循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:93

コロナ感染による抗体持続、飲酒とARB服用で差/神奈川県内科医学会

 神奈川県内科医学会は、新型コロナウイルス感染後の抗体の有無について、無症候性感染者を対象として、抗体の獲得とその継続について調査を行った。2020年5月18日~6月24日に県内65施設において医師・看護師、通院患者、検診受診者など1,603例を対象に抗体検査を行い、検査結果が陽性かつ無症候性であった参加者を対象に、2、4、6ヵ月後に再度抗体検査を行った。

早期妊娠高血圧腎症、分娩時期の延伸にメトホルミンが有用/BMJ

 早期妊娠高血圧腎症を発症した妊婦(妊娠26~32週)への徐放性メトホルミン投与は、妊娠期間を延長できることが、南アフリカ共和国・ステレンボッシュ大学のCatherine A. Cluver氏らが行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。投与群はプラセボ群と比較して妊娠期間が1週間延長し、出生児の新生児室入室期間を短縮できることが示された。著者は、「今回の試験で早期妊娠高血圧腎症の治療は可能であることが実証されたが、さらなる試験を行う必要はある」とまとめている。BMJ誌2021年9月22日号掲載の報告。  無作為化試験は南アフリカ共和国・ケープタウンの紹介制病院で行われた。妊娠26+0週~31+6週の待機的管理を受けている妊婦180例を無作為に2群に割り付け、徐放性メトホルミン(3g/日を分割投与、90例)またはプラセボ(90例)を分娩時まで投与した。

無症候性高度頸動脈狭窄症に対するCAS vs.CEAの無作為化比較試験(ACST-2)(解説:中川原譲二氏)

無症候性の高度頸動脈狭窄を有する患者に対する頸動脈ステント留置術(CAS)あるいは頸動脈内膜剥離術(CEA)はいずれも有効で、長期の脳卒中リスクを低減させる。しかしながら最近の全国規模のレジストリデータによると、いずれも後遺障害を伴う脳卒中や死亡について、1%程度の手技に関連するリスクを引き起こす。両者の長期的な予防効果を比較するためには、大規模な無作為化試験によるエビデンスが求められていた。ACST-2試験は、インターベンションを要する無症候性の高度頸動脈狭窄を有する患者を対象とした、CASとCEAに関する国際的な多施設無作為化比較試験であり、他の関連するすべての試験に通用する。被験者は、片側性または両側性に高度頸動脈狭窄があり、医師・患者共に頸動脈治療の施行に同意していた場合に適格とされたが、治療法は選択できなかった。被験者は無作為にCAS群またはCEA群に割り付けられ、1ヵ月後、その後は毎年の追跡を平均5年間受けた。術後30日以内に発生したイベントを、手技関連イベントとし、ITT集団を対象にテーブル解析による手技関連ハザードなどの解析を行った。手技非関連脳卒中については、Kaplan-Meier法やlog-rank検定法を用いて解析した。

院内心停止、バソプレシン+メチルプレドニゾロンは有益か/JAMA

 院内心停止患者において、バソプレシン+メチルプレドニゾロン投与はプラセボ投与と比較して自己心拍再開を有意に増大することが示された。しかしながら、本投与が長期生存にとって、有益なのか有害なのかは確認できなかったという。デンマーク・オーフス大学のLars W. Andersen氏らが、512例を対象に行った無作為化試験の結果を報告した。先行研究で、院内心停止へのバソプレシン+メチルプレドニゾロン投与は、アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2021年9月29日号掲載の報告。

降圧薬の第1選択としての4剤合剤(解説:石川讓治氏)

心血管イベントを抑制するうえで、高血圧を速やかに改善し、確実に目標血圧レベルまで到達することが重要である。わが国の日常臨床で行われている1剤ずつ増量していく方法では、目標血圧レベルへの到達に時間を要する場合があり、その間の心血管イベントリスク増加が問題になっている。近年、降圧薬の合剤が広く使用されるようになり、降圧薬の第2、第3の選択枝として、ポリファーマシーの改善の目的で臨床応用されている。わが国では3剤合剤も使用可能であるが、その使用法に厳しい制限がされており、臨床の現場で使用するうえで困難を感じる場合も多い。

代用塩(Salt substitute)の摂取と心血管イベントや死亡の減少(解説:石川讓治氏)

