整形外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

バイオニック膝関節を用いた義足で下肢切断患者の動きが改善

 「より良く、より強く、より速く」。これはテレビドラマシリーズ『600万ドルの男(Six Million Dollar Man)』に登場するバイオニック・マンのキャッチフレーズだが、近い将来、足を膝上で切断した人にも同じ言葉が当てはまるようになるかもしれない。米マサチューセッツ工科大学(MIT)K. Lisa Yangバイオニクス・センター共同ディレクターのHugh Herr氏らが、オッセオインテグレーテッド・メカノニューロナル人工装具(OMP)と呼ばれるバイオニック膝関節を用いた義足(以下、バイオニック義足)によって切断患者の歩行速度が向上し、階段の昇降も楽になり、障害物をうまく避けられるようになったとする研究結果を、「Science」に7月10日発表した。

自分のトリセツを知るとだいぶ楽になる(解説:岡村毅氏)

認知行動療法について、皆さんはどのくらい知っているだろうか? 医療が「悪いところを取る」「折れたものをつなげる」「薬を飲んで治す」といった領域だけだと思っているシンプルな人にはなかなかわかってもらえない。大学生などに説明するときに使っているのは「自分のトリセツを知ることだ」という説明である。たとえば、こうである…。最近とても暑いので、精神科の外来では調子の悪いパニック症の人によく出会う。「空気が熱いと息苦しい感じがする。パニック発作のときみたいな体験をする。そうなると不安が亢進し、呼吸が速くなり、確かにパニック発作が起きてしまう」と説明すると、多くの患者さんは良くなる。自分の身に何が起きているかわかるからである。

加熱式タバコの使用が職場における転倒発生と関連か

 運動習慣や長時間座っていること、睡眠の質などの生活習慣は、職場での転倒リスクに関係するとされているが、今回、新たに「加熱式タバコ」の使用が職場における転倒発生と関連しているとする研究結果が報告された。研究は産業医科大学高年齢労働者産業保健センターの津島沙輝氏、渡辺一彦氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に6月6日掲載された。  転倒は世界的に重大な公衆衛生上の懸念事項である。労働力の高齢化の進む日本では、高齢労働者における職場での転倒の増加が深刻な安全上の問題となっている。この喫緊の課題に対し、政府は転倒防止のための環境整備や、労働者への安全研修の実施などの対策を講じてきた。しかし、労働者一人ひとりの生活習慣の改善といった行動リスクに着目した戦略は、これまで十分に実施されてこなかった。また、運動習慣や睡眠などの生活習慣が職場での転倒リスクと関連することは、複数の報告から示されている。一方で、紙巻タバコや加熱式タバコなどの喫煙習慣と転倒リスクとの関連については、全年齢層を対象とした十分な検討がなされていないのが現状である。このような背景を踏まえ、著者らは加熱式タバコの使用と職業上の転倒との関連を明らかにすることを目的として、大規模データを用いた全国規模の横断研究を実施した。

ふくらはぎが細くなったら筋量減少のサインかも?

 骨格筋量の減少は中年期から始まり、加齢とともに進行する。筋量の低下は、高齢者における転倒やさまざまな疾患の発症リスクにつながるため、早期の発見と予防が重要である。今回、ふくらはぎ周囲長の変化で筋量の変化を簡易評価できるとする研究結果が報告された。年齢や肥満の有無にかかわらず、ふくらはぎ周囲長の変化は筋量の変化と正の相関を示したという。研究は公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所の川上諒子氏、早稲田大学スポーツ科学学術院の谷澤薫平氏らによるもので、詳細は「Clinical Nutrition ESPEN」に5月29日掲載された。  ふくらはぎ周囲長は高齢者の栄養状態や骨格筋量の簡便な指標とされているが、その変化と筋量変化との関連を直接検討した縦断研究は存在しない。そこで著者らは、日本人成人を対象に、2回のコホート研究のデータを用いて両者の関連を検証する縦断研究を行った。

高齢の日本人男性で腸内細菌叢がサルコペニアと相関か

 我々の腸内には、約1,000種類・100兆個にも及ぶ細菌が存在している。これらの細菌は、それぞれ独自のテリトリーを維持しながら腸内細菌叢(GM)という集団を形成している。近年では、GMが全身疾患と関連していることが明らかになってきた。今回、日本の高齢者を対象とした研究において、男性サルコペニア(SA)患者では、非SA患者に比べてGMのα多様性が有意に低下しβ多様性にも有意な違いを認めることが報告された。研究は順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター消化器内科の浅岡大介氏らによるもので、詳細は「Nutrients」に5月21日掲載された。

