整形外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:5

極端な運動でも寿命が縮まることはない

 何世紀にもわたり、運動と健康の間にはU字型の関係があると考えられてきた。つまり、運動量は少な過ぎても多過ぎても健康を損なうという考え方だ。しかし、最大限のパフォーマンスに自分を追い込むアスリートは、長寿に関しては代償を払う必要はないようだ。1マイル(約1.6km)を4分以内で走り切った最初の200人のアスリートは、一般的な人よりも平均5年近く長生きする可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。アルバータ大学(カナダ)のMark Haykowsky氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Sports Medicine」に5月10日掲載された。

自転車こぎに変形性膝関節症の予防効果?

 生涯を通じて定期的に自転車に乗っている人は、膝に頻回に痛みが生じたり、放射線検査で確認された変形性膝関節症(radiographic osteoarthritis;ROA)や症状のあるROA(symptomatic radiographic osteoarthritis;SOA)に罹患したりする可能性の低いことが、新たな研究で明らかになった。米ベイラー医科大学アレルギー・免疫・リウマチ病学分野のGrace Lo氏らによるこの研究の詳細は、「Medicine & Science in Sports & Exercise」に4月11日掲載された。  医師はしばしば、変形性膝関節症を予防するために定期的に運動することを推奨するが、運動の種類によって膝にもたらされる効果は異なる。今回の研究では、米国立衛生研究所(NIH)が後援する、変形性膝関節症に関する全国規模の調査研究であるOsteoarthritis Initiative(OAI)への参加者2,607人(平均年齢64.3歳、男性44.2%、平均BMI 28.5)のデータを用いて、自転車での活動歴と変形性膝関節症の症状や構造上のアウトカムとの関連が検討された。対象者は質問票を通じて、12〜18歳、19〜34歳、35〜49歳、50歳以上の年齢層で分けた4つの時期に最もよく行った上位3つの自転車での活動(屋外、自宅でのサイクリングマシン、スピニングバイクなど)について、その活動を行った年数、年間の活動月数、および月当たりの回数を報告した。

身体活動の指標、時間ではなく歩数でもOK?

 米国における身体活動のガイドラインでは、健康のために中~高強度の身体活動を週150分以上行うことを推奨しているが、歩数に基づく推奨はエビデンスが十分ではないため発表されていない。今回、米国・Brigham and Women's Hospital/Harvard Medical Schoolの浜谷 陸太氏らによる米国の62歳以上の女性を対象としたコホート研究において、中~高強度身体活動時間および歩数と全死亡率および心血管疾患(CVD)の関連が質的に同様であることが示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン晩2024年5月20日号に掲載。

血液検査で変形性膝関節症を早期発見か

 変形性膝関節症(knee osteoarthritis;以下、膝OA)がX線で確認できる状態になる少なくとも8年前に、血液検査によって医師がその兆候を検出できる可能性のあることが、米デューク大学医学部病理学・整形外科学教授のVirginia Byers Kraus氏らの研究で示された。膝OAと診断された女性100人と膝OAのない女性100人の血液を分析した結果、両者の判別に有用なバイオマーカーが特定されたという。この研究の詳細は、「Science Advances」4月26日号に掲載された。  OAの成人患者数は米国だけで約3500万人に上るが、OAを完治させる治療法は、現時点では存在しない。そのため、新しい治療法の成功は、いかに早期の段階でこの疾患を発見し、進行を遅らせることができるかにかかっている。Kraus氏は、血液検査で膝OAのリスクの高いことが分かれば、減量、運動、健康的な食事といった生活習慣の是正、あるいはステロイド注射を受けるといった対策も可能になると話す。

ゴルフや水泳がALSリスクを上昇させる?

 ゴルフ、ガーデニングや庭仕事、木工、狩猟などの余暇活動は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症リスク上昇と関連している可能性があるという研究結果が、「Journal of the Neurological Sciences」2月15日号に掲載された。  米ミシガン大学アナーバー校のStephen A. Goutman氏らは、ALS患者400人と健康対照者287人を対象に、趣味、運動、余暇活動に関連するリスクを調査した。  解析の結果、ALS診断の5年前にゴルフ(オッズ比3.48)、レクリエーションダンス(同2.00)、ガーデニングや庭仕事(同1.71)をしていたことが、ALSに関連するリスクであることが分かった。リスクと関連したその他の曝露には、個人または家族での木工活動参加(同1.76、2.21)、個人での狩猟や射撃への参加(同1.89)があった。ALSの生存および発症に関連する曝露はなかった。発症年齢の早さは、診断の5年前の水泳(3.86歳)および重量挙げ(3.83歳)と関連していた。

