腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

第22回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2025

 日本臨床腫瘍学会は2025年2月13日にプレスセミナーを開催し、3月6日~8日に神戸で開催される第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)の注目演題などを紹介した。今回の学会長は徳島大学の⾼⼭ 哲治氏が務め、「Precision Oncology Toward Practical Value for Patients」というテーマが設定された。  2019年にがん遺伝⼦パネル検査が保険収載となり今年で5年を迎える。検査数は毎年順調に増加しているものの、「検査を受けられるのは標準治療終了後、または終了見込み時に限られる」「保険適応となる薬剤が限られ、かつ承認外薬を使うのは煩雑」などの要因から、検査後に推奨された治療に到達する患者は10%程度に限られる現状がある。日本臨床腫瘍学会をはじめとしたがん関連学会は長くこの状況を問題とし、改善を図る活動を行ってきた。今回のテーマにもそうしたメッセージが込められている。

HER2陽性早期乳がん術前化学療法後non-pCRに対するT-DM1のアップデート(解説:下村昭彦氏)

術前化学療法(分子標的薬併用を含む)は早期乳がんに対する標準治療として確立している。HER2陽性乳がんやトリプルネガティブ乳がんでは、術前化学療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られた場合は再発のリスクが下がることが知られているが、得られなかった場合(non-pCR)の再発リスクが高いことがunmet medical needsとして認識されてきた。そのため、non-pCRに対する術後治療に対するエビデンスがここ10年で蓄積し、また現在も開発されている。トラスツズマブ併用術前化学療法を受けたHER2陽性早期乳がんで、手術病理でnon-pCRであった症例を対象としてT-DM1の有効性を示した試験がKATHERINE試験である。2019年にNEJM誌に報告され(von Minckwitz G, et al. N Engl J Med. 2019;380:617-628.)、日本国内でも2020年に適応拡大されている。KATHERINE試験は、タキサンならびにトラスツズマブを含む術前化学療法を受け、乳房または腋窩リンパ節に浸潤がんが遺残していたHER2陽性乳がんに対し、術後治療として当時の標準療法であるトラスツズマブ単剤とT-DM1を比較した試験である。ホルモン受容体陽性の場合はホルモン療法が併用された。

多発性骨髄腫の新規治療開発を加速するMRDに基づくエンドポイント/JCO

 多発性骨髄腫(MM)の新たな治療の早期承認を実現するためには、臨床試験を迅速化するための早期エンドポイントが必要である。今回、米国・メイヨークリニックのQian Shiらは、新規診断の移植適格患者・移植不適格患者、再発/難治性(RR)の多発性骨髄腫患者において、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の中間エンドポイントとして微小残存病変(MRD)陰性完全奏効(CR)の可能性を検討した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年2月12日号に掲載。

乳がん術後マンモグラフィ、頻度を減らすことは可能か/Lancet

 乳がんの診断時年齢が50歳以上で根治手術から3年が経過し、再発のない女性では、年1回のマンモグラフィ検査に対し、2年または3年に1回の低頻度マンモグラフィ検査は、乳がん特異的生存率、無再発率、全生存率に関して非劣性であることが、英国・ウォーリック大学のJanet A. Dunn氏らが実施した「Mammo-50試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年2月1日号で報告された。  Mammo-50試験は、年1回のマンモグラフィ検査に対する年1回以下の低頻度マンモグラフィ検査の非劣性の評価を目的とする実践的な無作為化第III相試験であり、2014年4月~2018年9月の期間に英国の114の病院で参加者を登録した(英国国立衛生研究所[NIHR]Health Technology Assessment programmeの助成を受けた)。

