循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:59

「ChatGPT」による心血管予防アドバイス、どんな結果に?/JAMA

 情報を検索する場合、インターネットを活用したり医療者から聞いたりするが、それらの役割がAIに置き換わったら一体どんなアドバイスをくれるのだろうか。そんな想像が人工知能 (AI) 言語モデルを用いたチャットサービス『ChatGPT』によって現実味を帯びてきた。本サービスは2022年11月にリリースされるやいなや、世界1億人以上が登録・利用している。複雑な質問に応答できることから、さまざまな専門分野で旋風を巻き起こし、医学界でも“このサービスが論文作成に悪用されるのではないか”と懸念が広がっている。

重症の肺血栓塞栓症、早期段階での手術により生存率向上の可能性

 米国心臓協会(AHA)はこのほど、より多くの高リスク肺血栓塞栓症(PE)患者に対する手術の考慮を勧めるとの声明を発表した。AHAの心臓血管外科・麻酔科評議会、動脈硬化症・血栓症・血管生物学評議会、生活習慣・心血管代謝健康評議会、末梢血管疾患評議会を代表する内容として作成されたこの声明文は、「Circulation」に1月23日掲載され、米国胸部外科学会(STS 2023、1月21~23日、米サンディエゴ)でも同時発表された。  PEは、血栓が血液の流れに乗って肺に運ばれ、肺の動脈が詰まって起こる疾患であり、米国では心血管疾患による死因としては3番目に多い。PEを発症した患者のうち、重症化する患者の割合は約45%と推定されている。重症PE患者では、血栓によって肺の血圧が上昇し(肺高血圧)、右室への負荷がかかり、死亡リスクが高まる。現行の治療ガイドラインに従った治療が行われた場合でも、死亡リスクは一部の患者群で約40%に上る。

アルドステロン合成酵素に対する選択性を100倍にしたbaxdrostatによる第II相試験の結果は、治療抵抗性高血圧症に有効である可能性が示された―(解説:石上友章氏)

高血圧症は、本邦で4,000万人が罹患するといわれている、脳心血管病の最大の危険因子である。降圧薬は、市場規模の大きさから多くの製薬企業にとって、開発・販売に企業の持っているリソースの多くを必要とするカテゴリーの製品であった。医療サイドにとっては、その患者数の多さと健康寿命に与える影響の重要さから、確実で安全な医療の提供の実現が求められている。公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団の調査によると、あらゆる薬剤の中で、降圧薬の貢献度・満足度がきわめて高いことが示されている。降圧治療は、疾病の克服において、これまでに人類が手にした治療薬として、きわめて高い水準の完成度に達したといえる。

降圧薬の中止でフレイル改善?

 フレイル外来に通院中の患者に対する降圧薬の処方中止が、身体機能にプラスの影響をもたらす可能性を示唆するデータが報告された。国立長寿医療研究センター薬剤部の長谷川章氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of International Medical Research」に10月31日掲載された。  フレイルは、身体的・精神的なストレスに対する耐性が低下した状態のこと。高齢者の要介護リスクの高い状態として位置付けられているが、早期介入によって非フレイルの状態に戻ることも可能。その介入方法としては、筋力トレーニングやタンパク質を中心とした十分な栄養摂取などが挙げられる。

アスピリンでいいの?(解説:後藤信哉氏)

骨折症例は肺塞栓症などの致死的静脈血栓リスクが高いと認識されている。欧米諸国では静脈血栓予防の標準治療は低分子ヘパリンである。皮下注射といえども注射と経口の差異は大きい。血栓イベント予防が目的であれば経口薬が好ましい。静脈血栓予防におけるアスピリンの有効性については長年の議論がある。無効とも言いにくいが、抗凝固薬よりも有効性が乏しいと一般に理解されていると思う。しかし、本論文のintroductionに記載されているようにアスピリンと低分子ヘパリンとのしっかりしたランダム化比較試験が施行されてきてはいない。

経皮的脳血栓回収術後の血圧管理について1つの指標が示された(解説:高梨成彦氏)

