循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:72

治療抵抗性高血圧への腎デナベーション、長期アウトカムは/Lancet

 治療抵抗性高血圧患者に対する腎デナベーションシステム「Symplicity」(米国Medtronic製)の安全性と有効性を検討した偽処置(シャム)対照大規模臨床試験「SYMPLICITY HTN-3試験」の最終報告として、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らが長期(36ヵ月フォローアップ)アウトカムの結果を発表した。処置後6ヵ月時点の評価では、降圧を安全に達成できることは確認された一方で有意な降圧の有効性は見いだせなかったが、36ヵ月時点の評価において、安全性に関するエビデンスが増強されるとともに、12~36ヵ月において、施術を受けた患者の降圧効果がシャム対照患者と比べて大きく、また血圧コントロールが良好であったことが示されたという。結果を踏まえて著者は、「腎デナベーションの臨床的効果が時間とともに衰えることはなく、増す可能性があることが示唆された」と述べている。Lancet誌オンライン版2022年9月16日号掲載の報告。

男女別、心血管イベントのリスク因子は/Lancet

 脂質マーカーとうつ病は、女性より男性で心血管リスクとの関連が強く、食事は男性よりも女性で心血管リスクとの関連が強いことが、カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らによる大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological:PURE研究」の解析の結果、示された。ただし、他のリスク因子と心血管リスクとの関連は女性と男性で類似していたことから、著者は、「男性と女性で同様の心血管疾患予防戦略をとることが重要である」とまとめている。Lancet誌2022年9月10日号掲載の報告。

人工甘味料の種類別、心血管疾患リスクとの関連は/BMJ

 人工甘味料の摂取量の増加に伴って心血管疾患のリスクが上昇し、なかでもアスパルテームは脳血管疾患、アセスルファムカリウムとスクラロースは冠動脈性心疾患のリスクと関連することが、フランス・ソルボンヌ パリ北大学のCharlotte Debras氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年9月7日号に掲載された。  研究グループは、あらゆる食事(飲料、卓上甘味料、乳製品など)由来の人工甘味料(全体、種類別[アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース])と、心血管疾患(全体、脳血管疾患、冠動脈性心疾患)の関連の評価を目的に、住民ベースの前向きコホート研究を行った。

SGLT2阻害薬とGLP1受容体作動薬の処方率、人種・民族間で格差/JAMA

 2019~20年の米国における2型糖尿病患者へのSGLT2阻害薬またはGLP-1受容体作動薬の処方率は低く、白人や非ヒスパニック/ラテン系と比較して、とくに他の人種やヒスパニック/ラテン系の患者で処方のオッズ比が有意に低いことを、米国・カリフォルニア大学のJulio A. Lamprea-Montealegre氏らが、米国退役軍人保健局(VHA)の大規模コホートデータ「Corporate Data Warehouse:CDW」を用いた横断研究の結果、報告した。2型糖尿病に対する新しい治療薬は、心血管疾患や慢性腎臓病の進行リスクを低減することができるが、これらの薬剤が人種・民族にかかわらず公平に処方されているかどうかは、十分な評価がなされていなかった。著者は、「これらの処方率の差の背景にある要因や、臨床転帰の差との関連性を明らかにするために、さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2022年9月6日号掲載の報告。

重症心不全への完全磁気浮上型遠心ポンプ、5年生存率は良好/JAMA

 重症心不全患者に対する左室補助人工心臓(LVAD)療法において、完全磁気浮上型遠心ポンプLVAD(HeartMate 3)は、5年後の複合アウトカムおよび全生存が良好であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らが米国の69施設で実施した無作為化非劣性試験「MOMENTUM 3試験」の延長試験で示した。MOMENTUM 3の本試験では、2年後の後遺障害を伴う脳卒中またはデバイス交換の再手術のない生存に関して、HeartMate 3のHeartMate II(軸流ポンプLVAD)に対する優越性が認められ、米国食品医薬品局(FDA)は、本試験でLVAD療法を継続している患者の追跡調査を5年後まで延長することを条件に、2018年、HeartMate 3を永久植込み治療(destination therapy:DT)として承認している。著者は、「今回の結果は、完全磁気浮上型遠心ポンプ式LVADの使用を支持するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2022年9月8日号掲載の報告。

