整形外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:7

変形性関節症には運動の継続を

 関節に痛みが生じた場合、ゆっくり休む必要があるように感じるかもしれないが、専門家の意見によると、それは正しい方法ではないようだ。椅子から立ち上がる時や階段を上る時に膝が痛む場合は、変形性膝関節症の可能性が考えられ、もしそうであるなら、適切な運動を続けた方が良いという。  「変形性関節症(OA)による痛みは、活動すると悪化して休息すると改善する。しかし、そうであっても費用対効果の最も高い治療法は運動だ」と語るのは、米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのKathryn Dao氏だ。リウマチ専門医の同氏は、同医療センター発行のリリースの中で、「運動をすることで軟骨が形成されて、筋肉は強化され、関節機能と骨量が改善されることが研究で示されている。また、運動をしているOAの患者はバランスが良くなり、転倒のリスクが低下する」と解説する。

コルヒチンは変形性関節症の進行を抑制する?

 2000年以上前から抗炎症薬として使用されてきたコルヒチンが、膝関節や股関節の人工関節置換術が必要となる状態を遅らせるのに役立つ可能性があるようだ。低用量のコルヒチンを使用していた高齢者では、プラセボを使用していた高齢者と比べて、その後2年間に膝関節や股関節の人工関節置換術を受けた人の割合が低かったとする研究結果を、シント・マールテン・クリニック(オランダ)のMichelle Heijman氏らが、「Annals of Internal Medicine」に5月30日発表した。

大量飲酒は後年の筋肉量減少のリスクを高める

 中年期や老年初期における大量の飲酒は、骨格筋量が減少するサルコペニアやフレイル(虚弱)のリスク増加をもたらす可能性のあることが、新たな研究で示唆された。英イースト・アングリア大学(UEA)ノリッジ医学部教授のAilsa Welch氏らによる研究で、「Calcified Tissue International」に5月25日掲載された。  Welch氏はこの研究の実施に至った背景について、「加齢に伴う骨格筋量の減少は、後年の筋力低下やフレイルの問題につながる。アルコール摂取は、多くの疾患において修正可能な主要リスク因子であることから、われわれは、飲酒と加齢に伴う筋肉の健康との関係について調べようと考えた」と振り返る。

薬剤師による運動介入でフレイル予防

 処方薬を受け取りに薬局を訪れた慢性疾患のある高齢者に対して、薬剤師が運動に関する簡単な情報提供を行うことが、フレイルの予防につながる可能性が報告された。一般社団法人大阪ファルマプラン社会薬学研究所の廣田憲威氏(研究時点の所属は武庫川女子大学薬学部臨床薬学研究室)らによる研究によるもので、詳細は「BMC Geriatrics」に4月7日掲載された。  フレイルはストレスに対する耐性が低下した状態で、介護リスクの高い「要介護予備群」。介護が必要な状態になってからの回復は困難なことが多いが、フレイル段階であれば、運動や食事の習慣を改善することで元の状態に戻ることができるため、早期介入が重要とされる。他方、地域の薬局には近年、調剤業務にとどまらず、地域住民の健康を支える機能が求められるようになってきた。フレイル予防に関しても、薬局での栄養評価などの試みの報告がなされてきている。ただし、運動介入の報告はまだない。今回の廣田氏らの研究は、以上を背景とするもの。

認知度の低い重症筋無力症の啓発にむけて/アルジェニクスジャパン

 6月は「重症筋無力症」の啓発月間とされている。この疾患の社会的認知度を高めるために、アルジェニクスジャパンは、6月7日にメディア向けセミナーを都内で開催した。  セミナーでは、専門医による疾患解説のほか、医療者、患者、患者会、タレントの渡辺 満里奈氏によるトークセッションや同社が疾患啓発に制作したマンガ動画などが紹介された。同社は、全身型重症筋無力症治療薬の抗FcRn抗体フラグメント製剤エフガルチギモド アルファ(商品名:ウィフガート)を製造販売している。 

