院外心肺停止・治療抵抗性心室細動へECMOを適応することで救命率・社会復帰率が顕著に改善される(解説:今井靖氏)-1339
今回はLancet誌に報告された興味深い論文を紹介するとともに、この領域の現状と課題について論じたい。院外心肺停止・心室細動の患者において、半数以上の患者は初期ACLS(advanced cardiac life support)に不応性である。今回米国で、院外心肺停止・治療抵抗性心室細動に対してextracorporeal membrane oxygenation(ECMO)を用いた心肺蘇生と標準的ACLSとをランダム化比較する研究が実施された。ミネソタメディカルセンターにおいて、第II相単施設オープン試験として18~75歳の心肺停止・心室細動を対象としている。3回のAEDによる電気的除細動が無効、Lund University Cardiac Arrest System(LUCAS)という機械的心肺蘇生装置を使用、30分以内の移送時間という状況において、患者を、スクラッチカードを用いてランダムに上述の2群に割り付けている。主要エンドポイントは生存退院、副次的エンドポイントは安全、生存、退院後3および6ヵ月目での機能的評価とした。すべての解析はITT解析となっている。2019年8月8日~2020年6月14日の間、36例(平均59歳[36~73歳]、83%男性)の患者が登録された。6例を除外し、30例を半数ずつACLS群とECMO群とに割り付けた(1例は途中で脱落)。結果であるが、生存退院はACLS群では15例中1例(7%、95%信頼区間:1.6~30.2)、ECMO群では14例中6例(43%、95%信頼区間:21.3~67.7)であった。本研究は米国国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute)によって、予定されていた初回中間解析で明らかな有意差がついたと判断され中止となった。30例の登録の段階ですでにECMO群の優位性が示されたためであるが、6ヵ月後についてもECMO群で優れていた。