循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:75

フォシーガ、2022年欧州心臓病学会総会にて心不全に関する新たなエビデンスを発表/AZ

 アストラゼネカは2022年9月5日のプレスリリースで、フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)の第III相DAPA-HF試験および第III相DELIVER試験の事前に規定された併合解析で得られた結果と、第III相DELIVER試験の結果について発表した。共に2022年欧州心臓病学会総会で発表されたものである。  第III相DAPA-HF試験および第III相DELIVER試験の事前に規定された併合解析で、フォシーガは、心不全患者において左室駆出率にかかわらず、中央値22ヵ月のフォローアップ期間で心血管死リスクを14%(p=0.01、絶対リスク減少率[ARR]:1.5%)、原因を問わない死亡リスクを10%(p=0.03、ARR:1.5%)、心不全による(初回および再)入院のリスクを29%(p<0.001、ARR:6%)、心血管死、心筋梗塞、または脳卒中の複合リスクを10%(p=0.045、ARR:1.3%)低下させることが示された。結果に関しては、Nature Medicine誌にも掲載されている。

人工関節置換術後のVTE予防、アスピリンvs.エノキサパリン/JAMA

 股関節または膝関節の変形性関節症で人工関節置換術を受けた患者における静脈血栓塞栓症(VTE)の予防では、アスピリンはエノキサパリンと比較して、90日以内の症候性VTEの発現率が統計学的に有意に高く、死亡や大出血、再入院、再手術の頻度には差がないことが、オーストラリア・インガム応用医学研究所のVerinder S. Sidhu氏らが実施した「CRISTAL試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年8月23日号に掲載された。  CRISTAL試験は、人工股関節置換術(THA)および人工膝関節置換術(TKA)に伴うVTEの予防における、アスピリンのエノキサパリン(低分子量ヘパリン)に対する非劣性の検証を目的とするレジストリ内クラスター無作為化クロスオーバー試験であり、2019年4月~2020年12月の期間に、オーストラリアの31の病院で参加者の登録が行われた(オーストラリア連邦政府の助成を受けた)。

インフルエンザと新型コロナ:動脈血栓の視点ではどっちが怖い?(解説:後藤信哉氏)

新型コロナウイルス感染症の特徴として、深部静脈血栓症・肺塞栓症などの静脈血栓症リスクの増加が注目された。静脈血栓症リスクは、新型コロナウイルス以外の感染症でもICU入院例では高かった。インフルエンザなど他のウイルス感染と比較して、新型コロナウイルスにはACE-2受容体を介して血管内皮細胞に感染するとの特徴があった。血管内皮細胞は血管内の血栓予防にて死活的に重要な役割を演じている。新型コロナウイルス感染により血管内皮細胞の機能が障害されれば、微小循環の過程にて血小板、白血球が活性化し全身循環する血液の血栓性は亢進する。静脈血栓症以外に、心筋梗塞・脳梗塞などの動脈血栓リスクも新型コロナウイルス感染後に増加すると想定された。また、新型コロナウイルス感染症例の心筋梗塞、脳梗塞リスクの増加を示唆する論文も多数出版されている。

世界初の高血圧治療補助アプリが保険適用/CureApp

 CureAppの開発した治療アプリ「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ」が2022年9月1日に保険適用された。高血圧領域での治療アプリの保険適用は世界初。保険診療において、治療アプリ・血圧測定・医師の指導による「三位一体の6ヵ月指導プログラム」の処方・提供が可能となり、患者ごとに行動変容を促して生活習慣を修正することが期待されている。  本アプリを用いた治療の流れは、まず医師が診察においてアプリ利用の合意を得て処方コードを発行し、患者がアプリをインストール・セットアップすることから始まる。通院と通院の間は行動目標の実践や家庭血圧などの記録をアプリがサポートし、医師はその記録情報をもとに治療の継続や見直しを行う。アプリと血圧計はBluetooth接続され、情報が医師と共有される。  患者の自己負担額は、3割負担の場合で月々2,490円(初回のみ2,910円)で、初診・再診料などの他の診察費用は別途必要となる。

米国成人の脂質値は改善傾向だがアジア人は変化なし/JAMA

 米国成人において、2007~08年から2017~18年の10年間で脂質値は改善しており、この傾向は非ヒスパニック系アジア人を除くすべての人種・民族のサブグループで一貫していたことが、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul Aggarwal氏らの解析で明らかとなった。脂質高値は、心血管疾患の修正可能なリスク因子であるが、米国成人における過去10年の脂質値および脂質コントロールの傾向や、性別や人種・民族別の差異はほとんど知られていなかった。JAMA誌2022年8月23・30日号掲載の報告。  研究グループは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)の2007~08年から2017~18年のデータを用い、米国成人を代表するよう重み付けされた20歳以上の米国成人3万3,040例を対象に、連続横断分析を行った。

