ガイドラインでは薬物相互作用を強調すべき(解説:桑島 巌 氏)-322 わが国と同様、世界の先進国は超高齢化社会を迎えている。一方において、各国は主要な疾患に対してガイドラインを制定して、標準的治療の推進を呼びかけているという事実がある。実は、この2つは大きな矛盾も抱えているのである。すなわち超高齢化社会の最大の特徴は多様性であり、画一的な集団での研究から得られた臨床研究の結果であるガイドライン、あるいは標準的治療とは必ずしもそぐわないのである。
抗凝固療法の出血リスク、遺伝子型で異なる/Lancet ワルファリンの出血リスクについて、CYP2C9、VKORC1の遺伝子型を持つ患者において早期出血の傾向がある人を特定できることが示された。米国ハーバード・メディカル・スクールのJessica L Mega氏らが、ENGAGE AF-TIMI 48試験の被験者データを分析し報告した。検討では、ワルファリンと比較して、エドキサバンの早期安全性に関するベネフィットが大きいことも明らかになったという。Lancet誌オンライン版2015年3月10日号掲載の報告より。
臨床ガイドラインは複数疾患併存患者への考慮を/BMJ 英国・ダンディー大学のSiobhan Dumbreck氏らは、英国立医療技術評価機構(NICE)の12の臨床ガイドラインにおける複数疾患を有する患者に関する潜在的に重篤な薬物-疾患(drug-disease)および薬物間(drug-drug)相互作用の記述について、システマティックレビューを行った。その結果、患者が慢性腎臓病(CKD)を併存している場合を除き薬物-疾患相互作用の記述はまれにしかみられない一方、薬物間相互作用については多くの記述がみられたこと、ただしいずれもガイドラインでは強調されていないことを明らかにした。臨床ガイドラインを、複数疾患を併存する患者についてより考慮したものにすべきとの認識が増している。しかし、研究グループは「多くのガイドラインで薬物療法を推奨しているが、そのような患者を設定した薬物-疾患および薬物間相互作用に関する勧告はあまりみられないと思われる」として本レビューを行った。BMJ誌オンライン版2015年3月11日号掲載の報告より。
がん検診での過剰検出、人々の許容度は?/BMJ がん検診における「過剰検出」(症状がみられず早期死亡を引き起こすことのないがん病変をスクリーニングで検出と定義)について、一般の人々の受け止め方は事前に与えられる情報(死亡率やベネフィット)で大きく異なることが、英国・オックスフォード大学のAnn Van den Bruel氏らによるサーベイの結果、明らかにされた。乳がん、前立腺がん、腸がんスクリーニングの設定で調べたところ、腸がんスクリーニングでの過剰検出に対する許容度が有意に低かったという。著者は、「スクリーニング案内時に過剰検出の可能性やその影響に関する明確な情報を伝え、人々が情報に基づいた選択(インフォームド・チョイス)ができるようにしなければならない」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年3月4日号掲載の報告より。
FINGER試験:もしあなたが、本当に認知症を予防したいなら・・・(解説:岡村 毅 氏)-321 認知症リスクを持つ1,260人の高齢者を、食事療法・運動療法・認知トレーニング・血管リスクのモニタリングという、多領域にわたる介入群と対照群に無作為に振り分けたところ、介入群では認知機能低下を予防したというフィンランドからの報告である。実に当たり前の結果であるが、一流の論文とは当たり前のことをきちんと示すものだと認識しているので、まさに一流の論文だと思う。
禁煙アプリは本当に効果があるのか? 禁煙志向が高まる昨今、スマートフォンなどからダウンロードできる無料のモバイル禁煙支援アプリが多数開発されている。このアプリは、本当に禁煙の補助手段になりえるのだろうか?禁煙アプリの効果の予備評価結果を紹介する。
スタチンの効果、遺伝子リスクで異なる/Lancet 米国ハーバード・メディカル・スクールのJessica L Mega氏らは、JUPITER、CAREなど5試験の被験者データを分析し、冠動脈疾患の初発と再発両リスクを増大する遺伝子型に基づく遺伝リスクスコアを特定した。また、同スコアが最も高い人でスタチン治療の効果が最も大きいことも明らかにした。これまでの検討で、冠動脈疾患リスクと関連する複数の遺伝子型があることが示されていた。Lancet誌オンライン版2015年3月3日号掲載の報告より。
「骨粗鬆症」予防にはリスク認識が有効 骨粗鬆症は公衆衛生上大きな問題となっているが、そのリスクは過小評価され、患者はきちんとした治療を受けていない場合も多い。骨粗鬆症の予防にリスク認識は必須であるが、どの程度知られているのだろうか。日本人大規模年次調査結果を紹介する。
2011年米国では50万例がC.difficileに感染/NEJM 米国2011年のClostridium difficile (C. difficile)感染症発生者数の推定値は45万3,000人で、そのうち死亡は推定約2万9,000人に上ることが明らかにされた。米国疾病予防管理センター(CDC)のFernanda C. Lessa氏らが、米国10地域について行った調査で明らかにした。NEJM誌2015年2月26日号掲載の報告より。
バレニクリンによる禁煙治療は“優柔不断な喫煙者”の禁煙治療に向いている!(解説:島田 俊夫 氏)-320 最近JAMA誌 2015年2月17日号に報告された、Jon O. Ebbert氏らのバレニクリン(varenicline)禁煙治療に関する無作為臨床試験についてコメントする。