医療一般|page:2

双極症とADHD併発患者における認知機能/心理社会的機能の特徴

 双極症や注意欠如多動症(ADHD)は、神経認知および心理社会的機能に重大な影響を及ぼす慢性的な神経精神疾患である。双極症とADHDの併発は、特有の臨床的課題を呈し、認知機能および機能障害をさらに悪化させる可能性がある。スペイン・Vall d'Hebron Research InstituteのSilvia Amoretti氏らは、双極症またはADHD患者および併発した患者と健康対照者における神経認知機能および心理社会的機能の違いを明らかにするため、最新情報を統合したシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Neuroscience and Biobehavioral Reviews誌2025年4月号の報告。

組み換え帯状疱疹ワクチン シングリックス、定期接種として使用可能に/GSK

 グラクソ・スミスクラインは、2025年4月1日、予防接種法施行規則および予防接種実施規則の一部改正で帯状疱疹が予防接種法のB類疾病に位置づけられたことにより、同社の帯状疱疹のワクチン「シングリックス筋注用(以下、シングリックス)」が定期接種として使用可能となったと発表した。  シングリックスは、帯状疱疹の予防を目的とした世界で初めての遺伝子組換え型のサブユニットワクチンで、現在50ヵ国以上で販売されている。日本では、50歳以上を対象として(2018年3月23日)、帯状疱疹の発症リスクが高いと考えられる18歳以上を対象として(2023年6月26日)承認を取得している。

健康行動変容支援システムは体重のリバウンド対策に有効か

 ダイエットでは体重のリバウンドが常に課題となる。では、減量した体重の維持には、認知行動療法(CBT)などを活用した健康行動変容支援システム(HBCSS)は有効だろうか。この課題に対し、フィンランドのオウル大学生体医学・内科学研究ユニットのEero Turkkila氏らの研究グループは、ウェブベースのHBCSSの長期的有効性評価を目的に、2年にわたり検証を行った。その結果、12ヵ月間のHBCSS介入では、5年後の体重減少について非HBCSSよりも良好に維持することはできなかった。この結果は、International Journal of Obesity誌2025年3月15日オンライン版で公開された。

がん術前1ヵ月間の禁煙で合併症が減少~メタ解析

 がん手術の前に4週間禁煙した患者では、手術が近づいても喫煙していた患者よりも術後合併症が有意に少なかったことを、オーストラリア・ディーキン大学のClement Wong氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年3月7日号掲載の報告。  喫煙は術後合併症のよく知られた危険因子であり、喫煙する患者では合併症リスク増大の懸念から外科手術の延期を検討することもある。しかし、がん患者の手術が延期された場合、患者が禁煙している間に病勢が進行するリスクがある。今回、研究グループはがん患者の喫煙状態や禁煙期間とがん手術後の合併症との関連を調べるために、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。

音楽療法で認知症患者の抑うつ症状が軽減、レビューで示唆

 音楽療法は認知症患者の気分を高め、抑うつ症状を和らげるのに役立つ可能性のあることが、新たなエビデンスレビューにより明らかになった。また、音楽療法により行動上の問題が改善する可能性のあることも示されたという。論文の筆頭著者である、ライデン大学(オランダ)医療センターのJenny van der Steen氏は、「この調査により、音楽療法の効果についての理解が深まり、特に、介護施設での認知症ケアに音楽を取り入れることの根拠が強まった」と述べている。この研究の詳細は、「Cochrane Database of Systematic Reviews」に3月7日掲載された。

新たなリスクスコアで若年層の大腸がんリスクを予測できる?

 新たに開発された臨床的因子に基づくシンプルなリスクスコアが、進行性腫瘍(advanced neoplasia;AN)の発症リスクが高く、大腸内視鏡検査によるスクリーニングの開始が推奨される45歳未満の人の特定に有用な可能性のあることが明らかになった。ANとは、10mm以上の管状腺腫、または絨毛成分を含む腺腫(管状絨毛腺腫、絨毛腺腫など)、高度異型腺腫、10mm以上の鋸歯状病変、異形成を伴う鋸歯状病変、鋸歯状腺腫、浸潤性腺がんを包括する概念である。米クリーブランドクリニックの消化器科医であるCarole Macaron氏らによるこの研究は、「Digestive Diseases and Sciences」に2月13日掲載された。

全般不安症の第1選択薬としてのプレガバリンの可能性〜メタ解析

 全般性不安症(GAD)は、近年有病率が増加している精神疾患の1つである。GADは未診断のケースも多く、患者本人、医療制度、社会に対し悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、GADに伴う経済的な負担やQOL低下に対する効果的な治療の必要性が増している。不安症状の軽減に対し疼痛治療薬であるプレガバリンによる治療が有望であることが示唆されている。しかし、その有効性を評価し、他の治療オプションと比較するためには、さらなる研究が必要とされる。スペイン・Hospital de la Santa Creu i Sant PauのNarcis Cardoner氏らは、GAD治療におけるプラガバリンの有効性、安全性、最適な投与量を評価するため、メタ解析を実施した。Frontiers in Pharmacology誌2025年2月7日号の報告。

