極めて難しい妊婦・産婦の静脈血栓症に対して日本は世界の標準治療ができない?(解説:後藤信哉氏)
血栓症を専門とする医師として最も困難な臨床病態の一つが妊婦・産婦の静脈血栓症である。高齢者の心筋梗塞であれば死亡などの合併症を起こしても納得しやすい。多くの妊婦が安全に出産するなかで自分の家族が静脈血栓症に凶変すれば家族としては納得できない。血栓性素因などが同定されたら、血栓予防を行うことになる。数ヵ月の妊娠期間内、継続的に血栓予防を行うためにはどうしたらいいだろうか?経口抗凝固薬として長年のデータの蓄積のあるワルファリンは胎盤を通過する。催奇形性もあるため器官形成期には使用できない。選択的トロンビン、Xa阻害薬は心房細動の脳卒中予防などに広く使用されているが、妊婦への使用経験は少ない。低分子として胎盤を通過すれば胎児への影響も懸念される。