スルピリドをいま一度評価する スルピリドは、有害事象の頻度が低く、統合失調症の陰性症状に有効とされる比較的古い抗精神病薬である。相対的に安価でもあるスルピリドは、いくつかの新規非定型抗精神病薬と神経薬理学的プロファイルが類似する。中国・上海交通大学医学院のJijun Wang氏らは、統合失調症に対するスルピリドの有用性をプラセボと比較評価するメタ解析を行った。その結果、プラセボに対する優越性を示すエビデンスはきわめて限られており、著者は、「良好なエビデンスが得られるまでは、臨床試験ではなく実臨床のデータを参考として使用すべきであろう」と報告している。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2014年4月11月号の掲載報告。 スルピリドの精神疾患に対する効果をプラセボと比較 本研究は、統合失調症および重大なその他の精神疾患に対するスルピリドの効果をプラセボと比較評価することを目的として行われた。Cochrane Schizophrenia Group Trials Register(2008年9月)、ならびに引用から特定されたすべての試験のreferenceを検索した。製薬企業や著者と連絡をとり追加情報も得た。検索は、2012年11月7日時点でアップデートし、統合失調症および統合失調症様の精神疾患を対象としたスルピリドとプラセボの無作為化比較試験(RCT)すべてを検索対象とした。主要アウトカムは、全般的状態の臨床的に有意な改善とした。文献と抄録を独自に詳細に調査して文献を入手し、再調査してそれらの質を評価した。データはIMOとJWを用いて抽出。ランダム効果リスク比(RR)を用いて二分法のデータを解析し、95%信頼区間(CI)を算出した。連続変数データが含まれている場合は、ランダム効果平均差(MD)を95%CIとともに解析した。 スルピリドの優越性を示すエビデンスはきわめて限られていた スルピリドの効果をプラセボと比較した主な結果は以下のとおり。 ・2012年の検索において、新しい試験は含まれていなかった。 ・レビューしたところ、スルピリドとプラセボの短期比較を行った2件の試験(計113例)が含まれていた。 ・いずれの試験においても、主要アウトカム(全般的状態:臨床的に有意な改善)および副次アウトカム(QOL・重篤な有害事象・安全性評価)に関する報告はなかった。 ・精神状態に関しては、陽性症状、陰性症状とも2群間で明らかな差はみられなかった。 ・Manchester scaleで測定した陽性症状は分布に偏りがあったため、メタ解析には含めなかった(18例、RCT 1件、エビデンスの質:きわめて低い)。 ・Manchester scaleで測定した陰性症状もまた明らかな差は示されなかった(18例、RCT 1件、MD:-3.0、95%CI:-1.66~1.06、エビデンスの質:きわめて低い)。 ・試験を3ヵ月間継続していた者はほとんどいなかった(113例、RCT 2件、RR:1.00、95%CI:0.25~4.00)。 ・Current Behaviour Schedule(CBS)により、プラセボ群における1つのサブスコアで、社会的行動の有意な改善が認められた(18例、RCT 1件、MD:-2.90、95%CI:-5.60~-0.20)。 ・全般的アウトカム、サービスの使用、有害事象など多くの重要なアウトカムに関するデータはまったく報告されていなかった。 ・以上、スルピリドは効果的な抗精神病薬であるものの、無作為化比較試験によるプラセボに対する優越性を示すエビデンスはきわめて限られていた。
軟部肉腫診療の現在と課題 2014年5月12日(月)、グラクソ・スミスクライン株式会社は、軟部肉腫に関する診療、今後の展望に関するプレスセミナーを開催した。これは同社の悪性軟部腫瘍治療薬パゾパニブ(商品名: ヴォトリエント)の発売から1年半が経過したことから、より一層の疾患の周知に向けて開催されたものである。
何度もCOPD増悪を起こす患者にアジスロマイシンの維持療法は有効か アジスロマイシンによる維持療法はプラセボと比べて有意にCOPD増悪の頻度を減少させることから、増悪を頻繁に起こしやすい患者や標準治療では治りにくい患者への使用は考慮されるべきであることが、オランダのAmphia Ziekenhuis病院のSevim Uzun氏らにより報告された。The Lancet Respiratory Medicine誌 2014年5月号(オンライン版 4月15日号)の掲載より。 現在、マクロライド耐性が問題視されているため、COPD患者に対するマクロライドの維持療法については意見が分かれるところである。そこで、過去1年で3回以上の増悪を経験し、標準治療を行っているCOPD患者に対し、アジスロマイシンを追加した維持療法を行うことで、増悪の頻度が減少するかを調べた。
電子お薬手帳アプリ「おくすり PASS」公開、実証実験へ アイセイ薬局 株式会社アイセイ薬局(代表取締役社長 岡村 幸彦)は、“服薬状況を可視化する”機能を備えた電子お薬手帳アプリ「おくすりPASS」の実証実験を2014年5月12日(月)より、同社日本橋室町店で開始する。
統合失調症患者の過度なカフェイン摂取、どう対処すべき 先行研究において、統合失調症患者は一般集団よりもカフェイン摂取率が高いことが示されている。しかし質的研究は行われていなかったことから、オーストラリア・Neami NationalのLisa Thompson氏らは、統合失調症患者におけるカフェイン摂取の影響に関する検討を行った。その結果、個々のカフェイン摂取に対する信条や行動が明らかとなり、個々人へのアプローチが大切であることを報告した。BMC Psychiatry誌オンライン版2014年4月16日号の掲載報告。