併存症のある患者での注意点~高齢者糖尿病診療ガイドライン2023/糖尿病学会

 5月11日~13日に城山ホテル鹿児島をメイン会場に第66回 日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。  高齢者の糖尿病患者では、糖尿病とは別に併存症があるケースが多い。では、糖尿病以外の疾病もある高齢者の糖尿病患者の診療はどうあるべきであろう。  本稿では、「シンポジウム10 より良い高齢糖尿病ケアを目指して」より「高齢者糖尿病の合併症と併存症」(杉本 研氏 [川崎医科大学総合老年医学])の口演をお届けする。  2023年5月に『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2023』(以下「ガイドライン」と略す)が上梓され、今回の口演は、このガイドラインの内容を踏まえて構成されている。

蛋白同化ステロイドは使用中止後も長期にわたり健康にダメージを及ぼす

 多くの副作用のあることが明らかであるにもかかわらず、筋肉量の増加やパフォーマンスの向上という誘惑を断ち切れずに、蛋白同化ステロイドを利用しているボディービルダーやアスリートが存在する。しかし、たとえ同薬の使用を中止しても、健康への悪影響は長期間続くことを示す2件の研究結果が、第25回欧州内分泌学会(ECE2023、5月13~16日、トルコ・イスタンブール)で報告された。いずれも、コペンハーゲン大学病院(デンマーク)のYeliz Bulut氏が発表した。同氏は、「ドーピングを行っている人々へのメッセージは明らかであり、それをやめることだ」と語っている。

女性の腰痛にはストレスから来る“冷え”が関与?―日本人対象横断研究

 女性の腰痛に関連のある因子をWeb調査で検討した結果が報告された。敦賀市立看護大学の萬代望氏と関西医療大学の渡邉真弓氏、武田時昌氏、新潟大学の富山智香子氏、福島県立医科大学の二階堂琢也氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Research Notes」に1月30日掲載された。“冷え”を訴え、実際に体温が低い人に腰痛が多く、その背後には精神的ストレスが関係している可能性が想定されるという。  腰痛は、日本人女性が訴える慢性症状として肩こりに次いで2番目に多いと報告されている。整形外科的疾患の症状として腰痛が現れることもあるが、詳しい検査をしても原因が見つからない「非特異的腰痛」が少なくない。非特異的腰痛の予防・改善には、その発症に関連のある因子を特定することが求められる。

アスリートの睡眠習慣は食事に左右される?

 早寝早起きの生活にしたいのなら、食べ物をアレンジしてみると良いかもしれない。新たに報告された研究によると、何を食べるかによって、睡眠パターンが異なる可能性があるという。米ウエストバージニア大学のLauren Rentz氏らが、大学生アスリートを対象に行った小規模な研究の結果であり、米国生理学会(APS2023、4月20~23日、米国・ロングビーチ)で発表された。  Rentz氏によると、「アスリートの成功にとって、試合時に自分のパフォーマンスを最大化して発揮することだけでなく、試合やトレーニングの後の迅速な回復も重要。良い睡眠習慣が日々の身体的・精神的ストレスからの回復を促し、将来のパフォーマンスに好影響を与える」とのことだ。ただし、「常に強いストレスにさらされているアスリートの回復戦略における、睡眠と栄養素摂取の関係はまだほとんど知られていない」と、同氏は研究の背景を語っている。

運動は本当に認知機能に良い?

 運動が認知機能に対して良い影響を与えるとするこれまでの研究報告には、解釈上の注意点があり、それらの点を考慮すると、運動による認知機能保護作用はほとんど見られないとする論文が、「Nature Human Behaviour」に3月27日掲載された。グラナダ大学(スペイン)のLuis Ciria氏らの研究によるもの。  Ciria氏によると、運動の身体的健康に対するメリットのエビデンスは、過去1世紀にもわたって着実に蓄積されてきており、認知機能上のメリットとなる可能性も示されているという。ただし、後者については、研究参加者が少ない、潜在的なバイアスリスクが高いなど、研究の質が低いものが少なくないとのことだ。