精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:10

境界性パーソナリティ障害を合併した双極症患者における認知機能低下

 双極症は、重度の精神疾患であり、境界性パーソナリティ障害(BPD)を合併することが多く、これにより症状がより複雑化する。中国・河北医科大学のChao-Min Wang氏らは、双極症患者のBPD合併の有無による認知機能障害への影響を調査した。World Journal of Psychiatry誌2024年8月19日号の報告。  対象は、BPD合併双極症患者(BPD+BD群)80例およびBPDを合併していない双極症患者(BD群)80例、健康対照群80例。各群の認知機能の評価には、神経心理検査アーバンズ(RBANS)中国語版、ストループ検査(SCWT)、ウェクスラー式知能検査改訂版(WAIS-RC)を用いた。

医師はなぜ自ら死ぬのか(解説:岡村毅氏)

医師の自殺率は高いとされてきた。本論文は1960年から2024年に出版されたすべての論文を対象にしたシステマティックレビューとメタ解析であり、現時点での包括的な情報と言っていいだろう。ちなみに英語とドイツ語以外は、翻訳ソフトであるDeepLを用いて評価しているのが現代的だ。男性医師では時代と共に自殺率は低下してきていることが示されたが、女性医師においてはむしろ増加している。いくつかの視点で論じてみよう。自殺の関連要因はさまざまであるが、この論文1)では以下のように分けている。第一に精神疾患(うつ病や統合失調症)、第二に身体疾患、第三に当たり前だが自殺関連行動(過去の自殺企図歴など)、第四に人口社会学的要因(借金、学歴、信仰、仕事のストレスなど)、そしてその他として犯罪歴、幼少期の逆境、火器が身近にあるなどを挙げている。医師といっても多様だとは思うが、身体疾患、貧困、借金、火器などが一般人口より多いとは思えないので、やはり仕事のストレスやうつ病が関与するのかもしれない。

医師の燃え尽き症候群と関連する覚醒度~日本全国調査

 日本の医師の約40%は年間960時間以上の残業を報告しており、10%は1,860時間を超えている。2024年、医師の健康を守るため、年間の残業時間に上限が設定された。順天堂大学の和田 裕雄氏らは、長時間労働医師の働き方改革に関する全国横断調査において、自己報告による睡眠時間と、メンタルヘルスおよび客観的覚醒度との関連を調査した。Journal of Sleep Research誌オンライン版2024年8月12日号の報告。  調査に協力した医師は、毎日の睡眠時間、燃え尽き症候群(Abbreviated Maslach Burnout Inventory:マスラック・バーンアウト尺度簡易版)、うつ病(CES-D:うつ病自己評価尺度)、交通事故に関して自己報告を行った。覚醒度は、精神運動覚醒度検査短縮版を用いて評価した。

嚥下機能は睡眠の質と関連嚥下機能は睡眠の質と関連

 60歳以上の日本人を対象とした横断研究の結果、嚥下機能の低下が睡眠の質の低下と関連していることが明らかとなった。この関連は、男女ともに認められたという。広島大学大学院医系科学研究科の濵陽子氏らによる研究であり、「Heliyon」に5月31日掲載された。  睡眠維持困難(中途覚醒)は、慢性の痛み、消化器疾患、呼吸器疾患など、さまざまな身体的状態と関連する。例えば、睡眠中は呼吸と嚥下の連携が損なわれることがあり、覚醒時と比べて嚥下後の咳が発生しやすいが、このことも睡眠維持困難の一因とされる。加齢に伴い嚥下機能が低下すると、睡眠中の嚥下コントロールが困難となる可能性があるが、嚥下機能の低下が睡眠の質に及ぼす影響は明らかになっていない。

あいまいな診断を巡るモノローグ(解説:岡村毅氏)

アルツハイマー病を明確に診断するための血液バイオマーカーに関する重要なポジションペーパーである。その意義を記す前に、精神医学の診断についてちょっとお話をしよう。その昔、精神医学の診断はきわめてあいまいだった。うつ病の人が妄想を持つことはよくあることは知っているだろうか? そして妄想性障害や統合失調症の人がうつ状態になることもある。すると、「どちらを本体とみるか」というのは人間観や疾病観による。というわけで、その昔、精神科医の診断は学派によって異なることもあった。

