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不整脈デバイスの感染防止に抗菌薬追加投与は有効か(PADIT試験)【Dr.河田pick up】

 植込み型の医療機器の感染は重大な結果へとつながりうる。心調律デバイスの場合、術前のセファゾリンが標準的な予防的抗菌薬であるが、デバイス感染症によくみられるメチシリン耐性グラム陽性球菌には有効でない。また、術中よく行われる抗菌薬によるポケット内の洗浄についても明確なエビデンスはない。この研究は、標準的なセファゾリンに加えて、周術期に抗菌薬を追加投与することの有効性を評価することを目的として行われた。なお、本研究のユニークな点は患者ではなく、施設ごとに無作為化を行っている点である。

ペムブロリズマブのNSCLC1次治療、3パターンが国内承認/MSD

 MSD株式会社は、2018年12月21日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、非小細胞肺がんにおける以下の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。 ・PD-L1発現にかかわらず切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)に対する初回治療としてペメトレキセド+プラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)との併用療法としての適応拡大 ・PD-L1発現にかかわらず切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(扁平上皮癌)に対する初回治療としてカルボプラチン+パクリタキセルまたはnab-パクリタキセルとの併用療法としての適応拡大 ・PD-L1陽性(TPS1≧1%)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対する初回治療としての単独療法としての適応拡大

統合失調症治療の医療資源利用とコストにおける持効性注射剤と経口剤との比較

 抗精神病薬の使用において、長時間作用型持効性注射剤(LAI)は経口剤と比較し、アドヒアランスの改善や投薬回数の減少により、医療資源利用を減少させる可能性がある。米国・AlkermesのAnkit Shah氏らは、統合失調症と最近診断された患者におけるLAIと経口抗精神病薬の治療パターンについて調査を行った。Advances in Therapy誌2018年11月号の報告。  MarketScan Multi-state Medicaid databaseを用いて、2011~14年にLAIまたは経口抗精神病薬を投与された18歳以上の統合失調症患者を抽出した。主要アウトカムは、アドヒアランス(PDCの対象となる日数の割合として測定)、継続性、中止、切り替え、医療資源利用率、コストなどの治療パターンとした。コホート間のベースライン特性の違いは、傾向スコアマッチング(PSM)を用いて制御した。アウトカムは、登録後12ヵ月間にわたって評価し、治療コホート間で比較を行った。

乾癬患者は甲状腺疾患のリスクが高い

 これまで、乾癬と甲状腺疾患との関連はよくわかっていなかった。乾癬患者では、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、甲状腺炎、バセドウ病および橋本病などの甲状腺疾患リスクの増加が認められると、台湾・輔仁大学のShu-Hui Wang氏らによるコホート研究で明らかになった。著者は、「乾癬患者が甲状腺疾患の症状を呈した場合は、内分泌科への紹介を考慮したほうがいいだろう」とまとめている。なお、研究の限界として乾癬患者の重症度のデータが不足していた点を挙げている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年12月5日号掲載の報告。

心代謝特性はBMIと関連するか

 BMIは脂肪を非脂肪と区別せず、脂肪分布を無視し、健康への影響を検出する能力が不明とのことで批判されている。今回、英国・ブリストル大学のJoshua A. Bell氏らは、心代謝特性との関連においてBMIと二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による全身および局所の脂肪指数(fat index)を比較した。その結果から、腹部の肥満が心代謝障害の主因であり、その影響の検出にBMIが有用なツールであることが支持された。Journal of the American College of Cardiology誌2018年12月18日号に掲載。

ペムブロリズマブのMSI-H固形がんが国内承認…臓器横断的がん治療が現実に/MSD

 MSD株式会社は、2018年2月12日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得した。この適応拡大は医薬品の条件付き早期承認制度の適用を受けていた。  高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)とは、傷ついたDNAを修復する機能が低下していることを示すバイオマーカー。細胞は、DNA複製時に自然に起こる複製ミスを修復する機能をもっているが、この修復機能の低下によって、DNAの繰り返し配列(マイクロサテライト)が正常な細胞と異なる状態になっていることをマイクロサテライト不安定性(MSI)と呼び、このMSIが高頻度に起きている現象を高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)と呼ぶ。

食事療法の見直しへ日本糖尿病学会が動き出す

 食の欧米化や糖質制限の流行、高齢者の低栄養が問題となる昨今、日本人における食事療法の見直しが迫られている。2018年11月5日、日本糖尿病学会が主催する「食事療法に関するシンポジウム」が、5年ぶりに開催された。講演には、座長に羽田 勝計氏(「糖尿病診療ガイドライン2016」策定に関する委員会委員長)と荒木 栄一氏(「糖尿病診療ガイドライン2019」策定に関する委員会委員長)を迎え、5名の糖尿病専門医らが登壇した。  また、パネルディスカッションには、さまざまな観点からの意見を求めるべく、5つの団体(日本老年医学会、日本腎臓学会、日本動脈硬化学会、日本肥満学会、日本病態栄養学会、日本糖尿病協会)の代表が参加した。

大気中のブラックカーボン、高齢者の眼圧上昇に影響?

