循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:82

AF患者へのXIa因子阻害薬asundexian、出血リスクは?(PACIFIC-AF)/Lancet

 心房細動患者に対し、新規開発中の第XIa因子(FXIa)阻害剤asundexianの20mgまたは50mgの1日1回投与は、アピキサバン標準用量投与に比べ、ほぼ完全なin-vivoのFXIa阻害を伴い、出血を低減することが示された。米国・デューク大学のJonathan P. Piccini氏らが、日本や欧州、カナダなど14ヵ国93ヵ所の医療機関を通じ約800例を対象に行った第II相無作為化用量設定試験「PACIFIC-AF試験」の結果を報告した。心房細動の脳卒中予防のための直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の使用は、出血への懸念から制限されている。asundexianは、止血への影響を最小限とし血栓症を軽減する可能性が示唆されていた。Lancet誌2022年4月9日号掲載の報告。

Xa阻害薬の時代からXI阻害薬の時代に行けるかな?(解説:後藤信哉氏)

商業的に大成功したDOACs(Xa阻害薬)の特許切れが近い。年間1兆円以上売れている薬剤の特許切れは各企業に激しく痛い。主要適応の非弁膜症性心房細動の脳卒中予防において、凝固カスケードにてXaの上流の、いわゆる内因系凝固因子のXI阻害は有効あるいは安全だろうか? これまで複数のXI阻害薬の第II相試験が行われてきた。本研究はバイエル社のXI阻害薬asundexian 20mg/日、50mg/日とアピキサバン5mgx2/日が二重盲検にてランダムに比較された。第III相の仮説検証大規模試験の前にasundexianに至適容量を決めるのが、本第II相試験の主要な目的である。試験期間は3ヵ月と短い。 ISTH基準の大出血と臨床的に意味のある出血はアピキサバンの開発試験のARISTOTLEでは概略年率6%であった。3ヵ月のイベントリスクは2%に満たない予測となる。本研究はARISTOTLEよりもリスクの高い症例が含まれたためか、アピキサバンの出血リスクは2%程度であった。asundexianでは20mgでも50mgでもアピキサバン群より見かけの出血リスクは低く見える。755例のランダム化比較試験と小規模であるため、本研究に基づいて第III相試験の容量を決定できるか否かの判断は難しい。有効性についてはイベント数が少な過ぎるので、さらに容量の決定は困難である。しかし、過去の研究と一致して、心房細動症例では3ヵ月の観察期間内の死亡数が、脳卒中・全身性塞栓症より多いことを示している。抗凝固薬の開発試験であるが、心房細動の未解決課題が血栓イベントではないことを示唆して興味深い。

朝食にタンパク質で筋力維持、何を食べるのがベスト?

 朝食でのタンパク質摂取量は、筋力を維持するために重要であることが示唆されているが、朝食で取るタンパク質の『質』による影響は不明なままである。そこで、国立長寿医療研究センター研究所フレイル研究部の木下 かほり氏、老化疫学研究部の大塚 礼氏らは、朝食時のタンパク質の質と筋力低下の発生率の関連について縦断的研究を行った。その結果、タンパク質の摂取量とは独立して、朝食のタンパク質の質が高いほど高齢者の筋力低下抑制に関連していることが示唆された。この結果はJournal of the American Medical Directors Association誌2022年1月7日号オンライン版に掲載された。

こういうランダム化比較試験は仕方ない?(解説:後藤信哉氏)

 日本ではランダム化比較試験の多くが薬剤の臨床開発の一環としての治験として行われている。治験でないランダム化比較試験には薬を売るためのseeding trial(種まき試験)が多い。企業の利益と臨床試験が直結するため、規制当局による厳格な規制がなければ資本は何をするかわからない。  経済利益と直結する臨床試験と異なり、本研究は新型コロナウイルスという脅威にさらされた人類の治療法探索の一環として施行された研究である。新型コロナウイルス感染は血栓症のリスクを増やす。血栓イベント予防効果のある抗血小板薬は感染症の予後を改善するかもしれないとの仮説が検証された。

Apple Watchで不整脈を早期発見するAIモデル開発~慶大/日本循環器学会

 Apple Watchなどのスマートウォッチは、無意識のうちに心拍数や活動量などのさまざまなヘルスケアデータを計測し、蓄積し続けることができる。2020年にはApple Watchの2つのアプリケーション「不規則な心拍の通知」と「心電図アプリケーション」が家庭用医療機器として厚生労働省の承認を受け、医療分野での活用が期待されている。  慶應義塾大学病院・慶應義塾大学医学部は、Apple Watchで心電図を記録する最適なタイミングを予測するための機械学習アルゴリズム構築を目的として、研究用iPhoneアプリケーションを構築し、Apple Watchが記録したヘルスケアデータを収集した。