食塩の過剰摂取が高血圧の原因の1つであり、日本高血圧治療ガイドライン2019においてもDASH食などの研究に基づいて食塩6g/日、カリウムやマグネシウムを含む野菜や果物を食べることが推奨されている。しかし、日本人の食塩の摂取量はその2倍近くあり、高血圧患者における食事療法は困難を要する。本研究は中国のへき地において、高血圧を有し脳卒中既往もしくは年齢60歳以上であった対象者に対して(平均年齢65歳程度、BMI 25弱)、代用塩(75%の塩化ナトリウムと25%の塩化カリウム)を使用した地域と通常の食塩を使用した地域に無作為割り付けし、平均4.74年間追跡し、総死亡、心血管死亡、脳卒中発症、非致死性急性冠症候群発症のすべてのイベントにおいて、代用塩を使用した対象者において通常の塩を使用した対象者よりも有意に少なかったことを報告した。本研究において、割り付け群が研究対象者にオープンにされた効果の影響も否定できないが、降圧効果によって心血管イベントのみならず総死亡まで有意に低下していることは驚きであった。オーストラリアの研究費を用いて中国のへき地で研究が行われてはいるが、塩分摂取量が多いアジア人でイベント抑制効果が認められており、わが国においても代用塩の普及が進む可能性がある。代用物として塩化カリウムが使用されており、高齢化の進むわが国では腎機能低下者における高カリウム血症による突然死の増加が危惧されるが、本研究においては有意な突然死の増加は認められなかった。

人種項目除外で、より正確な新eGFR算定式を構築/NEJM

 米国タフツ・メディカルセンターのLeseley A. Inker氏ら研究グループが、推算糸球体濾過量(eGFR)の算出に、血清クレアチニンとシスタチンCを組み込み人種項目を除外した新たなeGFR算定式を構築した。同算定式は、血清クレアチニンまたはシスタチンCのいずれかのみを用いて人種項目を除外した新eGFR算定式よりも、予測がより正確で、黒人と非黒人との差も小さかったという。従来のeGFR算定式は、黒人か否かの項目を含んでいるが、人種は社会的要素で生物学的要素ではなく、人種内の多様性を無視するとして、算定式を精査する必要性が高まっていた。NEJM誌オンライン版2021年9月23日号掲載の報告。

新世代ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneは2型糖尿病性腎臓病において心・腎イベントを軽減する(FIGARO-DKD研究)(解説:栗山哲氏)

心・腎臓障害の一因としてミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰発現が知られている。MR拮抗薬(MRA)が心血管系イベントを抑制し、生命予後を改善するとのエビデンスは、RALES(1999年、スピロノラクトン)やEPHESUS(2003年、エプレレノン)において示されている。そのため、実臨床においてもMRAは慢性心不全や高血圧症に標準的治療として適応症をとっている。2型糖尿病は、長期に観察すると高頻度(約40%)に腎障害(Diabetic Kidney Disease:DKD)を合併し、生命予後を規定する。DKDに対しては、ACE阻害薬やARBなどのRAS阻害薬が第一選択であるが、この根拠はLewis研究、MARVAL、RENAAL、IDNT、IRMA2など、多くの検証により裏付けされている。

心房細動患者に対する心臓手術では左心耳閉鎖も追加すべきである(解説:高月誠司氏)

心房細動患者には心原性脳梗塞の予防のための抗凝固療法を適切に導入することが大事である。近年経皮的左心耳閉鎖術はワルファリン内服とほぼ同等の臨床効果が報告され、保険適応となった。一方、外科的な左心耳閉鎖術、切除術は単独で行われることは少ないが、よく他の弁膜症や冠動脈疾患の心臓手術に伴い行われる。本LAAOS IIIは既知の心房細動患者が心臓手術を受ける際、左心耳閉鎖術を追加することの意義をランダム化比較試験で検討した。術後通常診療を継続中の脳梗塞や全身性塞栓症が1次エンドポイントである。大動脈クランプ時間、人工心肺時間や術中、術後の出血量は両群間で有意な差を認めなかった。

Data Driven Scienceの時代(解説:後藤信哉氏)

医学の世界では、ランダム化比較試験による仮説検証はエビデンスレベルが高いとされた。世界からランダムに対象症例が抽出され、バイアスなく無作為に各治療に割り付けることができれば、仮説検証ランダム化比較試験の結果には科学的価値が高いといえる。しかし、現実的には世界の症例の一部がランダム化比較試験の対象例として選択され、世界から完全に無作為に抽出されているとは言い難い。電子カルテの使用が一般的になり、医療データのデジタル化は進んでいる。クラウド上にて電子カルテの情報を共有できれば、現在のランダム化比較試験のように特定の症例を抽出するプロセスを排除できる。世界のすべての症例のデータが利用可能な世界では、真の意味でのdata driven scienceの世界ができると思う。英国は医療データベース化の進んだ国の一つである。本研究を見ると、database化が進んだ世界では、大規模データを用いて臨床的仮説を精度高く提案できることがわかる。