整形外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:13

骨粗鬆症患者の2型DM発症リスク、デノスマブvs 経口ビスホスホネート製剤/BMJ

 骨粗鬆症患者において、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤デノスマブの投与は経口ビスホスホネート製剤を投与した場合と比較して2型糖尿病(DM)の発症リスクが32%低下したことが、中国・The Chinese PLA General HospitalのHouchen Lyu氏らによるコホート研究で示された。2型DMのリスクが高い前糖尿病状態または肥満の患者では、デノスマブにより糖尿病発症リスクはさらに低下することも示唆され、著者は、「本研究は、デノスマブが経口ビスホスホネート製剤と比較し、糖代謝に対して付加的な有益性をもたらすというエビデンスを示している」とまとめている。これまで、観察研究や無作為化臨床試験の事後解析において、血糖変動に対するデノスマブの効果が示唆されていたが、デノスマブが2型DMのリスクを減少させるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌2023年4月18日号掲載の報告。

身長が5mm低くなっただけで死亡リスクが有意に上昇―日本人での縦断研究

 加齢に伴い、わずかに身長が低くなっただけで、死亡リスクが有意に高くなる可能性を示唆するデータが報告された。2年間で5mm以上低くなった人は、そうでない人より26%ハイリスクだという。福島県立医科大学医学部腎臓高血圧内科の田中健一氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に3月3日掲載された。  身長は椎間板の変形や椎骨骨折などの影響を受けて、歳とともに徐々に低くなる。そのような身長短縮の影響は骨粗しょう症との関連でよく検討されており、また死亡リスクとの関連も検討されている。ただし後者については、2cm以上という顕著な身長短縮が見られた場合を評価した研究が多く、わずかな身長短縮と死亡リスクの関連は明らかになっていない。田中氏らは、特定健診研究(J-SHC study)のデータを用いて、軽微な身長短縮の死亡リスクへの影響を縦断的に検討した。

糖尿病が五十肩のリスク因子の可能性

 糖尿病が五十肩(frozen shoulder)のリスクを高める可能性を示唆する研究結果が、「BMJ Open」に1月4日掲載された。英キール大学のBrett Paul Dyer氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、糖尿病でない人を基準とするオッズ比が3倍を超えるという。  五十肩の病因の詳細は不明だが、甲状腺機能障害や心血管代謝疾患などとの関連のあることが報告されており、また糖尿病患者の五十肩の有病率は13.4%とするメタ解析の結果がある。ただし、糖尿病が五十肩のリスク因子なのか否かという点は、十分に明らかになっているとは言えない。これを背景としてDyer氏らは、糖尿病の発症と五十肩の発症の時間的関係を検討するという目的で、過去の長期観察研究を対象とするシステマティックレビューとメタ解析を行った。

急性非特異的腰痛への鎮痛薬を比較~RCT98件のメタ解析/BMJ

 1万5千例以上を対象とした研究が行われてきたにもかかわらず、急性非特異的腰痛に対する鎮痛薬の臨床決定の指針となる質の高いエビデンスは、依然として限られていることを、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMichael A. Wewege氏らがシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、報告した。鎮痛薬は、急性非特異的腰痛に対する一般的な治療であるが、これまでのレビューではプラセボと鎮痛薬の比較で評価されており、鎮痛薬の有効性を比較したエビデンスは限られている。著者は、「臨床医と患者は、鎮痛薬による急性非特異的腰痛の管理に慎重となることが推奨される。質の高い直接比較の無作為化試験が発表されるまで、これ以上のレビューは必要ない」とまとめている。BMJ誌2023年3月22日号掲載の報告。

