消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:22

進行大腸がんでの免疫療法、治療中止後もその効果は持続か

 免疫チェックポイント阻害薬による治療を中止した進行大腸がん患者の多くは、治療中止から2年後でもがんが進行していないことが、新たな研究で確認された。本研究論文の上席著者である米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの消化器腫瘍内科のVan Karlyle Morris氏は、「ほとんどの患者のがんが治療中止後も進行しなかったという事実は、医師から治療の中止を提案された患者を安堵させるはずだ」と話している。  免疫チェックポイント阻害薬は、多くの大腸がん患者に新たな希望をもたらしている。通常、この治療薬により腫瘍が収縮するか安定化した場合には、医師は患者に治療の中止を提案する。当然のことながら、患者は、効果が現れている上に副作用も少ない治療を中止することに不安を抱く。Morris氏は、「ステージ4の大腸がん患者が、治療を中止した場合の再発リスクを心配するのは当然だ。この研究に着手した当初、われわれはそのリスクがどの程度のものなのかを知らなかった」と米国がん学会のニュースリリースで述べている。

ERCP後膵炎予防、インドメタシン単独の効果は?/Lancet

 内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)施行後の膵炎のリスクが高い患者における膵炎予防では、標準治療である非ステロイド性抗炎症薬インドメタシン+予防的膵管ステント留置の併用と比較して、インドメタシン単独投与は非劣性に至らないだけでなく予防効果が劣ることが、米国・サウスカロライナ医科大学のB. Joseph Elmunzer氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2024年1月11日号に掲載された。  本研究は、米国とカナダの20施設で実施した無作為化非劣性試験であり、2015年9月~2023年1月に患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

黒砂糖、がん発症を抑制か~J-MICC研究

 黒砂糖にはミネラル、ポリフェノール、ポリコサノールが多く含まれているが、黒砂糖が健康に役立つと評価した疫学研究はほとんどない。今回、鹿児島大学の宮本 楓氏らが、長寿者の割合が比較的高く黒砂糖をおやつにしている奄美群島の住民を対象としたコホート研究を実施したところ、黒砂糖摂取ががん全体、胃がん、乳がんの発症リスク低下と関連することが示された。Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition誌2023月12月号に掲載。

尿が黄色くなるメカニズムが明らかに

 尿中の黄色色素としてウロビリンが同定されているが、この発見から125年以上の間、ウロビリンの産生に関与する酵素は不明とされていた。しかし、米国・メリーランド大学のBrantley Hall氏らの研究グループが腸内細菌叢由来のビリルビン還元酵素(BilR)を同定し、この分子がビリルビンをウロビリノーゲンに還元し、ウロビリノーゲンが自然に分解されることで尿中の黄色色素ウロビリンが産生されることを明らかにした。また、BilRは健康成人ではほぼ全員に存在していたが、新生児・乳児や炎症性腸疾患(IBD)患者で欠損が多く認められた。本研究結果は、Nature Microbiology誌2024年1月3日号で報告された。

大腸がん、FTD/TPI+ベバシズマブ隔週療法の臨床試験開始。がん領域初のプラグマティック試験で/愛知県がんセンター

 愛知県がんセンターは、大腸がんを対象としたトリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)・ベバシズマブ併用の従来法と隔週法を比較する無作為化第III相試験(PRABITAS試験)を開始した。  FTD/TP+ベバシズマブは大腸がんの標準治療として世界中で広く用いられている。従来の投与方法は5日間内服後2日間休薬を2回行い、その後2週間休薬する28日サイクルである。この投与法は、標準療法として用いられる一方、有害事象(白血球減少や好中球減少)が比較的多くみられるため、5日間内服後に9日間休薬する14日サイクル(隔週法)が提案されている。隔週法では、小規模臨床試験で副作用軽減が示されているが、その有効性と安全性について、十分に検証されているとはいえない。