 眼圧上昇は、世界的にも不可逆的失明の主因とされる、緑内障の大きなリスク因子である。眼圧上昇の潜在的な一因として大気汚染が示唆されているが、これまでその関連を示す研究はほとんどされていない。米国・ハーバード大学のJamaji C. Nwanaji-Enwerem氏らは、米国退役軍人省のNormative Aging Studyにおける高齢男性のデータを解析し、生物学的に酸化ストレスの影響を受けやすい人では、大気中のブラックカーボンが眼圧上昇の危険因子になりうることを明らかにした。著者は、「さらなる研究で今回の結果が確認された場合、大気中のブラックカーボンの曝露や生理的な酸化ストレスをモニタリングすることで、眼圧に影響を及ぼす疾患の発症、進行を防ぐことができるかもしれない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2018年11月8日号掲載の報告。

アジア人でより良好な結果、ニボルマブ+イピリムマブによる高TMB肺がん1次治療(CheckMate-227)/日本肺癌学会2018

 第III相CheckMate-227試験(Part 1)の結果、高腫瘍遺伝子変異量(TMB)の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療において、ニボルマブ・イピリムマブの併用療法が標準化学療法と比較して有意に無増悪生存期間(PFS)を延長したことがすでに報告されている。本試験のアジア人サブグループ解析結果を、がん研究会有明病院の西尾 誠人氏が11月29~12月1日に東京で開催された第59回日本肺癌学会学術集会で発表した。なお、本結果は、11月8~10日に中国・広州市で開催されたIASLC ASIAでのKeunchil Park氏による発表のアンコール演題。

デュルバルマブMYSTIC試験のOS結果/アストラゼネカ

 アストラゼネカとそのグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンは、2018年12月13日、スイスのジュネーブで開催された2018年欧州臨床腫瘍学会がん免疫療法会議において第III相MYSTIC試験の全生存期間および無増悪生存期間に関するデータを発表した。  MYSTIC試験は、未治療のステージIV非小細胞肺がん患者を対象としてデュルバルマブ単剤またはデュルバルマブと抗CTLA-4抗体tremelimumabの併用療法を、プラチナベースの標準化学療法とを比較検討した多施設共同無作為化非盲検国際第III相試験。主要評価項目は、PD-L1発現25%以上の患者における、デュルバルマブ単独療法のOS、デュルバルマブ・tremelimumab併用療法のPFSおよびOS。

京都大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科「医療人のための学術・基本マナーセミナー」【ご案内】

 京都大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科は、2019年1月21日(月)、「医療人のための学術・基本マナーセミナー」を開催する。医師には、日々の臨床や研究成果の学会発表、英語論文の世界発信などが求められるため、学会抄録やスライドの作成、プレゼンテーション、統計解析、英語論文作成における能力が必要となる。しかし、医学生時代はもちろん、医師として就業後も、これらを系統的に教わる機会が少ないため、社会人としての基本マナーや常識を学んでいない医師も多いという。

糖尿病患者の認知症リスク、活動的・社会的な生活で減らせるか

 糖尿病関連認知症に対する健康的な生活習慣の効果はまだわかっていない。今回、活動的な生活習慣と豊かな社会的ネットワークが糖尿病患者の認知症リスクの増加を防げるかどうか、スウェーデン・ストックホルム大学のAnna Marseglia氏らが検討した。その結果、活動的で社会的な生活習慣が、認知症リスクにおける糖尿病の有害作用を打ち消す可能性があることが示唆された。Diabetes Care誌オンライン版2018年12月6日号に掲載。

飲酒運転の再発と交通事故、アルコール関連問題、衝動性のバイオマーカーとの関連

 危険な運転行為において、個々の生物学的な傾向が役割を担うはずである。衝動性、アルコール使用、過度なリスクのマーカーとして、血清モノアミンオキシダーゼ(MAO)、ドパミントランスポーター遺伝子(DAT1)、神経ペプチドS1受容体(NPSR1)遺伝子多型が同定されている。エストニア・タルトゥ大学のTonis Tokko氏らは、衝動性の神経生物学的因子が、飲酒運転や一般的な交通行動に及ぼす影響について検討を行った。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2018年11月26日号の報告。

