呼吸器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:208

COVID-19治癒後、8割に心臓MRIで異常所見

 最近COVID-19が治癒した100例におけるコホート研究で、心臓MRI(CMR)により78%に心臓病併発、60%に進行中の心筋炎症が認められたことを、ドイツ・フランクフルト大学病院のValentina O. Puntmann氏らが報告した。また、これらは既往歴、COVID-19の重症度や全体的な経過、診断からの期間とは関連がなかったことという。JAMA Cardiology誌オンライン版2020年7月27日号に掲載。  COVID-19の心血管系への影響は症例報告では示唆されているが、全体的な影響は不明だった。今回、著者らはCOVID-19が最近治癒した患者の心筋障害の存在を調査するために、2020年4~6月にフランクフルト大学病院COVID-19レジストリにおいて、COVID-19が最近治癒した100例を対象とした前向き観察コホート研究を実施した。COVID-19の治癒については、上気道スワブのRT-PCR検査でSARS-CoV-2消失とした。人口統計学的特徴、心臓の血中マーカー、CMRについて、年齢と性別を一致させた健康ボランティアの対照群(n=50)と危険因子を一致させた患者の対照群(n=57)と比較した。

ニボルマブ+ベバシズマブ+化学療法、非小細胞肺がん1次治療でPFS延長(ONO-4538-52/TASUKI-52)/小野

 小野薬品工業は、2020年8月3日、抗PD-1抗体ニボルマブ(商品名:オプジーボ)について、化学療法未治療の根治照射不能なIIIBIV期又は再発の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、抗VEGF抗体であるベバシズマブと化学療法の併用療法群をプラセボ、ベバシズマブと化学療法の併用療法群と比較評価した第III相臨床試験(ONO-4538-52/TASUKI-52)のトップライン結果を発表。本試験において、予め計画していた中間解析で、オプジーボ併用療法群が、対照併用療法群と比較して、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)で統計学的に有意な延長を示した。

侮れない中国の科学力(解説:後藤信哉氏)-1271

筆者は免疫学者でもウイルス学者でもない。ランダム化比較試験による有効性、安全性検証をリードするclinical trialistであるとともに一人の臨床医である。免疫の仕組みに詳しいわけではない。それでもウイルス表面に存在する細胞への侵入を担う蛋白を標的とした抗体ができれば感染予防ができるのではないかとの仮説は持てる。本研究は新型コロナウイルスの表面に発現しているスパイク蛋白をアデノウイルスの一種であるAd5に発現させたワクチンを用いた臨床試験の結果である。エビデンスレベルの高い二重盲検のランダム化比較試験である。対照群をプラセボとしている。タンパク質を注射すれば副反応として疼痛などが起こるのは一種当然である。プラセボとの比較は安全性比較にはハードルが高いと思う。

コロナウイルスワクチンへの期待(解説:後藤信哉氏)-1270

新興感染症と人類との戦いにおいてワクチンは強力な武器であった。コロナウイルスは感冒のウイルスであるが、現時点までに感冒への有効なワクチンが開発されていない。COVID-19へのワクチン開発には期待が大きい。コロナウイルスの細胞への感染にはウイルスのスパイク様蛋白が寄与する。タンパク質に対する抗体をワクチンとするのであれば、北里柴三郎の破傷風抗毒素血清療法以来実績がある。本研究はチンパンジーのSARS-CoV-2ウイルスのスパイク蛋白を発現したチンパンジーのアデノウイルスベクターを用いたワクチン(ChAdOx1 nCoV-19 vaccine)と髄膜炎菌のワクチンを比較したphase 1/2試験である。ウイルスの表面抗原を標的としたワクチン開発は一般的に最初に思い付く方法だと思う。液性、細胞性免疫により細胞侵入前にウイルスの細胞侵入を防げるとは想定されるが、細胞内に入ってしまったウイルスに対する効果には疑問が残る。

