循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:94

中等度スタチン+エゼチミブ併用は高用量スタチンに比べて、心血管疾患再発予防に非劣性で、かつ有害事象は少ない:ただしわが国とスタチン用量が異なる点は注意が必要(解説:桑島巖氏)

動脈硬化性疾患(ASCVD)を有する例において、2次予防のためにはLDLコレステロール値と再発予防の関係はthe lower, the betterが定着しつつある。本年度改定された、わが国の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」でも、2次予防のためにはLDLコレステロール値の治療目標値は70mg/dL未満としている。その目標値達成のためには、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)を最大量まで増量するか、あるいは中等度のスタチンと脂質低下機序の異なるエゼチミブを併用すべきか迷うところである。コレステロールの合成抑制と、消化管からの脂肪吸収抑制という異なる機序の薬剤を組み合わせることは、合理的と考えられるが、そのエビデンスが望まれていた。

LDL-コレステロール:Still “The lower, the better!”(解説:平山篤志氏)

1994年に発表された4S試験以来、スタチンによるLDL-コレステロール(LDL-C)の低下が心血管イベントを減少させることがすべての試験で示されてきた。ただ、その機序がスタチンのLDL-C低下作用だけによるものなのか? あるいは、抗炎症作用を含めたプレイオトロピック効果が加わることによるのか? 長い間の議論があった。2005年に発表されたIMPROVE-IT試験さらには2017年に発表されたFOURIER試験で、非スタチン製剤の追加投与でLDL-Cを低下させることでイベント減少効果が示され、LDL-C低下の効果から、“The Lower, The Better”という論文がNEJM誌に掲載された。

スタチン服用の日本人患者で発がんリスクが有意に低下

 スタチン製剤の服用によって、日本人の脂質異常症患者の発がんリスクが低下したことが報告された。東京理科大学の前田絢子氏らが、保険請求データを用いた大規模な人口ベースの後ろ向きコホート研究を行い、スタチン製剤と日本人患者における発がんリスクの関係を調査した。近年の調査において、スタチン製剤が特定のがんの発生率を低下させる可能性が示唆されている。しかし、臨床試験では明らかにされておらず、日本人患者での調査も限定的であった。Cancer prevention research誌オンライン版2022年8月2日掲載。  本調査の対象は、2006~2015年に脂質異常症と新たに診断された患者。日本の保険請求データを用い、期間中にスタチン製剤を服用開始した群(服用群)と、年齢・性別・診断年に応じて無作為に抽出した非服用群を比較した。解析対象は各群23,746例で平均追跡期間は約2年、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価した。

コロナ感染後の心筋梗塞・脳卒中発生率、ワクチン接種者vs.未接種者/JAMA

 韓国・国民健康保険公団(National Health Insurance Service)のKim Young-Eun氏らが、新型コロナウイルス感染後のワクチン接種と急性心筋梗塞(AMI)および虚血性脳卒中との関連を調査した。その結果、新型コロナ感染後のAMIおよび虚血性脳卒中の発生率の増加は、血栓症のリスク増加に関連しており、ワクチンを完全接種することでワクチン接種が感染後の二次合併症のうちAMIおよび虚血性脳卒中のリスク低下に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版2022年7月22日号リサーチレターに掲載。

トラネキサム酸、高用量で心臓手術関連の輸血を低減/JAMA

 人工心肺を用いた心臓手術を受けた患者では、トラネキサム酸の高用量投与は低用量と比較して、同種赤血球輸血を受けた患者の割合が統計学的に有意に少なく、安全性の主要複合エンドポイント(30日時の死亡、発作、腎機能障害、血栓イベント)の発生は非劣性であることが、中国国立医学科学院・北京協和医学院のJia Shi氏らが実施した「OPTIMAL試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2022年7月26日号に掲載された。  OPTIMAL試験は、人工心肺を用いた心臓手術を受けた患者ではトラネキサム酸の高用量は低用量に比べ、有効性が高く安全性は非劣性との仮説の検証を目的とする二重盲検無作為化試験であり、2018年12月~2021年4月の期間に、中国の4施設で参加者の登録が行われた(中国国家重点研究開発計画の助成による)。  対象は、年齢18~70歳、人工心肺を用いた待機的心臓手術を受ける予定で、本試験への参加についてインフォームド・コンセントを受ける意思と能力を持つ患者であった。患者はいつでも試験参加への同意を撤回できるとされた。  被験者は、高用量トラネキサム酸または低用量トラネキサム酸の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。高用量群では、麻酔導入後、トラネキサム酸30mg/kgがボーラス静注され、術中は維持量16mg/kg/時がポンプ充填量2mg/kgで投与された。低用量群は、トラネキサム酸10mg/kgがボーラス静注され、術中は維持量2mg/kg/時がポンプ充填量1mg/kgで投与された。