2016年から2020年にかけてスクーターによる外傷の発生率が上昇

 スクーターによる外傷の発生率は2016年から2020年にかけて上昇し、スクーターによる外傷で小手術を受ける患者が増加したとの研究結果が、「Journal of the American College of Surgeons」に1月9日掲載された。  米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイヴィッド・ゲフィン医科大学院のNam Yong Cho氏らは、全米入院患者サンプル(NIS)から2016~2020年のデータを用いて、スクーターまたは自転車による外傷で入院した65歳未満の患者を対象に後ろ向きコホート研究を行い、スクーターによる入院の時間的傾向および転帰を自転車と比較した。

変形性肩関節症の人工肩関節置換、リバース型vs.解剖学的/BMJ

 変形性肩関節症を有する60歳以上の患者において、リバース型人工肩関節全置換術(RTSR)は解剖学的人工肩関節全置換術(TSR)の許容可能な代替術であることが、英国・オックスフォード大学のEpaminondas Markos Valsamis氏らによる住民ベースのコホート研究で示された。経時的な再置換術のリスクプロファイルに有意差は認められたが(最初の3年間はRTSRが良好)、一方で長期的な再置換術、重篤な有害事象、再手術、入院期間の長期化、生涯医療コストについて、統計学的な有意差および臨床的に重要な差は認められなかった。RTSRの施術は、直近20年間で世界的に急増しているが、高い質的エビデンスのないまま、本来の病理学的対象患者にとどまらず、手術適応の症例に幅広く施術されている現状がある。そうした治療の不確実性は英国の研究機関において重要な優先事項と認識されており、完了までに数年がかかる国際的な試験に対して資金提供がされているという。BMJ誌2024年4月30日号掲載の報告。

降圧薬を開始・追加した高齢者は〇〇に注意?

 高齢者は転倒リスクの1つである起立性低血圧が生じやすい。そこで、米国・Rutgers UniversityのChintan V. Dave氏らの研究チームは、降圧薬が高齢者の骨折リスクへ及ぼす影響を検討した。その結果、降圧薬の開始・追加は骨折や転倒、失神のリスクを上昇させた。本研究結果は、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年4月22日号で報告された。  研究チームは、2006~19年に長期介護施設へ入所した米国の退役軍人2万9,648人を対象に、target trial emulationの手法を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。50個以上の共変量について1:4の割合で傾向スコアマッチングを行い、降圧薬の開始・追加後30日以内の骨折の発生リスクを評価した。認知症の有無、収縮期血圧(140mmHg以上/未満)、拡張期血圧(80mmHg以上/未満)、降圧薬の使用歴、年齢(80歳以上/未満)別のサブグループ解析も実施した。さらに、入院または救急受診を要する重度の転倒、失神のリスクも評価した。なお、降圧薬の開始・追加は、過去4週間以内に降圧薬を使用していない患者の降圧薬の使用、または過去4週間に使用している降圧薬とは別のクラスの降圧薬の追加と定義した。

医師の共感スキルが高いほど患者の腰痛が改善

 医師の共感と慢性腰痛患者の長期的アウトカムとの関連を調査したコホート研究の結果、患者評価による医師の共感度が高いほど12ヵ月にわたる患者の痛み、機能、健康関連QOL(HRQOL)が良好であったことを、米国・University of North Texas Health Science CenterのJohn C. Licciardone氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年4月11日号掲載の報告。  対象は、2016年4月1日~2023年7月25日にPain Registry for Epidemiological, Clinical, and Interventional Studies and Innovation(PRECISION)に登録された21~79歳の慢性腰痛(3ヵ月以上継続)患者で、12ヵ月間追跡された。医師の共感度は、CARE Measure(患者の視点で医師の共感度を評価するツール)を用いて評価された。10項目を1(poor)~5(excellent)点で評価し、合計スコアが30点以上の場合は「非常に共感的」、29点以下の場合は「わずかに共感的」に分類された。主要アウトカムは、患者報告による疼痛、機能、HRQOLであった。データは登録時および3ヵ月ごとの診察で収集し、時間的傾向を測定してベースラインおよび長期的な共変量を調整するための多変量モデルを含む一般化推定方程式を用いて解析された。

緑豊かな住環境は骨粗鬆症リスクを下げる

 樹木など植物が茂った場所の近くに住んでいると、骨が丈夫になる可能性のあることが、平均12年間の追跡データに基づく新たな研究で示唆された。中南大学(中国)のZhengxiao Ouyang氏らによるこの研究では、衛星画像で緑地が確認された場所の近くに住んでいる人では、それ以外の場所に住んでいる人に比べて骨密度が高い傾向があることが示されたのだ。研究グループは、「住宅地の植生が骨密度の上昇や骨粗鬆症リスクの低下に関連していることを示す初のエビデンスが得られた」と述べている。詳細は、「Annals of the Rheumatic Diseases」に3月5日掲載された。  この研究には、UKバイオバンクのデータベースから収集された39万1,298人の英国人(平均年齢56.2歳、女性53.0%)の生活習慣と健康状態に関する追跡データが用いられた。UKバイオバンクには、各参加者の骨密度と骨粗鬆症の遺伝リスクに関するデータのほか、食事や喫煙習慣、収入、運動量などのさまざまなデータが記録されている。