会員医師の昨年度の最多年収帯は?/1,000人アンケート

 ケアネットでは、3月10日(木)に会員医師1,000人を対象に、インターネットによる「年収に関するアンケート」を行った。その結果、82%の医師が昨年度の年収額を1,000万円以上と回答し、その中で最も多い年収帯は2,000~2,500万円であった(全体の15%)。また、全体の58%の医師が1,000~2,000万円の年収帯に分布し、2,000~3,000万円は20%、3,000万円以上は4%であった。  最多年収帯を年代別にみると、35歳以下が1,000~1,200万円(21%)、36~45歳が1,200~1,400万円(17%)、46~55歳が1,600~1,800万円および2,000~2,500万円(ともに19%)、56~65歳および66歳以上が2,000~2,500万円(22%、14%)だった。

糖尿病患者の非HDL-C値低下に有効なスタチンは?/BMJ

 英国・マンチェスター大学のAlexander Hodkinson氏らはネットワークメタ解析の結果、中用量および高用量のロスバスタチン、ならびに高用量のシンバスタチンとアトルバスタチンが、糖尿病患者の非HDLコレステロール(非HDL-C)値を中等度低下させるのに最も有効であることを示した。糖尿病患者における心血管疾患の1次予防および2次予防の基本はLDL-C値の低下であるが、非HDL-C値に対するスタチンの有効性を比較したエビデンスは不足していた。著者は、「主要ターゲットとして非HDL-C値の低下を用いると心血管疾患の予測精度が向上する可能性があることから、今回の結果は、糖尿病患者において非HDL-C値の低下に最も有効なスタチンの種類と強度に関する指針に役立つと考えられる」とまとめている。BMJ誌2022年3月24日号掲載の報告。

末梢動脈疾患ガイドライン、7年ぶりの改訂/日本循環器学会

 日本循環器学会と日本血管外科学会の合同ガイドライン『末梢動脈疾患ガイドライン(2022年改訂版)』が、7年ぶりの改訂となった。2度目の改訂となる今回は、末梢動脈疾患の疾病構造の変化と、それに伴う疾患概念の変遷、新たな診断アルゴリズムや分類法の登場、治療デバイスの進歩、患者背景にある生活習慣病管理やその治療薬の進歩などを踏まえた大幅な改訂となっている。第86回日本循環器学会学術集会(3月11~13日)で、末梢動脈疾患ガイドライン作成の合同研究班班長である東 信良氏(旭川医科大学外科学講座血管外科学分野)が、ガイドライン改訂のポイント、とくに第4章「慢性下肢動脈閉塞(下肢閉塞性動脈硬化症)」について重点的に解説した。

3回目接種後の心筋炎、若年者での発生状況とその転帰/JAMA

 とくに若い男性で、ごく稀ではあるもののmRNAワクチン接種後の心筋炎の発生が報告されている。1回目よりも2回目接種後に多い傾向が報告されているが、3回目接種後の発生率についてのデータは十分でない。イスラエル国防軍医療部隊のLimor Friedensohn氏らは、同軍の新兵における3 回目のワクチン接種と心筋炎リスクとの関連について、解析結果を報告。JAMA誌オンライン版2022年3月17日号にリサーチレターとして掲載された。  2021年8月15日、イスラエル国防軍(IDF)は、ファイザー社のBNT162b2ワクチンによる3回目接種を開始した。本研究では、2021年9月30日までにBNT162b2の3回目接種を受け、2021年10月14日までに心筋炎と診断されたすべての軍人を対象としている。心筋炎が疑われる症例はすべて病院に紹介され、診断は、臨床検査、心電図、心エコー、心臓MRI所見に基づき行われた。すべての診断は、独立した心臓専門医によって再確認されている。集計データをもとに、ワクチン接種後1週間と2週間における心筋炎発症率を算出した。

「非心臓手術症例」の静脈血栓予防におけるDOACと低分子ヘパリンの効果のネットワークメタ解析?(解説:後藤信哉氏)

筆者は題名を見て奇妙だなと思った。整形外科術後の静脈血栓リスクが高いことは広く知られている。がんの症例の血栓イベントリスクも高いと思う。しかし、本研究では「非心臓手術症例」を対象としている。方法の部分で著者も記載しているように、血栓リスクの高い整形外科手術とそうでない非整形外科手術をあえて研究対象として包括したとしている。血栓リスクの高い症例と低い症例をあえて包括して論じる意味は出血が不可避な「手術」に対するDOACと低分子ヘパリンの有効性と安全性に注目したのであろうか? 結果の実臨床への応用は難しいけれど題名の通りに抗凝固薬のbenefitとharmに関するエビデンスの提供を目指した研究かもしれない。