消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

切除不能HCC、TACEにレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用でPFS改善(LEAP-012)/Lancet

 切除不能な転移のない肝細胞がん(HCC)患者において、肝動脈化学塞栓療法(TACE)とレンバチニブ+ペムブロリズマブの併用療法は、TACE単独療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。全生存期間(OS)については、OS率の数値的な改善は示されたが、より長期の追跡調査が必要だとしている。近畿大学医学部の工藤 正俊氏らLEAP-012 investigatorsが、33の国または地域から137施設が参加した第III相無作為化二重盲検試験「LEAP-012試験」の初回中間解析の結果を報告した。TACEは切除不能な転移のないHCCの標準治療であるが、TACEとマルチキナーゼ阻害薬の併用を評価した以前の研究では、臨床結果に有意な改善は示されなかった。Lancet誌オンライン版2025年1月8日号掲載の報告。

切除不能HCC、TACEにデュルバルマブ+ベバシズマブ併用でPFS改善(EMERALD-1)/Lancet

 肝動脈化学塞栓療法(TACE)対象の切除不能な肝細胞がん(HCC)患者において、TACE+デュルバルマブ+ベバシズマブの併用療法が新たな標準治療となりうることが、スペイン・Clinica Universidad de Navarra and CIBEREHDのBruno Sangro氏らEMERALD-1 Investigatorsによる国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「EMERALD-1試験」の結果で示された。TACEは20年以上前に標準治療として確立されたが、TACEに関するガイドラインの記載は世界各地域で異なり、病期や腫瘍の大きさ、肝機能、合併症などが異なる多様な患者がTACEを受けている。無増悪生存期間(PFS)中央値は依然として約7ヵ月であり、研究グループは、ベバシズマブ併用の有無を問わずデュルバルマブの併用によりPFSを改善可能か評価した。著者は「最終的な全生存期間(OS)の解析および患者報告のアウトカムなども含むさらなる解析は、塞栓術が可能なHCCにおける、デュルバルマブ+ベバシズマブ+TACEの潜在的な臨床ベネフィットを、さらに特徴付けるのに役立つだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年1月8日号掲載の報告。

日本人男性のNa/K比、全死亡・NAD早期死亡・がん死亡と関連

 ナトリウム(Na)は、食塩そのものや高塩分食品の高血圧による心血管系疾患(CVD)や消化管がんへの影響を介して、非感染性疾患(NCD)リスクを高めると考えられている。 また、CVDの相対リスクはNa摂取量単独よりもNa摂取量/カリウム(K)摂取量(Na/K比)と密接に関連していると報告されているが、これらがNCDによる早期死亡リスクに及ぼす影響を調べた研究はほとんどない。今回、奈良女子大学の高地 リベカ氏らが前向きコホート研究であるJPHC研究で検討した結果、Na摂取量とNa/K比の両方が、中年男性における全死亡およびNCDによる早期死亡リスク上昇と関連し、さらにNa/K比はがん死亡とも関連していることが示された。The Journal of Nutrition誌オンライン版2024年12月27日号に掲載。

医師による腺腫検出率が大腸がんリスクに影響する(解説:上村直実氏)

大腸内視鏡検査の精度は施行医の力量に大きく左右されるものであるが、内視鏡医の技量を比較するための明確な尺度に関して信頼できるものがあるわけではなく、消化器内視鏡学会の認定専門医の有無や経験年数などに頼っているのが現状と思われる。欧米では、大腸内視鏡医の力量の尺度として、一般的に大腸内視鏡検査における腺腫検出率であるAdenoma Detection Rate(ADR)が用いられている。今回、ポーランドにおける大腸がん検診プログラム受診者の検査後の大腸がん発生率と検査施行医のADRとの関連を比較した研究結果が、2024年12月のJAMA誌に発表された。

MRIで膵臓がんの前駆病変を検出可能か

 膵臓がんは、膵臓自体が体の奥深くに位置しているため、生命を脅かすようになる前の早期段階で検出することは難しいことから、サイレントキラーと呼ばれている。しかし、拡散テンソル画像法(DTI)と呼ばれるMRI画像技術の一種が、膵臓がんのより早期の発見に役立つ可能性のあることが新たな研究で明らかになった。シャンパリモー臨床センター(ポルトガル)の放射線科医であるCarlos Bilreiro氏らによるこの研究結果は、「Investigative Radiology」に12月13日掲載された。研究グループは、これらの結果は膵臓がんリスクがある人の早期診断につながる可能性があると述べている。