EGFR陽性NSCLCへのCRT後オシメルチニブ、OSアップデート解析(LAURA)/ELCC2025

 切除不能なStageIIIのEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)において、化学放射線療法(CRT)後のオシメルチニブ地固め療法が無増悪生存期間(PFS)を大幅に改善したことが国際共同第III相無作為化比較試験「LAURA試験」で示され、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得している。ただし、全生存期間(OS)の中間解析では、成熟度が20%と低く、OSの有意な改善はみられなかった(ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.42~1.56)。そのため、OSの長期フォローアップデータの解析が待たれている。そこで、OSのアップデート解析が実施され、欧州肺がん学会(ELCC2025)で米国・エモリー大学のSuresh S. Ramalingam氏が結果を報告した。 ・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験 ・対象:18歳以上(日本は20歳以上)の切除不能なStageIIIのEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者のうち、CRT(同時CRTまたはsequential CRT)後に病勢進行が認められなかった患者216例

多発性骨髄腫に対する新たな二重特異性抗体テクリスタマブ/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(法人名:ヤンセンファーマ)は、再発/難治性多発性骨髄腫の治療薬として本邦での製造販売承認を取得したテクリスタマブ(商品名:テクベイリ)を、2025年3月19日に発売した。これを受け、3月25日に記者説明会が開催され、石田 禎夫氏(日本赤十字社医療センター 血液内科部長/骨髄腫アミロイドーシスセンター長)が講演を行った。

25年度専攻医、増えた診療科・減った診療科/専門医機構

 日本専門医機構(理事長:渡辺 毅氏)は、3月24日に2025年度の専攻医採用数を発表した。「専攻医」とは、同機構が定める「専門医制度」の下、各診療科の「専門研修プログラム」を受けている医師の総称であり、臨床研修(初期研修)を修めた後、「専門医」を取得するまでの医師のことである。以前は「後期研修医」と呼ばれていたが、2018年から名称が改められた。  2025年度に採用された専攻医は9,762人で24年度に比べ308人増員した。とくに外科、耳鼻咽喉科などが大幅な伸びを示した一方で、精神科、産婦人科、放射線科などは減少した。

フィネレノン、2型DMを有するHFmrEF/HFpEFにも有効(FINEARTS-HFサブ解析)/日本循環器学会

 糖尿病が心血管疾患や腎臓疾患の発症・進展に関与する一方で、心不全が糖尿病リスクを相乗的に高めることも知られている。今回、佐藤 直樹氏(かわぐち心臓呼吸器病院 副院長/循環器内科)が3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials1においてフィネレノン(商品名:ケレンディア)による、左室駆出率(LVEF)が軽度低下した心不全(HFmrEF)または保たれた心不全(HFpEF)患者の入院および外来における有効性と安全性について報告。その有効性・安全性は、糖尿病の有無にかかわらず認められることが明らかとなった。

急性GVHDとICANSに対する新たな診断法の開発/日本造血・免疫細胞療法学会

 2025年2月27日~3月1日に第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会が開催された。  3月1日に福田 隆浩氏(国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科)、谷口 修一氏(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 血液内科)を座長に行われたプレナリーセッションでは、井戸 健太郎氏(大阪公立大学大学院医学研究科 血液腫瘍制御学/臨床検査・医療情報医学)、瀧川 健氏(九州大学大学院 病態修復内科学)、新井 康之氏(京都大学医学部附属病院 血液内科)が講演を行い、急性移植片対宿主病(GVHD)の新たな診断法や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)の診断において脳脊髄液中のキメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞をFlow cytometryで検出することの有用性などについて議論がなされた。

市中肺炎へのセフトリアキソン、1g1日2回vs.2g1日1回~日本の前向きコホート

 セフトリアキソンは、日本感染症学会/日本化学療法学会の感染症治療ガイドラインにおいて市中肺炎入院患者におけるエンピリック治療の第1選択薬の1つに挙げられている。投与方法は1g1日2回点滴静注または2g1日1回点滴静注が推奨されているが、これらを比較した前向き研究は限られている。今回、倉敷中央病院の中西 陽祐氏らが、これらの投与方法の有効性と安全性を前向きコホート研究で比較し、報告した。Journal of Infection and Chemotherapy誌2025年1月号に掲載。

抗精神病薬の血中濃度、年齢や性別の影響が最も大きい薬剤は

 抗精神病薬は、高齢患者にも処方されるが、高齢者における安全性および有効性に関する報告は限られている。ノルウェー・Diakonhjemmet HospitalのVigdis Solhaug氏らは、一般的に使用される6種類の抗精神病薬の用量調節血中濃度(C:D比)に対する年齢の影響を男女別に調査し、比較を行った。Therapeutic Drug Monitoring誌オンライン版2025年2月25日号の報告。  対象とした抗精神病薬は、amisulpride、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、zuclopenthixol。抗精神病薬の血中濃度を測定した患者を治療薬モニタリングサービスよりレトロスペクティブに組み入れた。各抗精神病薬の主なアウトカムは、性別、年齢(18〜49歳群、50〜74歳群、75歳以上群)で分類したグループ間で評価したC:D比とした。データ分析には、制限付き最尤推定法による線形混合モデルを用いた。

