内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

服薬アドヒアランスの悪い心血管疾患の患者に対して、一般的なテキストメッセージ、ナッジを追加したテキストメッセージ、ナッジとチャットボットによるテキストメッセージを提供しても、通常のケアと比較して12ヵ月後のアドヒアランスを改善しなかった(解説:名郷直樹氏)

ナッジやチャットボットという新しい介入手段が出現し、患者の服薬アドヒアランスを改善できるのではないかという視点で行われたランダム化比較試験である。服薬アドヒアランスの悪い心血管疾患の18歳から90歳までの患者を対象に、一般的なテキストメッセージ、ナッジを追加したテキストメッセージ、ナッジとチャットボットによるテキストメッセージのそれぞれの提供を通常のケアと比較し、12ヵ月後のリフィルの処方箋の発行のギャップを服薬アドヒアランスのアウトカムとして検討している。

血圧の経時的変動は高齢者の認知機能に悪影響を及ぼす

 血圧の管理は、心臓の健康のためだけでなく、加齢に伴い低下する頭脳の明晰さを保つ上でも重要であるようだ。時間の経過に伴い血圧が大きく変動していた高齢者は、思考力や記憶力が低下する可能性の高いことが、新たな研究で明らかになった。米ラッシュ大学のAnisa Dhana氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に12月11日掲載された。Dhana氏は、「これらの結果は、血圧の変動が高血圧自体の悪影響を超えて認知障害のリスク因子であることを示唆している」と述べている。  この研究では、白人と黒人を対象に実施されたシカゴ健康と加齢プロジェクト(1993〜2012年)への65歳以上の参加者4,770人(平均年齢71.3歳、女性62.9%、黒人66.0%)を対象に、経時的な血圧変動と認知機能との関連が検討された。試験参加者は、3年ごとに18年間にわたって血圧測定を受けていた。収縮期血圧と拡張期血圧は、前回の測定値との差の絶対値を全て合計し、それを測定回数から1を引いた数(n−1)で割って算出した。認知機能は、標準化された認知テストで評価して総合スコアを算出し、zスコアとして表した。

歩くのが速いと自認している肥満者、代謝性疾患が少ない

 肥満者において、主観的歩行速度が代謝性疾患のリスクと関連のあることを示唆するデータが報告された。同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科の山本結子氏、石井好二郎氏らが行った横断的解析の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に11月15日掲載された。  歩行速度は、体温、脈拍、呼吸、血圧、酸素飽和度に続く“第6のバイタルサイン”と呼ばれ、死亡リスクと関連のあることが知られている。しかし、歩行速度を客観的に把握するにはスペースと時間が必要とされる。よって健診などでは、「あなたの歩く速度は同世代の同性と比べて速い方ですか?」という質問の答えを主観的歩行速度として評価することが多い。この主観的歩行速度も代謝性疾患リスクと関連のあることが報告されているが、疾患ハイリスク集団である肥満者での知見は限られている。これらを背景として山本氏らは健診受診者データを用いて、肥満者の主観的歩行速度が代謝性疾患の罹患状況と関連しているかを検討した。

鳥インフルエンザA(H5N1)、ヒト感染例の特徴/NEJM

 米国疾病予防管理センター(CDC)のShikha Garg氏らは、米国で2024年3月~10月に確認された高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)のヒト感染症例46例の特徴について報告した。1例を除き、感染動物への曝露により短期間の軽度の症状を呈し、ほとんどの患者は迅速な抗ウイルス治療を受け、ヒトからヒトへのA(H5N1)ウイルスの伝播は認められなかったという。NEJM誌オンライン版2024年12月31日号掲載の報告。  米国の州および地域の公衆衛生当局は、A(H5N1)ウイルスの感染疑いまたは感染が確認された動物(家禽、乳牛)に、職業上曝露した人々を曝露後10日間モニタリングし、症状のある人から検体を採取してCDCのヒトインフルエンザリアルタイムRT-PCR診断パネルインフルエンザA(H5)亜型アッセイを用いてA(H5N1)ウイルスが検出された人を特定した。感染が確認された患者に対し、標準化された新型インフルエンザ症例報告書を用いて調査が行われた。

CKDを有する高血圧患者にも厳格降圧は有益?

 SPRINT試験で認められた厳格降圧(収縮期血圧目標:120mmHg未満)および標準降圧(同:140mmHg未満)のリスク・ベネフィットが、慢性腎臓病(CKD)を有するSPRINT試験適格の高血圧患者にも適用できるかどうかを調査した結果、SPRINT試験と同様に厳格降圧による予後改善効果は認められたものの、重篤な有害事象も多かったことを、米国・スタンフォード大学のManjula Kurella Tamura氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年1月7日号掲載の報告。  SPRINT試験において、糖尿病または脳卒中の既往がなく、心血管イベントリスクが高い高血圧患者では、厳格降圧のほうが標準降圧よりも死亡や心血管イベントのリスクが低減した。その一方で、急性腎障害などの特定の有害事象が増加したことや、進行したCKD患者では厳格降圧による心血管系へのメリットが減弱する可能性があることも示唆されている。そこで研究グループは、SPRINT試験の結果が、実臨床におけるCKDを有する高血圧患者にも適用可能かどうかを評価するために比較有効性試験を実施した。