COVID-19患者の約7割は転帰良好/国立国際医療研究センター

 8月7日、国立国際医療研究センターはメディア向けに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をテーマとし、「COVID-19レジストリ研究の中間報告」のセミナーを開催した。  セミナーでは、2020年1月から現在まで収集された約4,800例のCOVID-19患者のデータから患者の入院時症状の傾向、予後、重症化傾向などの中間解析結果が説明された。  はじめに同センター理事長の國土 典宏氏が、東京・新宿区におけるセンターの意義、患者数の推移・傾向、患者対応などを説明した。

米国Moderna社の新型コロナワクチン、サルでの有効性確認/NEJM

 開発中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「mRNA-1273」は、非ヒト霊長類において、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の中和活性と上気道・下気道の速やかな保護を誘導し、肺組織の病理学的変化は認められなかった。米国・ワクチン研究センターのKizzmekia S. Corbett氏らが、アカゲザルにおけるmRNA-1273の評価結果を報告した。mRNA-1273は、SARS-CoV-2の膜融合前安定化スパイクタンパク質をコードするmRNAワクチンで、第I相試験を含むいくつかの臨床試験において安全性および免疫原性が確認されているが、上気道・下気道でのSARS-CoV-2増殖に対するmRNA-1273の有効性を、ヒトと自然免疫やB細胞・T細胞レパートリーが類似している非ヒト霊長類で評価することが重要とされていた。NEJM誌オンライン版2020年7月28日号掲載の報告。

PCR拡充へ緊急提言、医師判断で迅速に実施可能な体制に/日本医師会

 日本医師会は8月5日付で、医師が必要と認めた場合に確実にPCR検査や抗原検査を実施できるよう、国に対しその実現について強く求める7項目の提言を公表した。背景として、複数の都道府県において過去最高の1日当たり新規感染者数を更新する中、夏季休暇などで移動の増加が予想され、全国的にさらなる感染拡大が懸念されること、行政検査の委託契約プロセスの煩雑さから、現行の枠組みを維持しながら検査能力を向上させるには限界があることを指摘している。

レンバチニブ、切除不能胸腺がんに国内申請/エーザイ

 エーザイとMSDは、マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ(商品名:レンビマ)について、日本において切除不能な胸腺がんに係る適応追加を申請したと発表。同剤は本年6月、当該適応で希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けている。  本申請は、国内で実施された医師主導による非盲検、単群、多施設共同臨床第II相試験(NCCH1508試験)の結果に基づくもの。この試験では、1レジメン以上のプラチナ製剤による前治療歴のある胸腺がん患者42例が登録され、レンバチニブ単剤の有効性・安全性が評価された。

新型コロナ感染症、ARDSの新たな機序の発見?(解説:山口佳寿博氏)-1265

本論文は、新型コロナ(SARS-CoV-2)に罹患し肺炎、ARDSを基礎とした重篤な呼吸不全のために死亡した7症例の肺組織を用いて病理・形態像(光顕、走査電顕、微小CT画像、免疫組織化学)ならびに血管増生に関与する323個の遺伝子の発現動態を解析したものである。比較として、A型インフルエンザ(AH1N1)で死亡した症例の肺(7例)と正常肺(10例、肺移植に使用されなかった肺)を用いて上記と同様の解析が施行された。SARS-CoV-2、AH1N1肺の基本病理像はDADであったが、肺重量はAH1N1で重くSARS-CoV-2肺の1.4倍であった。すなわち、AH1N1肺では血液成分の漏出に起因する肺水腫がより著明であることが示唆された。

FDA、オシメルチニブのEGFR陽性肺がん術後補助療法をブレークスルーセラピー指定/アストラゼネカ

 2020年7月31日、米国食品医薬品局(FDA)は、第3世代EFGR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)による完全切除後の早期(Stage IB~IIIA)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)への術後補助療法をブレークスルーセラピーに指定した。  この指定は、米国臨床腫瘍学会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表された第III相ADAURA試験のデータに基づくもの。この試験では、オシメルチニブによる術後補助療法は、統計的に有意で臨床的に意味のある無病生存率(DFS)の改善を示した(HR:0.21、95% CI:0.16~0.28; p