感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:95

心血管疾患2次予防にインフルエンザワクチンは必要か

 急性冠症候群の治療期間中における早期のインフルエンザワクチン接種によって、12ヵ月後の心血管イベント転帰改善が示唆された。本研究は、スウェーデン・Orebro UniversityのOle Frobert氏らにより欧州心臓病学会(ESC 2021)にて報告された。Circulation誌2021年11月2日号に掲載。  実施された国際多施設共同二重盲検ランダム化比較試験(IAMI trial)は、2016年10月1日~20年3月1日の4シーズンに8ヵ国(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、ラトビア、英国、チェコ、バングラデシュ、オーストラリア)30施設で参加者を登録。急性心筋梗塞(MI)または高リスクの冠動脈疾患患者を対象に、入院から72時間以内にインフルエンザワクチンまたはプラセボを接種する群に1:1でランダムに割り付けた。  なお、過去12ヵ月間にインフルエンザワクチン接種を受けた者、入院したシーズン中にワクチン接種を受ける意思がある者は除外された。

モデルナワクチン2回接種、変異株ごとの有効性/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンmRNA-1273(Moderna製)の2回接種は、デルタ変異株、ミュー変異株を含む新たに出現した変異株に対して有効性を示し、とくにCOVID-19による入院に対して高い効果が認められることが、米国・カイザーパーマネンテ南カリフォルニア(KPSC、統合型ヘルスケアシスム)のKatia J. Bruxvoort氏らにより報告された。KPSCメンバーの接種者を対象としたtest negativeケースコントロール試験の結果で、これまでmRNA-1273ワクチンの特異的変異株に対する有効性を検討した試験はほとんどなく、今回の試験を行ったという。mRNAベースのCOVID-19ワクチンについてはデルタ変異株への有効性が低く、保護効果の減弱が報告されていた。BMJ誌2021年12月15日号掲載の報告。

COVID-19退院後の血栓イベント予防に、抗凝固療法が有用/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した高リスク患者において、退院後のリバーロキサバン10mg/日投与は抗凝固療法を行わない場合と比較し35日後の臨床アウトカムを改善することが、無作為化非盲検試験「MICHELLE試験」で示された。ブラジル・Science Valley Research InstituteのEduardo Ramacciotti氏らが報告した。COVID-19で入院した患者は、退院後に血栓イベントのリスクがあるが、この集団における血栓予防の効果は不明であった。Lancet誌オンライン版2021年12月15日号掲載の報告。  研究グループは、ブラジルの14施設において、COVID-19により入院し、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高い患者(VTE予防のための国際登録「IMPROVE」のVTEスコア≧4、または2~3でDダイマー>500ng/mL)を、退院時にリバーロキサバン10mg/日を投与する群(リバーロキサバン群)と抗凝固療法を行わない群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。

経口コロナ治療薬モルヌピラビルを特例承認/厚労省

 厚生労働省は12月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する経口抗ウイルス薬モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオカプセル200mg)について、国内における販売を特例承認した。申請者はMSD。重症化リスク因子を有し、軽症~中等症の入院していない18歳以上の患者が投与対象となる。ただし、動物実験において胎児毒性が報告されているため、妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与しない旨が、添付文書に「禁忌」として明記されている。本剤は11月10日、メルクと日本政府との間で約160万回分を提供することですでに合意しており、今回の承認を受け、速やかに提供が開始される見通しだ。新型コロナに特化した経口治療薬の承認は本剤が初めてとなる。

コロナに感染してもワクチン接種していると、コロナ入院リスクも重症化リスクも死亡リスクも低い(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による第5波の後、日本では感染者は激減して、多くの医療機関では今後押し寄せるだろう第6波に向けて、粛々と感染対策の見直しやコロナワクチンのブースター接種の業務を進めていることだろう。日本では水際対策が功を奏しているからかどうかはわからないが、世界で話題になっているSARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統、通称オミクロン株の大きな流行は12月中旬現在では認められていない。ただし米国の一部の地域や英国などでは冬になりオミクロン株が猛威を振るっている状況であり、日本でも感染対策の手を緩め過ぎることのないようにされたい。