ICI関連心筋炎の診断・治療、医師の経験値や連携不足が影響

 2023年にがんと心血管疾患のそれぞれに対する疾病対策計画が公表され、その基本計画の一環として、循環器内科医とがん治療医の連携が推奨された。しかし、当時の連携状態については明らかにされていなかったため、新潟県内の状況を把握するため、新潟県立がんセンター新潟病院の大倉 裕二氏らは「免疫チェックポイント阻害薬関連心筋炎(ICIAM)についての全県アンケート調査」を実施。その結果、ICIAMではアントラサイクリン関連心筋症(ARCM)と比較し、循環器内科医とがん治療医の双方の経験や組織的な対策が少なく、部門間連携の脆弱性が高いことが明らかとなった。Circulation Report誌オンライン版2025年2月4日号掲載の報告。

化学療法誘発性末梢神経障害患者の10人に4人が慢性的な痛みを経験

 化学療法誘発性の末梢神経障害(chemotherapy induced peripheral neuropathy;CIPN)の診断を受けたがん患者の10人に4人が慢性的な痛みを抱えていることが、新たなシステマティックレビューとメタアナリシスにより明らかになった。米メイヨー・クリニックの麻酔科医であるRyan D’Souza氏らによるこの研究は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に1月29日掲載された。D’Souza氏は、「われわれの研究結果は、慢性的な痛みを伴うCIPNは、末梢神経障害と診断された人の40%以上に影響を及ぼす、世界的に見ても重大な健康問題であることを明示している」と述べている。

胃がんの術後補助化学療法、75歳超の高齢者にも有効/国立国際医療研究センターなど

 StageII/IIIの切除可能胃がん患者では、手術単独では再発リスクが高いため術後補助化学療法が標準治療となっている。しかし、臨床試験では75歳超高齢患者の参加が限られ、75歳超高齢者に対する術後化学療法に関しては、これまで明確なエビデンスが得られていなかった。  国立国際医療研究センター・山田 康秀氏らの研究グループは、日本胃癌学会が管理する全国胃癌登録のデータを用いて75歳超の高齢患者を含めた胃がん患者の特徴を解析、生存期間に影響を与える因子を特定し、術後補助化学療法の効果を検証した。本試験の結果はGlobal Health and Medicine誌オンライン版2025年1月25日号に掲載された。

ダラツムマブ配合皮下注、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫に申請/J&J

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2025年2月14 日、ダラツムマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)(商品名:ダラキューロ配合皮下注)について、「高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫」を効能又は効果として、製造販売承認事項一部変更承認申請を行った。  今回の申請は、高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)を対象にダラツムマブ・ボルヒアルロニダーゼ アルファ配合皮下注単剤療法の有効性と安全性を検証した国際共同第III相AQUILA試験に基づくもの。

NRG1融合遺伝子陽性がんへのzenocutuzumab、とくに期待できるがん種は?/NEJM

 進行ニューレグリン1(NRG1)融合遺伝子陽性がんに対するzenocutuzumab(MCLA-128)の有効性および安全性を評価した第II相臨床試験の結果が、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのAlison M. Schram氏らeNRGy Investigatorsにより報告された。とくに非小細胞肺がん(NSCLC)および膵臓がんの患者において有効性が示され、有害事象の大部分は低Gradeであった。NRG1融合遺伝子は、複数の固形がんで確認されているリカレントながんドライバー遺伝子で、NRG1がヒト上皮成長因子受容体3(HER3)に結合し、HER2とのヘテロ二量体化と下流での腫瘍成長および増殖経路の活性化を引き起こす。zenocutuzumabは、HER2およびHER3を標的とする初の二重特異性抗体薬で、前臨床試験では複数の種類の腫瘍でzenocutuzumabの抗腫瘍活性が示されていた。NEJM誌2025年2月6日号掲載の報告。

未治療CLLへの固定期間のアカラブルチニブ併用療法、PFSを改善/NEJM

 未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、BTK阻害薬アカラブルチニブとBCL-2阻害薬ベネトクラクスの併用療法は、抗CD20抗体オビヌツズマブの追加有無にかかわらず、化学免疫療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJennifer R. Brown氏らAMPLIFY investigatorsが27ヵ国133施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「AMPLIFY試験」で示された。未治療CLL患者において、アカラブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用投与が、化学免疫療法と比べてPFSが優れるかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2025年2月5日号掲載の報告。