新型インフルエンザH7N9、初の院内感染例か/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2015/12/11

 

 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの院内ヒト-ヒト感染例が、中国・浙江省衢州市疾病予防管理センターのChun-Fu Fang氏らにより報告された。感染入院患者と5日間、同一病棟に入院していたCOPD既往患者への伝播が、疫学調査により確認されたという。その他同一病棟患者への感染が検体不足で確認できず、患者間の感染は確定できなかったが、著者は「今回の調査結果は、病院内での無関係のヒト-ヒト間におけるH7N9ウイルス感染のエビデンスを提示するものだ」と述べ、「インフルエンザ様疾患を呈した入院患者および家禽市場のサーベイランスを強化し、ウイルスの伝播・病原のモニタリングを十分に行う必要がある」と提言している。BMJ誌オンライン版2015年11月19日号掲載の報告。

同一病棟への入院歴があった2人の患者を疫学調査
 2013年2月にH7N9ウイルスのヒトへの感染が報告されて以来、中国では3回のエピデミックが発生している。しかし、これまでに報告されたヒト-ヒト感染例はすべて家族集団内で起きており、各自の病原体への曝露が原因あるいはH7N9ウイルスに感染しやすい遺伝的感受性による可能性を示唆するものであった。

 今回、疫学調査が行われたのは、2015年2月に同一病棟への入院歴があった2人の患者であった。無関係のヒト-ヒト感染の可能性を示唆するものであったことから、研究グループは、患者およびその濃厚接触者、局所環境から検体を収集し、rRT-PCR、ウイルス培養検査を行った。また、赤血球凝集抑制試験、マイクロ中和試験でウイルス特異抗体の検出を行い、臨床的データ、感染経路の追跡、系統樹分析、血清学的検査の結果を主要アウトカムとして評価した。

両患者のH7N9ウイルスはほぼ同一
 1例目の患者は49歳男性、鉱山労働者で掘削ドリルオペレーター。発熱(37.5℃)、咳、咽頭痛を訴え2月16日に村の診療所を受診。翌日、別の診療所を受診するが熱がひかず、18日に地方病院Aに入院した。CT検査で両肺に浸潤影を認め23日にB病院に転院。24日にH7N9ウイルスに感染していることが確認され、25日に専門病院Cに転院しオセルタミビル治療を受けたが、その後4月20日に死亡した。同患者については、症状発症が家禽市場を訪れた7日後であったことが確認されている。

 2例目の患者は57歳男性。COPD歴30年で、2月15日に増悪のためA病院に入院、18日に49歳男性患者と同じ病棟に転棟し5日間を過ごした。23日に病状が改善し退院したが、翌日、発熱(40℃)と咳を呈する。49歳男性患者との濃厚接触者と認定され25日にD病院に入院、H7N9ウイルス感染が確認され、26日に専門病院Cに転院となりオセルタミビル治療を受けたが、3月2日に呼吸不全のため死亡した。この患者については、家禽市場へは行っていないこと、また濃厚接触者に関しても発症前15日間に家禽市場へ行った人はいなかったことが確認されている。

 両患者のH7N9ウイルスは、ゲノムシーケンスの結果、ほぼ同一のもので、家禽市場で分離培養されたウイルスとも遺伝的に類似していたという。

 一方で、濃厚接触者38人に関する検査において、ウイルス特異抗体は検出されなかった。また、伝播が両患者間で起きたのかは、同一病棟からの検体不足のため確定はできていない。環境スワブ検体から、rRT-PCR検査でH7N9ウイルスの陽性反応が示されたが、ウイルスの培養には至らなかった。診断の遅れと複数回の転院により血清サンプルを集めることができず、H7N9ウイルスの抗体検査はできなかった。