薬に頼らず膝の痛みを軽減するには装具がベスト

 ズキズキとした膝の痛みに悩まされている高齢者は少なくないが、薬を使わずに変形性膝関節症(KOA)を治療する確実な方法は数多くあることが、新たなエビデンスレビューで示された。膝装具、水治療法、運動のいずれもがKOAの痛みを効果的に緩和することが示されたという。内江第一人民病院(中国)のYuan Luo氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に6月18日掲載された。  Luo氏らは、「これらの治療選択肢は、一般的な鎮痛薬で生じ得る胃腸や心血管などのリスクを伴うことなく痛みを軽減し、関節の可動性を向上させる。患者と臨床医は、これらのエビデンスに基づいた選択肢を優先すべきだ」と述べている。

ウェイトベストは減量に伴う骨密度低下の抑制に効果なし

 ウェイトベストは、減量に伴う骨密度の低下を予防する手段として期待が寄せられている。これは、ウェイトベストを着用してウォーキングやジョギングを行うことで、体にかかる負荷を維持しながら骨組織に機械的ストレスを与えることができ、減量に伴う骨量の喪失を最小限に抑えられると考えられているからだ。しかし、新たな臨床試験により、この考え方は科学的に裏付けられないことが明らかになった。ウェイトベストを着用しても、減量に伴う骨密度の低下を有意に抑制する効果は確認されなかったのである。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に6月20日掲載された。

難聴への早期介入には難聴者への啓発が重要/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、本年11月15~26日にわが国で初めてデフ(きこえない・きこえにくい)アスリートのための国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が開催されることを記念し、都内でスポーツから難聴を考えるメディアセミナーを開催した。セミナーでは、難聴のアスリートである医師の軌跡、高齢者と聴力と健康、難聴への早期介入の重要性などが講演された。  東京2025デフリンピックは、上記12日間の日程で都内を中心に、約80ヵ国のアスリート3,000人を迎え、21競技で開催される。

乾癬性関節炎では関節リウマチよりも診断が遅れる

 乾癬性関節炎(PsA)患者は関節リウマチ(RA)患者と比較して診断が遅れるという研究結果が、「Annals of the Rheumatic Diseases」に3月29日掲載された。  英バース大学のRachel A. Charlton氏らは、PsA患者とRA患者の診断に至るまでの期間を比較した。解析対象となったのは、PsA患者2,120人と、年齢と性別でマッチさせたRA患者2,120人であった。  解析の結果、症状が発現してから専門医に紹介されるまでの期間は、PsA患者の方がRA患者よりも長かった。PsA患者の方が、かかりつけ医を受診してから診断を受けるまでの期間が長く(平均112日対89日、ハザード比〔HR〕0.87)、二次医療機関に紹介された後の診断の遅れも認められた(HR 0.86)。多発性関節炎を有する患者において、ベースライン時における疾患修飾性抗リウマチ薬の処方率は、PsA患者の方がRA患者よりも低かった(それぞれ54.0%、69.0%)。28関節を対象とする疾患活動性スコアは、ベースライン時ではRA患者の方が高かったが、3カ月後にはPsA患者の平均スコアの方が高くなった。

SGLT2阻害薬で糖尿病患者の転倒リスク上昇

 SGLT2阻害薬(SGLT2-i)が、2型糖尿病患者の転倒リスクを高めることを示唆するデータが報告された。筑波大学システム情報系の鈴木康裕氏らが行った研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に3月17日掲載された。  転倒やそれに伴う骨折や傷害は、生活の質(QOL)低下や種々の健康リスクおよび死亡リスクの増大につながる。糖尿病患者は一般的に転倒リスクが高く、その理由として従来、神経障害や網膜症といった合併症の影響とともに、血糖降下薬使用による低血糖の影響が指摘されていた。さらに比較的近年になり、血糖降下以外の多面的作用が注目され多用されるようになった、SGLT2-iやGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)に関しては、体重減少とともに筋肉量を減少させることがあり、その作用を介して転倒リスクを高める可能性も考えられる。ただし、実際にそのようなリスクが生じているか否かはこれまで検証されていなかった。