遺伝性消化管腫瘍診療に対する多施設ネットワークの試み/日本臨床腫瘍学会

 進行がんに対する治療薬選択目的で実施されるがんゲノムプロファイリング検査やマイクロサテライト不安定性検査の結果から、2次的所見として消化器領域を含む遺伝性腫瘍の可能性が疑われる症例が増加している。しかし、実臨床でそれらの患者が遺伝コンサルティングを受けることは多くない。これには医療者の理解が不十分であることも要因として考えられる。遺伝性消化器がん(HGC)における多施設多職種ネットワークの取り組みについて、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で富山大学の安藤 孝将氏が発表した。  安藤氏らは、HGC患者・家族に最適な医療を提供することを目的に多施設多職種のネットワークHGiT-N(Hereditary Gastrointestinal Tumor Network)を設立した。HGiT-Nは6つの主要機関(京都大学、三重大学、滋賀医科大学、富山大学、関西医科大学、愛媛大学)とその関連施設を合わせ30施設で運営されている。

幹細胞治療が角膜の不可逆的な損傷を修復

 実験段階にある画期的な幹細胞治療によって、視力を奪う角膜の損傷を修復できる可能性のあることが、米ハーバード大学附属マサチューセッツ眼科耳鼻科病院のUla Jurkunas氏らによる新たな研究で示された。眼球の一番外側の透明な層である角膜は、傷害や疾患などによって新しい細胞を再生する能力が失われる不可逆的な損傷を受ける可能性がある。新たな治療法は、幹細胞を使って損傷した眼球の角膜を再生させるというもの。初期段階の臨床試験では、治療後18カ月間にわたって追跡された参加者において、この治療法の実行可能性と安全性が確認されたという。詳細は、「Nature Communications」に3月4日掲載された。

普通車と軽自動車、どちらが安全?

 人はそれぞれ、価格、燃費、デザイン、安全性などを基準に車を選ぶが、軽自動車は普通車と比べ、交通事故後の院内死亡率が上昇するという研究結果が報告された。また軽自動車では、頭頸部、胸部、腹部、骨盤および四肢に重度の外傷、重傷を負うリスクが高かったという。神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野の大野雄康氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に2月5日掲載された。  軽自動車は「ミニカー」とも呼ばれ、日本だけでなく海外での人気も高まっている。人気の理由の1つとして、車体のコンパクトさが挙げられるが、それは車内空間が狭まることも意味する。車内空間が狭くなると、衝突時の衝撃による変形に対して乗員がダイレクトに危険に晒されることになる。しかしながら、車内空間の狭さが生存率の低下や、重度の外傷にあたえる影響については十分に検証されてこなかった。こうした背景から、大野氏らは過去に自動車事故で負傷・入院した患者を対象とした単施設の後ろ向きコホート研究を行った。主要評価項目は事故後の院内死亡率とした。

日本人へのbempedoic acid、LDL-C20%超の低下を認める(CLEAR-J)/日本循環器学会

 スタチンで効果不十分あるいはスタチン不耐の高コレステロール血症の日本人患者に対する12週後のbempedoic acidの安全性と有効性が明らかになった―。3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Studies2において山下 静也氏(りんくう総合医療センター 理事長)が発表し、Circulation Journal誌2025年3月28日号に同時掲載された。

造血幹細胞移植後のLTFUを支える試み/日本造血・免疫細胞療法学会

 2025年2月27日~3月1日に第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会が開催され、2月28日のシンポジウム「未来型LTFU:多彩なサバイバーシップを支える次世代のケア」では、がん領域におけるデジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics:DTx)の有用性および造血幹細胞移植治療におけるDTx開発の試みや、移植後長期フォローアップ(Long Term Follow Up:LTFU)の課題解決のためのICT(Information and Communication Technology)活用と遠隔LTFUの取り組み、さらに主に小児・思春期・若年成人(Children, Adolescent and Young Adult:CAYA)世代の造血幹細胞移植における妊孕性温存と温存後生殖補助医療についての話題が紹介された。造血器腫瘍は多彩なサバイバーシップケアの重要性が増しており、次世代ケアの試みが着々と進められている。

PTSDに対するブレクスピプラゾール治療、単剤療法と併用療法の有効性

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するブレクスピプラゾールのセルトラリン併用療法および単剤療法の有効性、安全性、忍容性を評価するため、米国・Otsuka Pharmaceutical Development & Commercialization Inc.のMary Hobart氏らは、ランダム化比較試験を実施し、その結果を報告した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2025年2月19日号の報告。  本試験では、1週間のプラセボ導入期間とその後11週間のランダム化二重盲検実薬参照プラセボ対照並行群間治療期間(フォローアップ期間14日間を含む)で構成された。