日本発!家族性パーキンソン病患者におけるGBA遺伝子変異研究 グルコセレブロシダーゼ(GBA)遺伝子変異がレビー小体形成を促進し、その結果、より重篤な家族性パーキンソン病もしくはレビー小体型認知症を引き起こす可能性があることが、順天堂大学のYuanzhe Li 氏らによって明らかとなった。Neurobiology of aging誌2014年4月号掲載の報告。
頭頚部皮膚がん、より悪性なのはどの部位発症? 米国・ロードアイランド病院のPatrick M. Mulvaney氏らによる後ろ向きカルテレビューの結果、頭頚部の基底細胞がん(BCC)において、耳のBCCがほかの頭頚部位のBCCと比べて、組織学的な浸潤部位がより大きいと思われることが明らかにされた。
「笑い」でうつ病診断が可能に 「笑い(laughter)」は、うつ病および潜在的な精神疾患の発症および進展の診断ツールとして有用である可能性が、スペイン・Aragon Institute of Health ScienceのJ. Navarro氏らにより報告された。笑いは医学分野において、健康へのよい影響をもたらすことや重大疾患の予防や治療の手法としては研究されてきたが、疾患の予測指標となる可能性や診断ツールとしての可能性については検討されていなかった。Journal of Affective Disorders誌2014年5月号の掲載報告。
「歩行とバランスの乱れ」はアルツハイマーのサインかも バランスと歩行の障害は、アルツハイマー型認知症(AD)のごく初期のサインである可能性が、米国・イサカ・カレッジのLaura Z. Gras氏らによる検討の結果、示された。結果を踏まえて著者は、「これらの問題の認識が以降の理学療法介入を早め、バランスと歩行の障害のさらなる進行を遅らせることが可能になるだろう」と述べている。先行研究で、AD患者では歩行とバランスに障害が出ることが示されている。しかし、その障害を認知症の程度(軽度~重度)の区別なく一律に捉えていた。Journal of Geriatric Physical Therapy誌オンライン版2014年4月21日号の掲載報告。
出生前後のプロバイオティクス投与がアトピーの一次予防の可能性 一般集団およびアレルギーリスクがある集団のいずれにおいても、生誕前後にプロバイオティクスを与えることが、アトピー性皮膚炎(AD)の発症予防に役立つ可能性が、ルーマニアのキャロル・デイビラ・ユニバーシティ・オブ・メディスン・アンド・ファーマシーのM. Panduru氏らにより報告された。
座りきりの生活は心にどのような影響を及ぼすか 座りきりの生活(TV視聴、インターネット利用、読書)すべてが必ずしも、精神衛生に悪影響をもたらすわけではないことが、英国・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのMark Hamer氏らによる調査の結果、報告された。また、TV視聴時間が長いと認知機能低下との関連がみられたが、ネット利用者では認知機能が高いこととの関連がみられたという。Medicine & Science in Sports & Exercise誌2014年4月号の掲載報告。
てんかん患者 発作後の運転再開時期は てんかん患者が、原因が明らかな誘発性発作もしくは、非誘発性発作を初めて起こしてから運転を再開できる時期に関する定量的なデータが、オーストラリア・Royal Perth HospitalのBrown JW氏らによって示された。Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry誌オンライン版4月25日掲載の報告。
小児ADHD、食事パターンで予防可能か これまで子供の行動における食事の役割は議論されてきたが、小児期の行動障害と複数の栄養因子との関連が絶えず示唆されている。韓国・国立がんセンターのHae Dong Woo氏らは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)に関連する食事パターンを明らかにするため、症例対照研究を行った。その結果、伝統的かつ健康的な食事を摂取することで、ADHDリスクが低下する可能性があることが示唆された。Nutrients誌オンライン版2014年4月14日号の報告。
線維筋痛症患者、自殺念慮を3割超が有する 線維筋痛症は、経過とともに自殺を図る患者の割合が増加することが知られている。スペイン・サンティアゴ・デ・コンポステーラ大学のYolanda Trinanes氏らによる検討の結果、線維筋痛症患者の自殺念虜は、うつや不安、日常生活への支障と密接に関連していることが明らかにされた。
無糖コーヒーがうつ病リスク低下に寄与 加糖飲料やコーヒー、紅茶は最も消費されているノンアルコール飲料であり、健康に対し重大な影響を及ぼす。米国Westat社のXuguang Guo氏らは、さまざまな飲料の消費量とうつ病との関連を検討した。PloS one誌オンライン版2014年4月17日号の報告。
女性の顔の肝斑、なぜ起きる? ブラジル・FMB-UnespのHandel A.C.氏らは、ケースコントロール研究により、女性の顔の肝斑発生のリスク因子を調べた。その結果、色素沈着耐久力、先祖、慢性的な日光曝露、性ホルモン薬、向精神薬、不安気質が、それぞれ独立して関連していることを明らかにした。
トラスツズマブ抵抗性進行乳がんへのエベロリムスの追加(BOLERO-3) トラスツズマブ抵抗性の乳がんにおいては、細胞内PI3K/Akt/mTOR経路のシグナル活性化の関与が示唆されている。本研究は、パリ第11大学腫瘍内科のFabrice Andre氏らにより、mTOR阻害薬エベロリムス(商品名:アフィニトール)の追加投与によるトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)感受性回復を評価することを目的に行われた。Lancet Oncology誌オンライン版 2014年4月14日号の報告。