若年性大腸がんが世界的に増加

 世界中で大腸がんに罹患する若者が増えているようだ。世界50カ国のうち27カ国で、若年性(50歳未満での発症)大腸がんの罹患率が上昇していることが、新たな研究で明らかになった。この研究の論文の筆頭著者である米国がん協会(ACS)がんサーベイランス研究のHyuna Sung氏は、「若年性大腸がんの増加は世界的な現象だ。これまでの研究では、主に高所得の西側諸国での増加が確認されていたが、今や世界中のさまざまな経済状況の国や地域で記録されている」と述べている。この研究結果は、「The Lancet Oncology」に12月11日掲載された。

外科医は器用?バズワイヤーゲームで評価/BMJ

 バズワイヤーゲーム(イライラ棒ゲーム)を用いた評価の結果、外科医は他の病院スタッフと比較して、手先が器用であったが不快な言葉を発する割合も高かった。一方、看護師および非臨床スタッフは、いら立ちの声を発する割合が高かった。英国・リーズ大学のTobin Joseph氏らが、前向き観察研究「Tremor研究」の結果を報告した。著者は、「病院スタッフの職種によって多様なスキルセットがあることが浮き彫りとなった。今後のトレーニングでは、器用さとストレス管理の両方を強化するためファミリーゲームを取り入れることが有用かもしれない。また、今後の募金活動では、外科医のswear jar(不快な言葉への罰金箱)の実施を検討すべきある」とまとめている。BMJ誌オンライン版2024年12月20日号掲載の報告。

肝臓手術前の瀉血療法は輸血リスクを低減する

 カナダ、オタワ在住の2児の母であるRowan Laddさん(46歳)は、2022年、予定されている肝臓に転移したがんを摘出する手術を開始する前に、血液を採取して保存する可能性があると医師から説明を受けた際、不思議には思ったが害はないだろうと考えた。Laddさんは、「肝臓には血管がたくさんあるので大出血のリスクがあることは手術前の説明で聞いている。研究者達がそのリスクを低減させるために努力しているのは素晴らしいことだと思った」と振り返る。  実際、Laddさんが参加した臨床試験の結果によると、このような採血により肝臓手術中に必要となる輸血のリスクが半減することが明らかになった。この研究結果は、「The Lancet Gastroenterology & Hepatology」に12月9日掲載された。論文の筆頭著者で、オタワ大学(カナダ)肝膵胆道研究部長のGuillaume Martel氏は、「大規模な肝臓手術の直前に血液を患者から採取することは、出血量と輸血を減らすための方法としてこれまでわれわれが見出した中で最良の方法だ」と述べている。

Ca拮抗薬・NSAID・テオフィリンと逆流性食道炎リスク/国立国際医療研究センター

 逆流性食道炎の有病率と薬剤などの危険因子について調査した結果、カルシウム拮抗薬、テオフィリン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用が逆流性食道炎の独立した予測因子であることが示唆された。国立国際医療研究センターの植田 錬氏らが、BMJ Open Gastroenterology誌2024年12月16日号で報告した。  この後ろ向き横断研究は、2015年10月~2021年12月に国立国際医療研究センターで食道・胃・十二指腸内視鏡検査を受けた患者を対象とし、質問票を用いて患者の特徴、病歴、喫煙・飲酒歴、内視鏡検査時に服用していた薬剤に関するデータを収集した。

医師の腺腫検出率改善が大腸がんリスク低下と関連/JAMA

 大腸がん検診プログラムで大腸内視鏡検査を受ける参加者において、医師の腺腫検出率(ADR)の改善が大腸がんリスク低下と統計学的に有意に関連することが示された。ただし関連が認められたのは、医師の改善前のADRが26%未満であった場合のみであった。ポーランド・Maria Sklodowska-Curie National Research Institute of OncologyのNastazja D. Pilonis氏らが、大腸がん検診プログラムのデータを用いた観察研究の結果を報告した。ADRの改善が大腸がん発生率の低下と関連しているかどうかは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2024年12月16日号掲載の報告。