新型コロナ再感染時の重症化リスク/NEJM

 新型コロナウイルスの初感染時と比較した再感染時の重症度について、カタールのNational Study Group for COVID-19 Epidemiologyが全国コホートのデータを用いて評価した。その結果、再感染時の入院/死亡リスクが初感染時に比べて90%低かったことを、Laith J Abu-Raddad氏らがNEJM誌オンライン版2021年11月24日号のCORRESPONDENCEで報告した。  カタールでは、2020年3~6月に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の第1波があり、その後人口の約40%がSARS-CoV-2の抗体を保持していた。その後、2021年1~5月に、B.1.1.7(アルファ株)およびB.1.351(ベータ株)による2つの連続した波が発生した。

オミクロン株時代における未成年者に対するRNAワクチン接種の意義は?(解説:山口佳寿博氏、田中希宇人氏)

本邦にあっては、2022年4月1日をもって民法第4条で定められた成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる。それ故、2022年4月以降、他の多くの先進国と同様に本邦においても18歳未満を未成年者と定義することになる。未成年者の内訳は複雑で種々の言葉が使用されるが、児童福祉法第4条と旅客及び荷物運送規則第9条の定義に従えば、1歳未満は乳児、1~6歳未満は幼児、6~12歳未満(小学生)は小児、6~18歳未満(小学生、中学生、高校生)は包括的に児童と呼称される。しかしながら、12~18歳未満(中学生、高校生)に該当する名称は定義されていない。未成年者に対するRNAワクチンの海外治験は生後6ヵ月以上の乳児を含めた対象に対して施行されている。これらの海外治験では、本邦の幼児、小児の定義とは少し異なり5歳児は小児として取り扱われている。そこで、本論評では、海外治験の結果を正しく解釈するため、5~12歳未満を小児、12~18歳未満を(狭義の)児童と定義し、オミクロン株時代におけるこれらの世代に対するRNAワクチン2回接種ならびに3回目Booster接種の意義について考察する。

新型コロナ予防接種実施の手引き(6版)を公開/厚労省

 厚生労働省は、12月17日に全国の市町村に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(6版)」を発出するとともに、同省のホームページでも公開した。本手引きは2020年12月17日の初版以来、十数回の更新を行い、その時どきの臨床知見、行政施策を反映した内容に改訂されている。  今回の改訂では、武田/モデルナ社ワクチンに関する記述、他施設へのワクチンの融通、ワクチンの移送に関する記述が大幅に追加された。  主な改訂点 【第4章2(5)ア(エ) ファイザー社ワクチンをシリンジに充填して移送する場合の留意点について追記】 在宅療養患者等に対して在宅において接種を行う場合は、希釈したファイザー社ワクチンをシリンジに充填した状態で移送することを可能としているが、以下の点に留意すること。 ・シリンジの充填作業は1ヵ所で行うこと。 ・ワクチンを充填したシリンジは、添付文書の記載に従い、2~30℃で管理し、揺らさないよう慎重に取り扱うとともに、直射日光および紫外線が当たらないようにすること。 ・希釈後は6時間以内に使用すること。 ・シリンジに充填した状態のワクチンを他施設へ融通しないこと。

医療機関でのブレークスルー感染事例の共通点は/感染研

 国立感染症研究所は、12月16日に同研究所のホームページで「ブレイクスルー感染者を含む医療機関、福祉施設などでのクラスター調査から得られた知見(簡略版)」を公開した。オミクロン株の拡大が懸念されている現在、クラスター抑止の観点からも参考にしていただきたい。  今回公開された知見は、2021年8月以降、医療施設や福祉施設などにおいて、ワクチン接種後一定の期間を経過した者のうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患する、いわゆるブレークスルー感染者を多数含むクラスターが報告されるようになったことに鑑み、「ブレークスルー感染者を多数含む複数の国内各地で発生したクラスターの各調査結果(計11事例)から得られた、共通すると思われる代表的な所見、および共通する対策に関する提案について、迅速性に重きを置いた形で簡略に紹介する」としている。

重症COVID-19患者への高流量酸素療法、気管挿管を低減/JAMA

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療において、鼻カニューレを用いた高流量酸素療法は従来型の低流量酸素療法と比較して、侵襲的機械換気の必要性を低減し、臨床的回復までの期間を短縮することが、コロンビア・Fundacion Valle del LiliのGustavo A. Ospina-Tascon氏らが実施した「HiFLo-Covid試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年12月7日号に掲載された。  本研究は、コロンビアの3つの病院の緊急治療室と集中治療室が参加した非盲検無作為化試験であり、2020年8月13日~2021年1月12日の期間に参加者の無作為化が行われ、2021年2月10日に最終的な追跡調査を終了した(Centro de Investigaciones Clinicas, Fundacion Valle del Liliの助成を受けた)。