脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:138

「研究」からプロの「ビジネス」への転換:ランダム化比較試験の現在(解説:後藤 信哉 氏)-542

長らく臨床をしていると、日本にいても肺塞栓症などの経験はある。1980年代~90年代には循環器内科以外の内科の病棟管理もしていたが、一般の内科の救急入院症例に対して一般的に抗凝固療法が必要と感じたことはなかった。中心静脈カテールを内頸静脈から入れることが多かったが、内頸静脈アプローチが失敗した場合、下腿静脈アプローチとならざるを得ない場合もあった。後日、米国に友人を持つようになると、彼らにとっては下腿静脈からの留置カテーテルは血栓源として恐れられていることを知って、日米の差異に驚愕した。

SPRINT試験:frailな高齢者でも厳格な降圧が有用であることを示した点で画期的、ただし腎機能の悪化や有害事象も起こりやすい(解説:桑島 巖 氏)-540

今回のSPRINTサブ解析では、75歳以上の高齢者高血圧では収縮期血圧140mmHg未満を目指す標準降圧群よりも、120mmHg未満の厳格降圧群のほうが生命予後の改善に良好であることを示した点で画期的である。サブ解析とはいえども対象数は2,636例と、解析には十分堪えられる症例数であり、信頼性は高い。

CKD患者の心血管リスク、減塩で低下する可能性/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)患者では、尿中ナトリウム排泄量高値が心血管疾患(CVD)リスクの増加と関連していることを、米国・テュレーン大学のKatherine T. Mills氏らが、慢性腎不全コホート研究(Chronic Renal Insufficiency Cohort Study:CRIC研究)の結果、報告した。CKD患者は、一般住民と比較してCVDのリスクが増加していることが知られている。しかし、これまでは食事によるナトリウム摂取とCVDリスクとの関連について矛盾した結果が示されており、CKD患者でこの関連性は検討されていなかった。JAMA誌2016年5月24・31号掲載の報告。

SOCRATES試験:薬剤開発は難しい~良いと示すか、良さそうで終えるかの大きな相違(解説:後藤 信哉 氏)-539

薬剤の適応取得には、薬剤の有効性、安全性の科学的証明が必須と考えるのが世界のルールである。抗血小板薬を長期大量投与すれば出血イベントは増えると予想され、血栓イベントは減ると予想される。当局の認可承認を目指す試験では、過去の標準治療に比較して血栓イベントを減らし、出血イベントに差がないことを示すことが求められる。登録症例数が増えれば、臨床試験にかかるコストは増える。症例登録に時間がかかれば、認可承認されても十分利益を得る前に、薬剤の特許と独占販売権が消失してしまう。薬剤の認可承認を目指す臨床試験は本当に難しい。盲検のキーを開けるまで、試験関係者は胃がただれるほどのストレスであろう。

75歳以上も降圧目標120mmHgが至適:SPRINT試験サブ解析/JAMA

 75歳以上の非糖尿病高血圧患者について、目標収縮期血圧値を120mmHgとする強化降圧治療を行ったほうが、同140mmHgとした場合に比べ、心血管イベントや全死因死亡のリスクが、いずれも3割強低下することが示された。米国・ウェイクフォレスト大学医学部のJeff D. Williamson氏らが、2,636例を対象に行った多施設共同無作為化比較試験「SPRINT」の結果で、JAMA誌オンライン版2016年5月19日号で発表した。高齢の高血圧患者への至適治療は、議論の的となっていた。

脳梗塞/TIA再発予防にアスピリン早期投与が有効/Lancet

 一過性脳虚血発作(TIA)または軽度虚血性脳卒中(脳梗塞)後の早期再発リスクは、薬物療法によって低下し、とくにアスピリンが鍵となるとの結果を、英・オックスフォード大学のPeter M Rothwell氏らが、アスピリンの無作為化比較試験を統合し経時的解析を行い報告した。アスピリンは、脳梗塞の長期再発リスクを13%減少することが示され、TIAまたは脳梗塞の2次予防として推奨されている。しかしながら、重大な脳梗塞の再発リスクは急性期に高い。これまで、観察研究では早期から薬物療法を開始するほうが有用性は大きいことが示されていたが、アスピリンの効果は過小評価されていた。結果を踏まえて著者は、「従来考えられていたよりも、アスピリンを早期から開始することは有効であり、TIAが疑われる症状が現れた場合は自らアスピリンを服用するよう公衆衛生教育をしたほうがよい」とまとめている。Lancet誌オンライン版2016年5月18日号掲載の報告。

脳卒中/TIA患者へのticagrelor vs.アスピリン/NEJM

 虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の患者に対し、P2Y12受容体拮抗薬ticagrelor(国内未承認)を90日間投与しても、脳卒中や心筋梗塞、死亡の発生リスクは、アスピリンを投与した場合と同等であることが示された。米国・テキサス大学のS.Claiborne Johnston氏らが、33ヵ国1万3,000例超を対象に行った国際多施設共同無作為化二重盲検対照試験SOCRATESで明らかにした。ticagrelorはアスピリンと比べて、急性脳虚血を呈した患者において脳卒中の再発および心血管イベントの予防に、より有効な抗血小板療法とされていた。NEJM誌オンライン版2016年5月10日号掲載の報告より。

心筋梗塞・脳梗塞の発症確率予測モデルを開発~JPHC研究

 わが国の多目的コホート(JPHC)研究から、研究開始時の健診成績・生活習慣からその後10年間の心筋梗塞および脳梗塞の発症確率予測モデルを開発した研究結果が発表された。健診結果から自分で心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを計算できるため、禁煙などの行動変化や生活習慣の変容を通した心血管疾患予防に役立つことが期待される。Circulation journal誌2016年5月25日号に掲載。

複合ピルの肺塞栓症リスク、低用量エストロゲンで低減/BMJ

 複合経口避妊薬は肺塞栓症のリスクを増大することが知られるが、エストロゲンの用量を低量(20μg)とすることで、同高用量(30~40μg)の場合と比べて、肺塞栓症、および虚血性脳卒中、心筋梗塞のリスクは低減することが示された。フランス全国健康保険組織公衆衛生研究部門のAlain Weill氏らが、フランス人女性500万例を対象としてコホート研究の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「エストロゲン20μg用量のレボノルゲストレルを組み合わせた経口避妊薬が、全体として肺塞栓症、動脈血栓塞栓症の低リスクと関連していた」とまとめている。BMJ誌オンライン版2016年5月10日号掲載の報告。