このままでは現場は崩壊、医療のかかり方を厚労省懇談会が提言

 皆保険制度を維持しつつ医療の質を確保していくため、また医師の需給対策や医師の働き方改革を進めるにあたり、医療を受ける側の意識変容は欠かせない。2018年10月から5回にわたり開催されてきた厚生労働省「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」が12月17日、“「いのちをまもり、医療をまもる」国民プロジェクト宣言”と題したアクションプランを発表した。このアクションプランでは、医療を取り巻く状況の変化が大きい中で、市民・医師/医療提供者・行政・民間企業のそれぞれの立場で起こしていくべきアクションの例が提示されている。

複合免疫療法の時代へ、変化する腎細胞がん薬物療法

 転移した場合は有効な抗がん化学療法がなく、術後10年以上経過しても再発がみられる場合があるなど、ほかのがん種とは異なる特徴を多く持つ腎細胞がん。近年は分子標的治療薬が薬物療法の中心だったが、2016年8月に抗PD-1抗体ニボルマブの単剤療法(2次治療)、2018年8月にニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法(1次治療)が承認され、大きな変化が訪れている。12月7日、都内で「変化する腎細胞がんに対する薬物療法」と題したメディアセミナーが開催され(共催:小野薬品工業、ブリストル・マイヤーズ スクイブ)、大家 基嗣氏(慶應義塾大学医学部泌尿器科 教授)が講演した。

統合失調症患者に対するアリピプラゾール持効性注射剤切り替え~ドイツにおけるコスト比較

 ドイツ・Institute of Empirical Health EconomicsのChristoph Potempa氏らは、統合失調症治療において経口抗精神病薬からアリピプラゾール持効性注射剤へ切り替えることによるコスト推進要因を調査し、ドイツのヘルスケア環境における予算影響分析(BIA)を行った。Health Economics Review誌2018年11月23日号の報告。  単一レトロスペクティブ非介入前後比較研究として実施された。統合失調症患者132例を対象に、経口抗精神病薬治療およびアリピプラゾール持効性注射剤治療における精神科入院率と関連費用の比較を行った。両治療期間におけるヘルスケア関連費用を比較するため、BIAを用いた。結果のロバスト性を評価するため、単変量感度分析を行った。

アトピー性皮膚炎患者、皮膚以外の感染症リスク上昇

 アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚への細菌定着や感染の増加、皮膚以外の感染症の多数のリスク因子に関連している。しかし、ADが皮膚以外の感染症の増加と関連しているかどうかについては、これまでの研究では相反する結果が得られていた。米国・ノースウェスタン大学のLinda Serrano氏らはシステマティックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、AD患者は、皮膚以外の感染症リスクが高いことが明らかとなった。著者は「今後、これらの関連を確認し、その機序を明らかにする必要がある」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年11月21日号掲載の報告。

薬剤耐性菌の拡大を防ぐ「かぜ診療」最前線

 薬剤耐性(AMR)の問題は、これに起因する死亡者数が2050年には1,000万人に上ると推定されている喫緊の課題だ。2018年12月8日、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターは抗菌薬の適正使用を目指し「かぜ診療ブラッシュアップコース」を都内で開催した。  「適切なかぜ診療を行う際に知っておきたいこと」と題し、藤友結実子氏(国立国際医療センター病院 AMR臨床リファレンスセンター)が、一般市民の抗菌薬に関する意識調査の結果を紹介した。抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある割合は94.2%だが、効果に関しては、71.9%が「細菌が増えるのを抑える」と正しく認識している一方、40.9%「熱を下げる」、39.9%が「痛みを抑える」とも回答している。

抗うつ薬使用と道路交通事故による死亡との関連

 抗うつ薬は、最も一般的に使用されている精神疾患治療薬の1つである。しかし、抗うつ薬治療において、薬剤のクラス間または各物質に関連する交通事故リスクへの影響については、ほとんど知られていない。韓国・ソウル大学校病院のBo Ram Yang氏らは、道路交通事故における抗うつ薬使用と死亡リスクとの関連について調査を行った。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2018年11月24日号の報告。

日本人の血圧は意外とコントロールできていない

 生活習慣病のなかで最も罹患率の高い高血圧。これを治療するための有用な薬剤が普及し、世界的に治療率は改善している。ところが、日本人の高血圧のコントロール率はアジア諸国と比較してもまだまだ低く、高血圧パラドックスに陥っている。 2018年11月14日に日本心臓財団が主催する「高血圧パラドックスの解消に向けて‐脳卒中や認知症、心不全パンデミックを防ぐために必要なこととは?‐」が開催され、楽木 宏実氏(大阪大学大学院 医学系研究科老年・総合内科学 教授)が登壇した。