アルコール飲み放題が飲酒問題に及ぼす影響はどの程度か

 国立国際医療研究センターの若林 真美氏らは、レストランやバーでのアルコール飲み放題と問題のあるアルコール消費パターンとの関連を調査した。BMJ Open誌2024年12月3日号の報告。  COVID-19パンデミック中の2022年2月の日本における社会と新型タバコに関するインターネット調査研究プロジェクト(JASTIS研究)のデータを用いて、横断的研究を実施した。問題のあるアルコール消費パターンは、アルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)で特定した。飲酒対象者1万9,585人(男性の割合:55%、平均年齢:48.3歳)をAUDITスコアに基づき、問題のない飲酒(AUDITスコア:0〜7)、問題のある飲酒(同:8以上)、危険な飲酒(同:8〜14)、アルコール依存症疑い(同:15以上)の4つに分類した。AUDITの設問3で2以上のスコアの場合、過度な飲酒と判断される。説明変数は、COVID-19パンデミック中の過去12ヵ月間(2021年2月〜2022年2月)における定額制のアルコール飲み放題の利用歴とした。定額制飲み放題の利用と問題のある飲酒または過度な飲酒、危険な飲酒またはアルコール依存症疑いとの関連を分析した。

甲状腺疾患と円形脱毛症の間に遺伝的関連がある可能性

 甲状腺機能低下症、慢性甲状腺炎(橋本病)、亜急性甲状腺炎と円形脱毛症(AA)の間には有意な関連性があることを示す研究結果が、「Skin Research & Technology」に9月27日掲載された。  Heping Hospital Affiliated to Changzhi Medical College(中国)のYue Zhao氏らは、2標本のメンデルランダム化解析を用いた研究で、AAと甲状腺疾患の潜在的な因果関係を検証した。甲状腺機能低下症、橋本病、甲状腺機能亢進症、亜急性甲状腺炎、バセドウ病が曝露因子として選択され、AAが結果変数とされた。データはゲノムワイド関連解析(GWAS)から取得された。

認知症診断後の余命と施設入所までの期間~メタ解析/BMJ

 認知症と診断された人々の平均余命は、男性では5.7(診断時65歳)~2.2年(診断時85歳)であり、女性は同年齢で8.0~4.5年であった。また、余命の約3分の1はナーシングホームで過ごしており、半数以上の人が認知症の診断後5年以内でナーシングホームに移っていた。オランダ・エラスムスMC大学医療センターのChiara C. Bruck氏らが、認知症の人々の生存またはナーシングホーム入所に関する追跡調査研究を対象に、認知症の人々のナーシングホーム入所および死亡までの期間に関するエビデンスを要約し、予後指標を探ることを目的として実施したシステマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「このシステマティックレビューでは、認知症診断後の予後は、患者、疾患、研究の特性に大きく依存していた。これらの知見から、個別化された予後情報とケアプランを提供できる可能性が示唆された。今後の研究では、診断時の患者を対象として、個別的要因、社会的要因、疾患ステージ、併存疾患を考慮し、生存だけでなく関連する機能的アウトカム指標を評価する必要がある」と述べている。BMJ誌2025年1月8日号掲載の報告。

日本人男性のNa/K比、全死亡・NAD早期死亡・がん死亡と関連

 ナトリウム(Na)は、食塩そのものや高塩分食品の高血圧による心血管系疾患(CVD)や消化管がんへの影響を介して、非感染性疾患(NCD)リスクを高めると考えられている。 また、CVDの相対リスクはNa摂取量単独よりもNa摂取量/カリウム(K)摂取量(Na/K比)と密接に関連していると報告されているが、これらがNCDによる早期死亡リスクに及ぼす影響を調べた研究はほとんどない。今回、奈良女子大学の高地 リベカ氏らが前向きコホート研究であるJPHC研究で検討した結果、Na摂取量とNa/K比の両方が、中年男性における全死亡およびNCDによる早期死亡リスク上昇と関連し、さらにNa/K比はがん死亡とも関連していることが示された。The Journal of Nutrition誌オンライン版2024年12月27日号に掲載。

慢性疾患の増加は腎機能を低下させる

 高齢者における多疾患併存は腎機能低下と強く関連しており、慢性疾患の数が増えるほど腎機能の低下度も大きくなることが、新たな研究で明らかになった。研究論文の筆頭著者であるカロリンスカ研究所(スウェーデン)のGiorgi Beridze氏は、「われわれの研究結果は、高齢者の腎機能低下のリスクを評価する際に、慢性疾患の全体的な負担だけでなく、疾患間の複雑な相互作用も考慮した包括的な評価の重要性を強調するものだ」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of the American Geriatrics Society(JAGS)」に12月17日掲載された。