コロナワクチン、医師はいくらまで払う?/1,000人アンケート

 第7波の到来により、医療者へもコロナワクチン4回目接種が始まった。6月にCareNet.comが会員医師に行った『ワクチン4回目接種、あなたは受けたい?/会員医師1,000人アンケート』の結果によると、回答者の7割が接種したいと回答していた(対象となったらすぐに接種したい:33%、対象となったら時期をみて接種したい:36%)。  ところで、ワクチン接種は現時点では全額公費負担(厚生労働大臣の指示に基づき国の負担により実施することを踏まえ、全国統一の単価で接種1回あたり2,070円[消費税については、定期接種の予防接種と同様の取り扱い。ワクチン代はワクチンを国が確保し供給するため含まれていない1)])であり、自分の懐が痛むことはない。だが、将来的に新型コロナワクチン接種が定着した場合は自己負担になる可能性が高く、もしも費用負担が発生したら、医師も接種を控えたいと考えるのだろうか。さらには、ほかのワクチンとの兼ね合いを考慮した適正価格や、患者負担の許容範囲はいくらが妥当と捉えているのだろうかー。

CPB心臓手術、4%アルブミン溶液投与の効果は?/JAMA

 心肺バイパス術(CPB)による心臓手術を受ける患者において、心肺バイパス用プライミング液と術中・術後の静脈内充填液として、4%アルブミン溶液の投与は酢酸リンゲル液投与と比べ、術後90日の主要有害イベントリスクを有意に低下しなかった。フィンランド・ヘルシンキ大学のEero Pesonen氏らが、1,407例を対象に行った二重盲検無作為化試験の結果を報告した。心臓手術において、アルブミン溶液はクリスタロイドよりも血行動態を維持し、血小板数と体液過剰を抑制する可能性が示唆されていたが、手術に伴う合併症軽減に有効なのか、これまで無作為化試験は行われていなかった。著者は結果を踏まえて「CPB心臓手術を受ける患者における4%アルブミン溶液の使用を支持する所見は得られなかった」とまとめている。JAMA誌2022年7月19日号掲載の報告。

心筋ミオシン活性化薬、慢性HFrEF患者の運動耐容能を改善せず/JAMA

 左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)患者の治療において、選択的心筋ミオシン活性化薬omecamtiv mecarbilはプラセボと比較して、20週時の運動耐容能(最大酸素摂取量[peak V(・)O2])を改善しないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のGregory D. Lewis氏らが実施したMETEORIC-HF試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年7月19日号に掲載された。  METEORIC-HF試験は、慢性HFrEF患者におけるomecamtiv mecarbilによる運動耐容能の改善効果の検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年3月~2021年5月の期間に、北米37施設と欧州26施設の合計63施設で参加者の登録が行われた(AmgenとCytokineticsの助成を受けた)。

中強度スタチン+エゼチミブ、ASCVD患者で高強度スタチンに非劣性/Lancet

 新たな心血管疾患のリスクがきわめて高いアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者の治療において、中強度スタチン+エゼチミブ併用療法は高強度スタチン単剤療法に対し、3年間の心血管死、主要心血管イベント、非致死的脳卒中の複合アウトカムに関して非劣性で、LDLコレステロール値<70mg/dLを維持している患者の割合が高く、不耐による投与中止や減量を要する患者の割合は低いことが、韓国・延世大学校医科大学のByeong-Keuk Kim氏らが実施した「RACING試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年7月18日号で報告された。

有害量のアルコール摂取、若年男性で多い:GBD2020/Lancet

 アルコール摂取に関する勧告は年齢および地域によって異なることを支持する強いエビデンスがあり、とくに若年者に向けた強力な介入が、アルコールに起因する世界的な健康損失を減少させるために必要であることが、米国・ワシントン大学のDana Bryazka氏らGBD 2020 Alcohol Collaboratorsの解析で明らかとなった。適度なアルコール摂取に関連する健康リスクについては議論が続いており、少量のアルコール摂取はいくつかの健康アウトカムのリスクを低下させるが他のリスクを増加させ、全体のリスクは地域・年齢・性別・年によって異なる疾患自然発生率に、部分的に依存することが示唆されていた。Lancet誌2022年7月16日号掲載の報告。