日本人高齢入院患者のせん妄軽減に対するスボレキサントの有用性~ランダム化試験

 高齢入院患者において頻繁にみられるせん妄は、早急なマネジメントを必要とするだけでなく、認知症、施設入所、死亡率など長期的なリスクに影響を及ぼす可能性がある。せん妄は、睡眠障害と関連しているといわれており、特定の睡眠導入薬によりせん妄が軽減する可能性が示唆されている。順天堂大学の八田 耕太郎氏らは、せん妄リスクの高い高齢入院患者を対象に、せん妄軽減に対するオレキシン受容体拮抗薬スボレキサントの有用性を評価した。JAMA Network Open誌2024年8月1日号の報告。

AIにより自閉症の早期発見が可能?

 人工知能(AI)モデルにより、自閉症スペクトラム障害(ASD)を発症する可能性が高い小児を見つけ出せる可能性のあることが、カロリンスカ研究所(スウェーデン)女性・小児保健部門のKristiina Tammimies氏らによる研究で明らかになった。Tammimies氏らによると、このAIモデルは、広範な評価や臨床試験をせずに2歳以下の小児から簡単に得られる医療データを用いてASDに特有のパターンを探し出すもの。実際に、1万2,000人弱の小児のデータを用いてテストしたところ、ASD児の約80%を特定できたという。この研究結果は、「JAMA Network Open」に8月19日掲載された。

翌日の記憶に備えて睡眠中にニューロンが「リセット」

 新しい記憶を作るためには夜間の良質な睡眠が不可欠であることが、米コーネル大学神経生物学および行動科学分野のAzahara Oliva氏らによる新たな研究で示された。日中の記憶を保存したニューロン(神経細胞)は睡眠中にリセットされるのだという。研究の詳細は、「Science」に8月15日掲載された。Oliva氏は、「このメカニズムによって脳は同じリソース、同じニューロンを翌日の新しい学習のために再利用することができる」と言う。  何かを学んだり、新しい経験をしたりすると、人間の記憶を作り出す機能に不可欠な脳領域である海馬のニューロンが活性化され、そうした出来事が記憶として保存される。ニューロンは睡眠中も同じ活動パターンを繰り返し、大脳皮質と呼ばれるより大きな脳領域へとその記憶を転送する。では、海馬の全てのニューロンを使い切ることなく新しい出来事を学び続けられるのは、どうしてなのか。Oliva氏らはその疑問を解くために、マウスを用いた実験を行った。

SGLT2阻害薬による長期治療、2型DMの認知症予防に有効/BMJ

 年齢40~69歳の2型糖尿病患者の治療において、DPP-4阻害薬と比較してSGLT-2阻害薬は認知症の予防効果が高く、治療期間が長いほど大きな有益性をもたらす可能性が、韓国・Seoul National University Bundang HospitalのAnna Shin氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年8月28日号に掲載された。  研究グループは、中高年の2型糖尿病患者における認知症リスクと、SGLT-2阻害薬およびDPP-4阻害薬との関連を比較する目的で住民ベースのコホート研究を行った(韓国保健産業振興院[KHIDI]の助成を受けた)。

ADHDとASDを鑑別する多遺伝子リスクスコア、統合失調症との関連は?

 統合失調症は、臨床的にも遺伝学的にも特殊な疾患であり、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)とも遺伝的因子が類似している。最近、ADHDとASDを鑑別するゲノムワイド関連研究(GWAS)が実施されている。岐阜大学の蔵満 彩結実氏らは、ASDとADHDを鑑別する多遺伝子リスクスコア(PRS)が、統合失調症患者の認知障害や皮質構造の変化と関連しているかを調査した。European Child & Adolescent Psychiatry誌オンライン版2024年8月7日号の報告。  GWASデータ(ASD:9,315例、ADHD:1万1,964例)に基づき、統合失調症患者168例におけるASDとADHDを鑑別するPRS(ADHD高リスクでASD低リスク)を算出した。言語理解(VC)、知覚統合(PO)、ワーキングメモリー(WM)、処理速度(PS)などの認知機能は、WAIS-IIIを用いて評価した(145例)。34の両側脳領域の表面積および皮質厚は、FreeSurferを用いて調べた(126例)。PRSと統合失調症患者の認知機能および皮質構造との関連性を調査した。