神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:57

認知刺激の強い仕事は高齢期の認知症リスクを低下させる可能性/BMJ

 認知刺激が強い労働に従事している人々は、認知刺激が弱く受動的な労働に就いている人々と比較して、高齢期の認知症のリスクが低く、中枢神経系の軸索形成やシナプス形成を阻害する血漿タンパク質のレベルが低下していることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMika Kivimaki氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年8月18日号で報告された。  研究グループは、認知刺激が強い労働と、後年の認知症リスクの関連を評価し、この関連に関与するタンパク質生合成経路の特定を目的にマルチコホート研究を行った(NordForskなどの助成を受けた)。

抗CGRP抗体エレヌマブによる急性頭痛薬の減少効果

 トリプタンやエルゴットなどの片頭痛に特異的な治療薬(migraine-specific medication:MSM)を含む急性期治療薬の過度な使用は、薬物乱用頭痛の出現など健康への悪影響につながる可能性がある。米国・Geisel School of Medicine at DartmouthのStewart J. Tepper氏らは、反復性および慢性片頭痛患者における急性期治療薬(とくにMSM)の減少に対するエレヌマブの効果について調査を行った。The Journal of Headache and Pain誌2021年7月23日号の報告。  2つのエレヌマブの研究(反復性片頭痛患者955例および慢性片頭痛患者667例を対象とした試験とその後続試験)における二重盲検治療段階のデータを用いて、事後分析を行った。対象患者には、エレヌマブ(70または140mg)またはプラセボの月1回皮下投与を行った。毎日の急性期治療薬(MSMおよび非MSM)の使用については、治療開始4週前(ベースライン期間)から治療期間終了まで電子日誌を用いて記録した。アウトカムは、ベースライン時の急性頭痛薬使用患者における1ヵ月当たりの急性頭痛薬使用日数の変化、ベースライン時のMSM使用患者における1ヵ月当たりのMSM使用日数の変化、ベースライン時の非MSM使用患者における1ヵ月当たりの非MSM使用日数の変化として、測定を行った。

歯周病とアルツハイマー病リスク~メタ解析

 歯周病とアルツハイマー病(AD)や軽度認知障害(MCI)との関連を調査した研究結果は、一貫性が認められておらず、2017年に発表されたメタ解析では、不十分な研究が含まれていた。中国・上海交通大学のXin Hu氏らは、歯周病とADまたはMCIのリスクとの相関をシステマティックに評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Psychogeriatrics誌オンライン版2021年7月11日号の報告。  2人の研究者が独立して、各種データベース(CENTRAL、PubMed、EMBASE、China National Knowledge Interne、China Science and Technology Journal Database、Wanfang Data、www.ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform)より言語制限なしでスクリーニングを行った。含まれた研究の不均一性に応じて、変量効果モデルまたは固定効果モデルを用いて、メタ解析を実施した。

日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。  首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。

コロナワクチン接種後の脳静脈血栓症、VITT併存で重症化/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種後の脳静脈血栓症は、ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)が併存すると、これを伴わない場合に比べより重症化し、非ヘパリン抗凝固療法や免疫グロブリン療法はVITT関連脳静脈血栓症の転帰を改善する可能性があることが、英国・国立神経内科・脳神経外科病院のRichard J. Perry氏らCVT After Immunisation Against COVID-19(CAIAC)collaboratorsの調査で示された。研究グループは、これらの知見に基づきVITT関連脳静脈血栓症の新たな診断基準を提唱している。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月6日号で報告された。