経皮的脳血栓回収術はデバイスの改良に伴って8割程度の再開通率が見込まれるようになり、再開通後に出血性合併症に留意して管理する機会が増えた。急性期には出血を惹起する薬剤を併用する機会が多く、これには血栓回収術に先立って行われるアルテプラーゼ静注療法、手術中のヘパリン静注、術後の抗凝固薬・抗血小板薬の内服などがある。 出血性合併症を避けるためには降圧を行うべきであるが、どの程度の血圧が適切であるかについてはわかっていない。そのため脳卒中ガイドライン2021では、脳血栓回収術後には速やかな降圧を推奨しており、また過度な降圧を避けるように勧められているが具体的な数値は挙げられていない。

有害な妊娠アウトカム、母親の虚血性心疾患リスクが長期的に上昇/BMJ

 5つの有害な妊娠アウトカム(早産、在胎不当過小、妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧腎症以外の妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病)のいずれかを経験した女性は、出産後の虚血性心疾患のリスクが高く、このリスク上昇は最長で46年持続していることが、米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のCasey Crump氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年2月1日号で報告された。  研究グループは、5つの有害な妊娠アウトカムと母親の虚血性心疾患の長期的なリスクとの関連の評価を目的に、スウェーデンにおいて全国的なコホート研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。

トラセミド、お前もか?―心不全における高用量利尿薬の功罪(解説:原田和昌氏)

心不全は心血管系の器質的および機能的不全であり、多くは体液量の異常と神経体液性因子の異常を伴う。過剰な体液量状態すなわちうっ血をとるため利尿薬を用いるが、急性心不全に利尿薬を大量投与するとWRFを起こし予後を悪化する可能性がある。また、長期の高用量利尿薬投与はRAS系の亢進を起こし心不全の予後を不良にする。これまで生命予後をエンドポイントとした利尿薬の大規模臨床試験は基本的にネガティブ・スタディであった。聞くところによると、利尿薬は心不全の予後改善治療ではないということで、2016年のESC心不全ガイドラインの最終稿の直前まで割愛されていたが、最後になって加えられたとか、Voors先生が担当したCKDの項が大幅に減らされたとぼやいておられたことは記憶に新しい。近年、多少の利尿作用を有し心不全の予後を改善する治療薬が使用可能になり、利尿薬に対する理解が深まってきた。

短時間のPET-CT検査でホルモン分泌異常による高血圧を診断

 10分程度の非侵襲的なPET-CT検査により、高血圧の原因となっている腫瘍を、従来のカテーテルを用いた侵襲的な検査と同程度の精度で検出できることが、新たな研究で示された。研究グループは、この検査により見つけた腫瘍を外科的に切除することで、このタイプの高血圧を治療できるようになる可能性があるとしている。英ロンドン大学クイーン・メアリー校教授のMorris Brown氏らが実施したこの研究結果は、「Nature Medicine」に1月16日掲載された。  高血圧の大部分はその原因が不明であり、患者は生涯にわたって薬物療法が必要である。ただし、同大学の研究グループが実施した過去の研究では、高血圧患者の5~10%は、副腎でのアルドステロンの過剰分泌(原発性アルドステロン症)を原因とすることが明らかにされている。アルドステロンは体内のナトリウムや水分の量を調節する働きを持つホルモンだが、過剰に分泌されると体内に塩分や水分が蓄積して高血圧を引き起こす。このタイプの高血圧患者では一般的な降圧薬が奏効せず、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇する。原発性アルドステロン症の原因は、副腎の良性腫瘍(通常は片側性)か、両側の副腎でのアルドステロン分泌細胞の過形成である。前者の場合には、副腎摘出による治療が可能だが、標準的な術前検査が侵襲的であるため、実際に手術を受ける患者は1%足らずにとどまっているのが現状である。

心血管疾患リスク予測式は、がん生存者に有用か/Lancet

 がん患者は心血管疾患のリスクが高いという。ニュージーランド・オークランド大学のEssa Tawfiq氏らは、がん生存者を対象に、同国で開発された心血管疾患リスク予測式の性能の評価を行った。その結果、この予測式は、リスクの予測が臨床的に適切と考えられるがん生存者において、5年心血管疾患リスクを高い精度で予測した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年1月23日号で報告された。  研究グループは、がん生存者における心血管疾患リスクの予測式の性能を、プライマリケアで評価する目的で、妥当性の検証研究を行った(オークランド医学研究財団などの助成を受けた)。