循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:80

アスピリンでいいの?(解説:後藤信哉氏)

骨折症例は肺塞栓症などの致死的静脈血栓リスクが高いと認識されている。欧米諸国では静脈血栓予防の標準治療は低分子ヘパリンである。皮下注射といえども注射と経口の差異は大きい。血栓イベント予防が目的であれば経口薬が好ましい。静脈血栓予防におけるアスピリンの有効性については長年の議論がある。無効とも言いにくいが、抗凝固薬よりも有効性が乏しいと一般に理解されていると思う。しかし、本論文のintroductionに記載されているようにアスピリンと低分子ヘパリンとのしっかりしたランダム化比較試験が施行されてきてはいない。

経皮的脳血栓回収術後の血圧管理について1つの指標が示された(解説:高梨成彦氏)

経皮的脳血栓回収術はデバイスの改良に伴って8割程度の再開通率が見込まれるようになり、再開通後に出血性合併症に留意して管理する機会が増えた。急性期には出血を惹起する薬剤を併用する機会が多く、これには血栓回収術に先立って行われるアルテプラーゼ静注療法、手術中のヘパリン静注、術後の抗凝固薬・抗血小板薬の内服などがある。 出血性合併症を避けるためには降圧を行うべきであるが、どの程度の血圧が適切であるかについてはわかっていない。そのため脳卒中ガイドライン2021では、脳血栓回収術後には速やかな降圧を推奨しており、また過度な降圧を避けるように勧められているが具体的な数値は挙げられていない。

有害な妊娠アウトカム、母親の虚血性心疾患リスクが長期的に上昇/BMJ

 5つの有害な妊娠アウトカム(早産、在胎不当過小、妊娠高血圧腎症、妊娠高血圧腎症以外の妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病)のいずれかを経験した女性は、出産後の虚血性心疾患のリスクが高く、このリスク上昇は最長で46年持続していることが、米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のCasey Crump氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年2月1日号で報告された。  研究グループは、5つの有害な妊娠アウトカムと母親の虚血性心疾患の長期的なリスクとの関連の評価を目的に、スウェーデンにおいて全国的なコホート研究を行った(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。

トラセミド、お前もか?―心不全における高用量利尿薬の功罪(解説:原田和昌氏)

心不全は心血管系の器質的および機能的不全であり、多くは体液量の異常と神経体液性因子の異常を伴う。過剰な体液量状態すなわちうっ血をとるため利尿薬を用いるが、急性心不全に利尿薬を大量投与するとWRFを起こし予後を悪化する可能性がある。また、長期の高用量利尿薬投与はRAS系の亢進を起こし心不全の予後を不良にする。これまで生命予後をエンドポイントとした利尿薬の大規模臨床試験は基本的にネガティブ・スタディであった。聞くところによると、利尿薬は心不全の予後改善治療ではないということで、2016年のESC心不全ガイドラインの最終稿の直前まで割愛されていたが、最後になって加えられたとか、Voors先生が担当したCKDの項が大幅に減らされたとぼやいておられたことは記憶に新しい。近年、多少の利尿作用を有し心不全の予後を改善する治療薬が使用可能になり、利尿薬に対する理解が深まってきた。

心血管疾患リスク予測式は、がん生存者に有用か/Lancet

 がん患者は心血管疾患のリスクが高いという。ニュージーランド・オークランド大学のEssa Tawfiq氏らは、がん生存者を対象に、同国で開発された心血管疾患リスク予測式の性能の評価を行った。その結果、この予測式は、リスクの予測が臨床的に適切と考えられるがん生存者において、5年心血管疾患リスクを高い精度で予測した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年1月23日号で報告された。  研究グループは、がん生存者における心血管疾患リスクの予測式の性能を、プライマリケアで評価する目的で、妥当性の検証研究を行った(オークランド医学研究財団などの助成を受けた)。

治療抵抗性高血圧に対するアルドステロン合成阻害薬baxdrostatの効果(解説:石川讓治氏)