抗CGRP抗体フレマネズマブ治療後の頭痛重症度と期間の変化

 フレマネズマブは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的としたヒト化モノクローナル抗体であり、片頭痛回数の減少が期待できる薬剤である。デンマーク・コペンハーゲン大学のMessoud Ashina氏らは、慢性片頭痛(CM)または反復性片頭痛(EM)患者を対象に、抗CGRP抗体フレマネズマブ治療による頭痛発作の重症度と期間に対する影響を評価した。Headache誌2021年6月号の報告。  3つの12週間ランダム化二重盲検第III相試験(HALO CM、HALO EM、FOCUS)のデータを用いて、探索的事後分析を実施した。3つの試験いずれにおいても、CMまたはEM患者をフレマネズマブ3ヵ月に1回投与群(1ヵ月目:フレマネズマブ675mg、2ヵ月目:プラセボ、3ヵ月目:プラセボ)、フレマネズマブ月1回投与群(1ヵ月目[CM]:フレマネズマブ675mg、1ヵ月目[EM]:225mg、2ヵ月目以降:225mg)、プラセボ月1回投与群に1対1対1の割合で割り付けられた。中~重度の頭痛日数の割合、ピーク時の頭痛重症度、毎月の平均頭痛時間(任意の重症度および中等度以上の重症度)、1日当たりの平均頭痛時間(すべての重症度)について、ベースラインからの変化を評価した。

腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021、“腰痛の有無”を削除

 『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 改訂第2版』が5月に発刊された。2011年の初版を踏襲しつつも今版では新たに蓄積された知見を反映し、診断基準や治療・予後に至るまで構成を一新した。そこで、腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン(GL)策定委員長の川上 守氏(和歌山県立医科大学 名誉教授/済生会和歌山病院 院長)に、脊柱管狭窄症の評価方法や難渋例などについて話を聞いた。  腰部脊柱管狭窄症診療ガイドラインの目的の1つは、これを一読することで今後の臨床研究の課題を見つけてもらい、質の高い臨床研究が多く発表されるようになることだが、脊柱管狭窄症の“定義”自体に未だ完全な合意が得られていない。そのため診断基準も日進月歩で、明らかになった科学的根拠を基に随時更新を続けている。今回は腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン初版の診断基準で提示していた「歩行で増悪する腰痛は単独であれば除外する」を削除し、以下のとおりに「腰痛の有無は問わない」と明記された。

脊髄性筋萎縮症で初の経口治療薬エブリスディ発売/中外製薬

 中外製薬株式会社は、8月12日に乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患である脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬であるリスジプラム(商品名:エブリスディ)のドライシロップ60mgの販売を開始した。本製品はSMAで初の経口の治療薬であり、患者・患児の治療での利便性の向上が期待される。  SMAは、脊髄の運動神経細胞の変性により筋萎縮や筋力低下を示す遺伝性の神経筋疾患。乳幼児では最も頻度の高い致死的な遺伝性疾患で、乳児期から小児期に発症するSMAの患者数は10万人あたり1~2人とされる。SMAの原因遺伝子はSMN遺伝子で、SMN1遺伝子の機能不全に加え、SMN2遺伝子のみでは十分量の機能性のSMNタンパクが産生されないため発症する疾患。

片頭痛発作の発症抑制薬、アイモビーグ皮下注発売/アムジェン

 アムジェン株式会社は2021年8月12日、ヒト化抗CGRPモノクローナル抗体製剤 エレヌマブ(遺伝子組換え)(商品名:アイモビーグ)を発売したことを発表した。本剤は2021年6月に「片頭痛発作の発症抑制」の効能又は効果で製造販売承認を取得していた。  本剤はCGRP受容体を阻害することで片頭痛患者における片頭痛を予防できるように特異的にデザインされた完全ヒトモノクローナル抗体。複数の臨床試験で本剤の安全性および有効性が検討されている。4,000人以上の患者が本臨床試験プログラムに参加した。アイモビーグは、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、スイスメディック(Swissmedic)、オーストラリア医療製品管理局(TGA)など、世界の多くの規制当局から成人の片頭痛予防薬として承認されている。

薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブ

 薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブの有効性および安全性について、イタリア・ボローニャ大学のUmberto Pensato氏らは、検討を行った。Neurological Sciences誌オンライン版2021年7月5日号の報告。  薬物乱用頭痛を伴う難治性慢性片頭痛に対するエレヌマブの有効性および安全性を評価するため、実生活環境下におけるプロスペクティブ多施設共同試験を実施した。対象は、3クラス以上の薬理学的治療に加え、onabotulinumtoxinAによる治療が奏効しなかった慢性片頭痛患者。