治療学会

 転移を有する乳がん患者にエリブリンを標準スケジュールである21日周期で投与する場合と比較して、28日周期の投与は後治療の無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、全生存期間(OS)は有意差はなかったものの延長傾向にあったことを、市立四日市病院の水野 豊氏が第61回日本癌治療学会学術集会で発表した。  エリブリンは腫瘍免疫微小環境の改善効果により、後治療の良好な効果が推測されている。しかし、血液毒性などの有害事象のため標準の21日周期では治療の中断・中止を余儀なくされることがある。

自閉スペクトラム症とADHDの認知プロファイル~メタ解析

 これまでの研究によると、神経発達の状態は、ウェクスラー式知能検査(最新版はWAIS-IV、WISC-V)における特有の認知プロファイルと関連している可能性がある。しかし、自閉スペクトラム症または注意欠如多動症(ADHD)患者の認知プロファイルをどの程度反映できているかは、はっきりしていなかった。英国・ニューカッスル大学のAlexander C. Wilson氏は、同検査による自閉スペクトラム症とADHDの認知プロファイルの評価を調査する目的でメタ解析を実施した。その結果、ウェクスラー式知能検査の成績パターンは、診断目的で使用するには感度および特異度が不十分であるものの、自閉スペクトラム症では、言語的および非言語的推論の相対的な強さと処理速度の低さの認知プロファイルと関連していることが示唆された。一方、ADHDでは、特定の認知プロファイルとの関連性は低かった。Archives of Clinical Neuropsychology誌オンライン版2023年9月29日号の報告。

幹細胞治療で1型糖尿病が寛解する可能性

 1型糖尿病患者に対して、幹細胞由来のインスリン産生細胞を移植するという新たな治療法の可能性を示した、トロント大学アジメラ移植センター(カナダ)のTrevor Reichman氏らの研究結果が、第59回欧州糖尿病学会(EASD2023、10月2~6日、ドイツ・ハンブルク)で発表された。  1型糖尿病は、膵臓内のランゲルハンス島にあるインスリン産生細胞(膵島細胞)の機能が失われることで発症し、発症後には1日数回のインスリン注射、またはインスリンポンプによる治療が必須とされる。しかし、今回報告された新たな研究が実を結べば、1型糖尿病患者の一部はそのようなインスリン療法が不要になるかもしれない。

EGFR陽性肺がん1次治療におけるamivantamab+lazertinibの有効性(MARIPOSA)/ESMO2023

 EGFR陽性肺がんの1次治療に新たな選択肢が示された。  現在、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では標準治療として、第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブが用いられる。オシメルチニブによる1次治療は優れた有効性を示すが、いまだに治療抵抗性や病勢進行例の存在は避けられない。  この治療抵抗性の25〜50%は、EGFRおよびMET遺伝子の2次的な異常である。EGFRとMETの二重特異性抗体であるamivantamabと、新規第3世代EGFR-TKIであるlazertinibの併用は、EGFR変異陽性NSCLC1次治療において、抵抗性を克服し、臨床成績を改善すると期待される。

オシメルチニブ耐性EGFR陽性肺がんに対するamivantamab含有レジメンの有効性(MARIPOSA-2)/Ann Oncol

 オシメルチニブ耐性を獲得したEGFR陽性肺がんに対し、有望な新治療法が報告された。  現在、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、主に第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブがである用いられる。しかし、初回治療の奏効にもかかわらず、多くの症例がオシメルチニブ耐性を獲得し、その後は細胞障害性抗がん剤による治療が主流となる。  オシメルチニブの耐性メカニズムは多彩であるが、MET遺伝子異常とEGFR経路の異常が多いとされる。amivantamabはEGFRとMETの二重特異性抗体、lazertinibは第3世代EGFR-TKI である。この両剤と化学療法の併用は、オシメルチニブを含むEGFR-TKI耐性のEGFR変異陽性NSCLCにおける有効性を第I相試験で示している。

EGFR exon20挿入変異にamivantamab+化学療法(PAPILLON)/ESMO2023

 EGFR exon20挿入変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、EGFR・MET二重特異性抗体amivantamabと化学療法の併用を評価する国際無作為化比較第III相試験PAPILLONの結果を、フランス・キューリー研究所のNicolas Girard氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。  未治療のEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLCの治療成績は芳しくなく、全生存期間(OS)中央値は16〜24ヵ月である。同バリアントは、従来のEGFR-TKIに対する感受性がなく、免疫チェックポイント阻害薬もベネフィットを示せていない。

排尿の悩み、恥ずかしがらずに受診できる未来を目指して/ファイザー

 2023年10月19日、ファイザーは、「20年ぶりの疫学調査でわかった、過活動膀胱の最新実態と治療のこれから」と題したメディアセミナーを開催した。  過活動膀胱(OAB)は尿意切迫感を必須の症状とする症状症候群で、現在、1,000万人程度の患者がいると推計されている。その中でも、尿失禁は医師に相談しにくいことから、とくに女性では受診への抵抗感が強いとの報告もあり、症状があっても受診に至らないことや、患者と医師の間で診断や治療への認識に大きな差があることなどがOABの課題とされる。本セミナーでは、約20年ぶりに実施された下部尿路症状の疫学調査の結果について、日本大学医学部 泌尿器科学系 泌尿器科学分野 主任教授の高橋 悟氏が解説した。また、Ubie(ユビー)の代表取締役を務める阿部 吉倫氏が、OABの受診率向上におけるデジタルツールの可能性について語った。

100歳超にみられる血液検査の特徴/スウェーデン・AMORISコホート研究

 100歳を超える長寿者(センテナリアン)とそうでない人の違いはどこにあるのだろうか。スウェーデン・カロリンスカ研究所の村田 峻輔氏らの研究グループは、AMORISコホート参加者のバイオマーカー情報を最長35年間追跡調査し、その結果を報告した。センテナリアンは、総コレステロールと鉄の値が高く、グルコース、クレアチニン、尿酸などの値が低いことが判明した。Geroscience誌2023年9月19日号に掲載。   本研究では、1985~1996年に測定された血液ベースのバイオマーカーに関する情報を持つスウェーデン・AMORISコホートの登録データを最長35年間追跡調査した。

進行/転移TN乳がん1次治療でのDato-DXd+デュルバルマブ、11.7ヵ月時点で奏効率79%(BEGONIA)/ESMO2023

 進行/転移トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療として、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)と抗PD-L1抗体デュルバルマブの併用を検討するBEGONIA試験のArm7では、追跡期間中央値7.2ヵ月で74%の奏効率(ORR)が得られている。今回、追跡期間中央値11.7ヵ月の解析でORRが79%であったことを、英国・Barts Cancer Institute, Queen Mary University of LondonのPeter Schmid氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。

日本人2型糖尿病でのチルゼパチドの効果、GLP-1RAと比較/横浜市立大

 横浜市立大学 循環器・腎臓・高血圧内科学教室の塚本 俊一郎氏らの研究グループは、日本人の2型糖尿病患者を対象に、新規GLP-1RAであるセマグルチドやGLP-1/GIPデュアルアゴニストであるチルゼパチドについて、従来の薬剤との比較や用量毎の治療効果の違いをネットワークメタ解析手法で解析した。その結果、チルゼパチドは比較した薬剤の中で最も体重減少とHbA1cの低下効果が高く、目標HbA1c(7%未満)の達成はチルゼパチドとセマグルチドで同等だった。Diabetes, Obesity and Metabolism誌2023年10月12日号の報告。