双極性障害は、最初の医療機関を受診時に正しく診断される患者が約4分の1しかおらず、初診から正確な診断に至るまでには平均4年かかることが、杏林大学の渡邊 衡一郎氏らによる調査で明らかになった。Neuropsychiatric disease and treatment誌2016年11月21日号の報告。
双極性障害は、再発や躁病・うつ病エピソードを繰り返す疾患である。そのため、正確な診断・適切な治療開始までに時間がかかる場合が多い。この要因としては、双極性障害に対する医師の理解不足も考えられるが、患者の洞察力不足により、症状を医師へ正確に伝えることができないという可能性も考えられる。また、誤った診断から正しい診断に至った要因がどのようなものかは不明である。
そこで著者らは、これらを明らかにするため、日本の双極性障害患者1,050例を対象にインターネット上でアンケート調査を実施した(2013年2月~3月)。結果は、記述統計を用いて分析した。
主な結果は以下のとおり。
・457例(男性226例、女性231例)が回答した。
・最初の医療機関を受診時、専門医(精神科医、心身医学科医)を受診していたのは86%であった。
・最初の医療機関を受診時の症状は、うつ症状が70%、混合状態が15%、躁状態は4%であった。
・最初の医療機関で双極性障害と正しく診断されていたのは約4分の1であった。
・初期診断で最も多かったのは、うつ病/うつ状態(65%)であった。そのほかに多かったのは、自律神経失調症(14%、日本で未定義の精神疾患の診断に使われる)、パニック障害(11%)であった。
・70%が最初または2件目に受診した医療機関で双極性障害の診断がついたが、残りの30%は正確な診断に至る前に3件以上の医療機関を受診していた。
・初診から正確な診断に至るまでの平均時間差は4年(標準偏差±4.8年)であった。3分の1は5年以上の時間差があった。
・正確な診断に至るまでに時間がかかった主な要因は以下の3つであった。
「躁の症状を病気として認識しておらず、医師に伝えなかった」(39%)
「双極性障害という疾患を知らなかった」(38%)
「医師とのコミュニケーションが欠如していた」(25%)
・70%以上の患者が、双極性障害の診断に至る前に診断が変更された(1回変更 33%、2回変更 25%)。
・正確な診断に至った主な要因は以下の3つであった。
「治療の過程で医師が双極性障害の可能性を疑った」(57%)
「躁状態に切り替わった」(30%)
「他の医師を受診したら、診断が変更された」(28%)
・最初に誤って診断され、不適切な治療が行われたと考えられる患者は、長期就労や学校での勉強ができない(65%)など、社会経済的な問題を最も多く抱えていた。
(ケアネット 武田 真貴子)