後ろ向きコホート研究による薬剤間の効果の差の比較は疑問ですね(解説:後藤信哉氏)
筆者は全症例をカバーする大規模な臨床データベースの構築に価値があると考える(日本の保健医療データベースも経済データでなく臨床データベースとして使用するのがよい)。本研究は米国の公的保険Medicareと2つの私的保険のデータベースである。抗凝固薬を90日以上処方されていた静脈血栓症6万4,642例のデータベースには価値がある。単純に6万4,642例を記述する研究であれば、「90日以上抗凝固薬を服用している静脈血栓症のリスク因子、治療、予後の実態」論文として価値のある研究であったと思う。残念ながら、本研究ではリスク因子と予後をアピキサバン、リバーロキサバン、ワルファリンに分けて解析してしまっている。個別の医師におけるこれらの薬剤の選択バイアスはいかなる統計方法を用いても調整できないと思う。