治療抵抗性高血圧は、サイアザイド系利尿薬を含む3剤以上の降圧薬を用いても降圧目標に達しない高血圧と定義され、4番目の降圧薬としてアルドステロン受容体阻害薬が使用されることが多い。アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体阻害薬の投与下ではRAS系のbreakthroughが起こることがあり、治療抵抗性高血圧に対してアルドステロン受容体を阻害することが有用であると考えられてきた。アルドステロンは高血圧性臓器障害や線維化の重要な機序の1つであると考えられている。アルドステロンの合成酵素は、コルチゾールの合成酵素と類似を示しており、アルドステロン合成酵素阻害薬がコルチゾールの代謝に与える影響が懸念されてきた。

スタチン・アスピリン・メトホルミンと肝がんリスクとの関連~メタ解析

 スタチン、アスピリン、メトホルミンが肝細胞がんを予防する可能性があることを示唆する報告があるが、これまでのメタ解析は異質性やベースラインリスクを適切に調整されていない試験が含まれていたため、シンガポール・National University of SingaporeのRebecca W. Zeng氏らは新たにメタ解析を実施した。その結果、スタチンおよびアスピリンは肝細胞がんリスク低下と関連していたが、併用薬剤を考慮したサブグループ解析ではスタチンのみが有意であった。メトホルミンは関連が認められなかった。Alimentary Pharmacology and Therapeutics誌オンライン版2023年1月10日号に掲載。

難治性院外心停止、体外循環式心肺蘇生法vs.従来法/NEJM

 難治性院外心停止患者において、体外循環式心肺蘇生(ECPR)と従来のCPRは、神経学的アウトカム良好での生存に関して有効性が同等であることが、オランダ・マーストリヒト大学医療センターのMartje M. Suverein氏らによる多施設共同無作為化比較試験「INCEPTION(Early Initiation of Extracorporeal Life Support in Re-fractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest)試験」の結果、報告された。ECPRは自発循環のない患者において灌流と酸素供給を回復させるが、難治性院外心停止患者における良好な神経学的アウトカムを伴う生存に対する有効性に関するエビデンスは、結論が得られていなかった。NEJM誌2023年1月26日号掲載の報告。

尿酸の上昇は心房細動発症と関連

 さまざまな疫学調査より高い尿酸値は心房細動(AF)の独立したリスクとされている。今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のMozhu Ding氏らがスウェーデンのAMORISコホート研究から尿酸の上昇がAFの新規発症と関連することを報告した。Journal of the American Heart Association誌1月12日号からの報告。  心血管系疾患の評価において尿酸値の役割はますます重要となっているが、AFとの関係は明確でない。本研究では、尿酸値とAFの新規発症リスクとの関連について検討した。

ワクチン未接種のコロナ感染、急性期の死亡リスク80倍超

 中国・香港大学のEric Yuk Fai Wan氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の心血管疾患(CVD)発症リスクや全死亡リスクに及ぼす短期的および長期的な影響を検討した。その結果、ワクチン未接種のCOVID-19感染は急性期(感染から21日後まで)のCVD発症リスク、全死亡リスクを大きく上昇させ、これらのリスクは最長18ヵ月間の追跡においても上昇していた。Cardiovascular Research誌2023年1月19日号に掲載の報告。  英国において2020年3月~11月にCOVID-19に感染した患者7,584例(感染群)を感染から最長18ヵ月後まで前向きに追跡した。年齢と性別をマッチングさせた同時期の非感染対照7万5,790人(同時期対照群)、2018年3月~11月の非感染対照7万5,774人(過去対照群)とCVD発症リスク、全死亡リスクなどを急性期と急性期後(感染から22日後以降)に分けて比較した。解析にあたり、傾向スコア分析の拡張版であるMarginal Mean Weighting through Stratification(MMWS)法を用いて、年齢、性、喫煙習慣、糖尿病の既往、高血圧症の既往、民族などを調整した。なお、英国では2020年3月~11月において使用可能な新型コロナウイルスワクチンは存在しなかったため、本試験の対象者はワクチン未接種であった。