統合失調症はがんになりにくいといわれていたが

提供元:ケアネット

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公開日:2017/01/09

 

 ほぼ一世紀の間、統合失調症患者におけるがんの罹患率は、一般人より低いといわれてきた。しかし、ここ10年間で、がんと統合失調症との関係は明確ではなくなってきている。台湾・台北市病院のL Y Chen氏らは、若者や中年の統合失調症患者におけるがんリスクを調査した。Epidemiology and psychiatric sciences誌オンライン版2016年11月21日号の報告。

女性の統合失調症患者は乳がん罹患率が高かった

 台湾の精神科入院患者医療記録データより、2000年1月~2008年12月の新規入院統合失調症患者3万2,731例を対象とし、同期間における各患者の最初の精神科入院をベースラインと定義した。2010年12月までにがん症例514例が抽出された。統合失調症患者と一般人のがんリスクを比較するため、標準化罹患率(SIR)を算出した。性別、罹患部位、ベースライン(最初の精神科入院)からの経過期間により層別分析を行った。

 統合失調症のがんリスクを調査した主な結果は以下のとおり。

・統合失調症患者の全部位のがん罹患率は、同期間の一般人よりもわずかに高かった(SIR:1.15、95%CI:1.06~1.26、p=0.001)。
・男性の統合失調症患者では、結腸直腸がんの罹患率が有意に高かった(SIR:1.48、95%CI:1.06~2.06、p=0.019)。
・女性の統合失調症患者では、乳がん罹患率が高かった(SIR:1.47、95%CI:1.22~1.78、p<0.001)。
・興味深いことに結腸直腸がんリスクは、精神科入院早期よりも5年後でより顕著であった(SIR:1.94、95%CI:1.36~2.75、p<0.001)。乳がんリスクも同様であった(SIR:1.85、95%CI:1.38~2.48、p<0.001)。
・統合失調症ががんを保護していたとの考えに反して、統合失調症患者ではがん罹患率が高かった。

 著者らは「本分析では、統合失調症の男女は特定のがん種に対し脆弱であり、性別特異的なスクリーニングプログラムの必要性が示唆された。男性において結腸直腸がんリスクが精神科入院後5年目に顕著となったことは、不健全な生活習慣やがん診断の遅れの可能性がある」としている。

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(鷹野 敦夫)