臓器によって老化速度に差

 特定の臓器だけ他の臓器よりも老化速度が速い場合があり、そのような臓器があると病気や死亡のリスクが高まる可能性のあることが、米スタンフォード大学神経学教授のTony Wyss-Coray氏らの研究で示された。同氏らによると、50歳以上の健康な人の約5人に1人で、少なくとも一つの臓器の老化速度が速まっていることが明らかになったという。研究の詳細は、「Nature」に12月6日掲載された。  Wyss-Coray氏らは、「これは悪いことのように聞こえるが、健康増進のチャンスでもある」と主張する。なぜなら、簡単な血液検査で急速に老化している臓器を特定することで、医師は、症状が現れる前にその臓器に関連する潜在的な病気の治療を開始できる可能性があるからだ。

糖尿病、肥満、膵臓がんの関連性が明らかに

 2型糖尿病の患者や肥満者では膵臓がんのリスクが高いことが知られているが、その原因の一端を明らかにした研究結果が報告された。インスリン値が高くなる「高インスリン血症」が、消化液を産生している膵外分泌細胞の炎症を引き起こし、そのことが前がん状態につながると考えられるという。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のJames Johnson氏らの研究によるもので、詳細が「Cell Metabolism」に10月31日掲載された。  糖尿病はインスリンの作用が低下するために高血糖になる病気。インスリンの作用が低下する原因として、膵臓の内分泌細胞の機能低下のためにインスリンの量が不足することと、インスリンに対する組織の感受性が低下すること(インスリン抵抗性)が挙げられる。2型糖尿病、特に肥満2型糖尿病では後者の影響が強い。インスリン抵抗性は血糖コントロールの悪化要因であるが、今回発表された研究によると、2型糖尿病や肥満者での膵臓がん発症リスク上昇にもかかわっているようだ。

大腸がんスクリーニングのための多標的便RNA検査―便潜血反応と比較して(解説:上村直実氏)

大腸がんは肺がんの次にがん死亡者数が多い疾患であり、世界的に早期発見のための検診が盛んに行われている。通常、1次検診では免疫学的便潜血検査(FIT)を用いた判定法が頻用されているが、さらに精度の高い検査法が探求されている今回、大腸内視鏡検査を行った症例8,000人以上を対象として、便中の多標的RNA検査(ColoSense)とFIT両群の感度と特異度を比較した無作為比較試験の結果が、2023年11月のJAMA誌に掲載された。大腸がんおよび進行腺腫に対するColoSenseの感度がFITに比べて有意に高い結果であり、著者らは、今後、通常のFITに代わりうる検査法として期待されると結論付けている(*欧米と日本における大腸がんの定義は少し異なっており、日本における病理診断では粘膜内がんと診断される病変は、欧米ではがんではなく進行腺腫とされることに注意が必要である)。

会話の時間が短いと非高齢者でも嚥下機能が低下?

 50~60歳代という誤嚥性肺炎が生じるにはまだ早い年齢層であっても、人と会話をする時間が短い人は、嚥下機能が低下している可能性のあることを示すデータが報告された。大分大学医学部呼吸器・感染症内科学の小宮幸作氏らの研究によるもので、詳細は「Cureus」に10月29日掲載された。  日本人の死亡原因の上位の一角は毎年、肺炎が占めている。死因としての肺炎の多くは高齢者の誤嚥性肺炎と推測されるが、その誤嚥性肺炎につながる嚥下機能の低下は高齢者に特有のものではなく、より若い年齢から加齢とともに徐々に進行していくと考えられる。ただし、どのような因子が嚥下機能の低下に関連しているのかは明らかにされていない。

原発性胆汁性胆管炎(PBC)に対するelafibranorの有用性と安全性(解説:上村直実氏)

原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、自己免疫学的機序による肝内小葉間胆管の破壊を特徴とする慢性胆汁うっ滞性肝疾患であり、徐々に肝硬変から肝不全へ移行するとともに肝がんをも引き起こすことのある疾患で、わが国の難病に指定されている。最近の診断技術や治療の進歩により肝硬変まで進展する以前に胆管炎として診断されるケースが多くなり、2016年にそれまで使用されていた原発性胆汁性肝硬変から原発性胆汁性胆管炎と病名が変更されている。進行期の症状としては掻痒感や黄疸が特徴的であるが、その前には無症状であることが多く、日本における患者数は中年の女性を中心として約5~6万人に上ると推定され、稀な疾患というわけではない。