肺がん骨転移へのゾレドロン酸8週ごと投与/日本臨床腫瘍学会

 肺がん骨転移に対するゾレドロン酸8週ごと投与の結果を、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2023)で、大阪国際がんセンターの田宮 基裕氏が発表した。  ゾレドロン酸は、固形がんのがん骨関連事象(SRE)や症状緩和には欠かせない薬物である。一方、顎骨壊死などの重篤な有害事象の発現リスクも見逃せない。そのため、投与間隔の長短による、有効性と安全性の違いが研究されている。田宮氏が発表した無作為オープンラベル第II相試験(Hanshin Cancer Group0312)は、添付文書用法である3〜4週ごとと、8週ごとを比較したもの。

ミトコンドリア超複合体の「見える化」で筋力を高める薬物を発見

 筋肉でエネルギーを産生する際に重要な「ミトコンドリア超複合体」の可視・定量化(見える化)に成功したとする、東京都健康長寿医療センター研究所の井上聡氏らの論文が、「Nature Communications」に1月25日掲載された。ミトコンドリア超複合体を増やして筋肉の持久力を高める薬剤も見つかったという。  筋肉は運動のために大量のエネルギーを必要とし、そのエネルギーは細胞内小器官であるミトコンドリアによって作られている。ミトコンドリアの内部では「複合体」と呼ばれるタンパク質同士が結合して、さらに大きな「ミトコンドリア超複合体」という集合体を作ることで、より多くのエネルギーを産生している。ただ、これまでは生きた細胞(生体内)のミトコンドリア超複合体を観察することができず、研究の足かせとなっていた。そこで井上氏らは、まず、ミトコンドリア超複合体の可視化に取り組んだ。

抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。

通院先の病院までの距離と下肢切断リスクが有意に関連

 末梢動脈疾患(PAD)で治療を受けている患者の自宅から病院までの距離と、下肢切断リスクとの関連を検討した結果が報告された。病院までの距離が長いほど切断リスクが高いという有意な関連が認められたという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に10月12日掲載された。  PADは心筋梗塞や脳卒中と並ぶ動脈硬化性疾患の一つ。下肢の疼痛や潰瘍などの主要原因であり、進行すると下肢切断を余儀なくされる。高齢化や糖尿病の増加などを背景に、国内でもPADが増加傾向にあるとされている。PADに対しては、動脈硬化リスク因子の管理に加えてフットケアなどの集学的な治療が行われるため、地域の中核病院への通院が必要なことが多い。一方でPADは高齢者に多い疾患であり、遠方の医療機関へのこまめな通院が困難なこともある。PAD以外の外科領域では、自宅から病院までの距離が疾患の転帰に影響を与える可能性を示唆する研究結果が報告されている。しかしPADに関するそのような視点での研究は少なく、特に日本発の報告は見られない。

疼痛に有効な抗うつ薬は?/BMJ

 オーストラリア・シドニー大学のGiovanni E. Ferreira氏らは、成人の疼痛において抗うつ薬とプラセボを比較した試験に関する26件の系統的レビューのデータの統合解析を行った。抗うつ薬の有効性を示す確実性が「高」のエビデンスは得られなかったが、4種の疼痛において、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の有効性を示す確実性が「中」のエビデンスが確認された。研究の成果は、BMJ誌2023年2月1日号に掲載された。  研究グループは、病態別の疼痛に対する抗うつ薬の有効性、安全性、忍容性に関して、包括的な概要を提示する目的で、系統的レビューのデータを統合して要約した(特定の研究助成は受けていない)。

アスピリンでいいの?(解説:後藤信哉氏)

骨折症例は肺塞栓症などの致死的静脈血栓リスクが高いと認識されている。欧米諸国では静脈血栓予防の標準治療は低分子ヘパリンである。皮下注射といえども注射と経口の差異は大きい。血栓イベント予防が目的であれば経口薬が好ましい。静脈血栓予防におけるアスピリンの有効性については長年の議論がある。無効とも言いにくいが、抗凝固薬よりも有効性が乏しいと一般に理解されていると思う。しかし、本論文のintroductionに記載されているようにアスピリンと低分子ヘパリンとのしっかりしたランダム化比較試験が施行されてきてはいない。