がん患者は血圧140/90未満でも心不全リスク増/東京大学ほか

 がん患者では、国内における正常域血圧の範囲内であっても心不全などの心血管疾患の発症リスクが上昇し、さらに血圧が高くなるほどそれらの発症リスクも高くなることを、東京大学の小室 一成氏、金子 英弘氏、佐賀大学の野出 孝一氏、香川大学の西山 成氏、滋賀医科大学の矢野 裕一朗氏らの研究グループが発表した。これまで、がん患者における高血圧と心血管疾患発症の関係や、どの程度の血圧値が疾患発症と関連するのか明らかではなかった。Journal of clinical oncology誌オンライン版2022年9月8日号掲載の報告。  本研究では、2005年1月~2020年4月までに健診・レセプトデータベースのJMDC Claims Databaseに登録され、乳がん、大腸・直腸がん、胃がんの既往を有する3万3,991例(年齢中央値53歳、34%が男性)を解析対象とした。血圧降下薬を服用中の患者や、心不全を含む心血管疾患の既往がある患者は除外された。主要アウトカムは、心不全の発症であった。

大腸がん術後の低分子ヘパリン、投与期間延長は有効か?/BMJ

 低分子量ヘパリンtinzaparinによる大腸がん切除術の周術期抗凝固療法は、投与期間を延長しても入院中のみの投与と比較して、静脈血栓塞栓症と術後大出血の発現率は両群で類似していたが、無病生存および全生存を改善しなかった。カナダ・オタワ大学のRebecca C. Auer氏らが、カナダ・ケベック州とオンタリオ州の12病院で実施した無作為化非盲検比較試験「PERIOP-01」の結果を報告した。低分子量ヘパリンは、前臨床モデルにおいてがん転移を抑制することが示されているが、がん患者の全生存期間延長は報告されていない。周術期は、低分子量ヘパリンの転移抑制効果を検証するのに適していると考えられることから、約35%の患者が術後に再発するとされる大腸がん患者を対象に臨床試験が行われた。BMJ誌2022年9月13日号掲載の報告。

日本人の脂質値の推移とコントロールの重要性(解説:三浦 伸一郎 氏)

 2022年8月23・30日号のJAMA誌に米国成人の脂質値の推移の研究が報告された。総コレステロール値は年齢調整後、2018年までの10年間で有意に改善していたが、注目されることはアジア人では改善を認めなかったことである。  日本人の脂質値の推移は、「健康日本21(第二次)」の計画の途中経過を見ると、2019年で血清総コレステロール値が240mg/dL以上の割合は男性12.9%、女性22.4%であった(「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」厚生労働省)。この10年間でみると、その割合は、男性で有意な変化はなかったが、女性では有意に増加していた。「健康日本21(第二次)」の脂質異常症(40~79歳)の減少目標は、総コレステロール240mg/dL以上の割合が男性10%、女性17%であり、かなり乖離があるのが現状である。

冠動脈造影/PCI時、コンピュータ支援で急性腎障害軽減/JAMA

 非緊急冠動脈造影や経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行する心臓専門医に対し、教育プログラムや造影剤投与量などに関するコンピュータによる監査とフィードバックを伴う臨床意思決定支援の介入を行うことで、これら介入のない場合と比べて施術を受けた患者が急性腎障害(AKI)を発症する可能性は低く、時間調整後絶対リスクは2.3%低下した。また、造影剤の過剰投与について同リスクの低下は12.0%だった。カナダ・カルガリー大学のMatthew T. James氏らが、心臓専門医34人とその患者を対象に行ったクラスター無作為化試験の結果で、JAMA誌2022年9月6日号で発表した。AKIは、冠動脈造影やPCIでは一般的な合併症で、高コストおよび有害長期アウトカムと関連する。今回の結果について著者は、「こうした介入が今回の試験以外の環境下でも有効性を示すかどうか、さらなる検討が必要である」と述べている。

心不全のうっ血解除、アセタゾラミド追加で改善/NEJM

 体液過剰を伴う急性非代償性心不全患者の治療において、標準化されたループ利尿薬療法に炭酸脱水酵素阻害薬アセタゾラミドを追加すると、3日以内のうっ血解除(decongestion)の成功率が改善され、尿量やナトリウム利尿が増加して利尿効率が高くなり、有害事象の増加は認められないことが、ベルギー・Ziekenhuis Oost-LimburgのWilfried Mullens氏らが実施した「ADVOR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年8月27日号に掲載された。  ADVOR試験は、ベルギーの27施設が参加した医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年11月~2022年1月の期間に患者のスクリーニングが行われた(Belgian Health Care Knowledge Centerの助成を受けた)。