コロナvs.インフル、入院患者の血栓塞栓症リスク/JAMA

 米国・ペンシルベニア大学のVincent Lo Re III氏らによる、米国の公衆衛生サーベイランスシステムのデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、COVID-19入院患者はワクチンの導入前か実施期間中にかかわらず、2018/2019シーズンのインフルエンザ入院患者と比較し、入院後90日以内の動脈血栓塞栓症リスクに有意差はないものの静脈血栓塞栓症リスクが有意に高いことが示された。これまで、COVID-19患者における動脈血栓塞栓症および静脈血栓塞栓症の発生率は不明であった。JAMA誌2022年8月16日号掲載の報告。

古いほど良い:友と酒とCABG?(解説:今中和人氏)

血行再建後の抗血小板療法に関して熱く議論されてきたPCIに引き換え、CABGだって術後は何かしら抗血小板薬を投与はするものの、PCIと違って新製品なんて出てこないし、それ以上に外科医の“さが”というか、どうしても手技そのものにばかり関心が向いてしまって、グラフト素材やオフポンプ手術に比べて、投薬については議論が盛り上がっていない印象は否めない。本論文の中心テーマは、大伏在静脈を用いたCABG術後のチカグレロル追加の便益で、アスピリン単剤かチカグレロル併用DAPT、またはチカグレロル単剤を投与した患者で、中期遠隔期のグラフト開存性を確認した前向き無作為化試験4本のメタ解析である。用量はアスピリン81~100mg、チカグレロルは90mgで、1次エンドポイントは12ヵ月以内の静脈グラフト不全と出血イベント、2次エンドポイントはMACCEとした(実際は4論文中2本がアスピリン単剤とDAPTの比較、1本はアスピリン単剤とチカグレロル単剤の比較、1本がアスピリン単剤、DAPT、チカグレロル単剤の3群比較)。静脈グラフト不全はCTかCAGでの閉塞ないし50%以上の狭窄と定義し、出血イベントはBleeding Academic Research Consortium(BARC)の基準を用いている。これは医学的に問題とならないType 1から致死的なType 5まで分かれており、本論文では臨床的に有意で対処を要するType 2、Hb 3g/dLを超える低下や輸血を要するType 3、致死的出血のType 5の3カテゴリーを「出血イベント」と定義した。

CABG後の静脈グラフト不全リスク、DAPTで回避できるか/JAMA

 冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者の抗血小板療法において、アスピリンにチカグレロルを加えた抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)はアスピリン単剤療法と比較して、静脈グラフト不全のリスクが有意に低い一方で、臨床的に重要な出血のリスクは有意に高く、チカグレロル単剤とアスピリン単剤の比較ではこのような差はないことが、オーストリア・ウィーン医科大学のSigrid Sandner氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2022年8月9日号に掲載された。  研究グループは、CABG術後の抗血小板療法による静脈グラフト不全のリスクの抑制効果を、チカグレロルDAPTまたはチカグレロル単剤療法と、アスピリン単剤療法で比較する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(研究費は、米国Weill Cornell Medicine心臓胸部外科の内部資金による)。

低血圧+低BMI+非HDL-C低値で認知症リスク4倍

 低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値の3要素が組み合わさるほど認知症リスクが増大することを、オランダ・ラドバウド大学医療センターのMelina Ghe den Brok氏らが報告した。低血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値はそれぞれ認知症のリスク因子として知られているが、これらが相加的なリスク因子であるかどうかは不明であった。Neurology誌オンライン版2022年8月2日号掲載。  本調査は、認知症予防を目的とした介入試験であるPrevention of Dementia by Intensive Vascular Care(preDIVA)試験の拡張フォローアップの事後解析として行われた。対象は、オランダの総合診療施設に登録されている70~78歳の非認知症の地域住民であった。ベースラインの低収縮期血圧、低BMI、非HDLコレステロール低値と認知症発症の関連性を、Cox回帰分析を用いて評価した。

脳卒中、55歳未満の発症増大/JAMA

 脳卒中罹患者が、55歳未満で有意に増大している一方、55歳以上では減少している。英国・オックスフォード大学のLinxin Li氏らが、イングランド・オックスフォードシャー州の住民について2002~10年vs.2010~18年の脳卒中罹患率を比較した検討の結果を報告した。他の主要血管イベントには同様の違いはみられず、著者は「脳卒中について示されたこの差の原因を明らかにする、さらなる検討が必要である」と述べている。先行研究で55歳未満の脳卒中罹患率が上昇していることが報告されていたが、多くが対象を限定した試験で、住民ベースのより多くの試験によるエビデンスが求められていた。JAMA誌2022年8月9日号掲載の報告。