脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:41

重度頭蓋内アテローム性動脈硬化による脳卒中、薬物+PTA/ステントは支持されず/JAMA

 症候性の重度頭蓋内アテローム性動脈硬化性狭窄による一過性脳虚血発作(TIA)または虚血性脳卒中を呈した患者において、抗血小板薬による薬物療法+経皮的血管形成術(PTA)またはステント留置術は、薬物療法のみと比べて、短期(30日以内)の脳卒中/死亡の発生または長期(30日超~1年)の該当動脈領域の脳卒中発生について、有意差は認められなかった。中国・首都医科大学のPeng Gao氏らが行った多施設共同非盲検無作為化・評価者盲検試験の結果で、著者は「結果は、症候性の重度頭蓋内アテローム性動脈硬化性狭窄を有する患者の治療として、薬物療法へのPTAまたはステント留置の併用を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2022年8月9日号掲載の報告。

tPA静注+経皮的脳血栓回収術が今後も標準治療として選択されることになるだろう(解説:高梨成彦氏)

 現在標準治療として推奨されているtPA静注+経皮的脳血栓回収術のBridging Therapyに対して、血栓回収術を単独で施行するDirect Thrombectomyの非劣性は示されなかった。とくに患者の半数を占めた中国とベトナムのアジア圏においてBTの有効性が高いという結果であった。  BT vs.DTに関しては下表に示したように本研究を含めて6つの試験が行われている。しかしDTの非劣性が示されたのはDIRECT-MTとDEVTの2つであり、これら2試験は非劣性マージンが広いこと、Door-to-IVT timeが長いことなどが指摘されている。

痛風発作、心血管イベントの一過性の増加と関連/JAMA

 痛風患者では、心血管イベントの経験者は非経験者と比較して、イベント発生前の0~120日以内に痛風発作を発症する確率が有意に高く、痛風発作後の心血管イベントの一過性の増加と関連する可能性があることが、英国・ノッティンガム大学のEdoardo Cipolletta氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2022年8月2日号に掲載された。  研究グループは、痛風発作が痛風患者における心血管イベントのリスクを一過性で増加させるとの仮説の検証を目的に、後ろ向き観察研究を行った(ノッティンガム大学などの助成を受けた)。

中等度スタチン+エゼチミブ併用は高用量スタチンに比べて、心血管疾患再発予防に非劣性で、かつ有害事象は少ない:ただしわが国とスタチン用量が異なる点は注意が必要(解説:桑島巖氏)

動脈硬化性疾患(ASCVD)を有する例において、2次予防のためにはLDLコレステロール値と再発予防の関係はthe lower, the betterが定着しつつある。本年度改定された、わが国の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」でも、2次予防のためにはLDLコレステロール値の治療目標値は70mg/dL未満としている。その目標値達成のためには、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)を最大量まで増量するか、あるいは中等度のスタチンと脂質低下機序の異なるエゼチミブを併用すべきか迷うところである。コレステロールの合成抑制と、消化管からの脂肪吸収抑制という異なる機序の薬剤を組み合わせることは、合理的と考えられるが、そのエビデンスが望まれていた。

急性期脳梗塞、血栓回収術単独療法の非劣性は確認されず/Lancet(解説:中川原譲二氏)

脳主幹動脈閉塞に起因する急性期脳梗塞に対する血栓回収術単独療法の有効性については、静脈内アルテプラーゼ+血栓回収術(併用療法)と比較して、その非劣性は確認されず、単独療法による再灌流の成功率が有意に低いことが、Urs Fischerらのthe SWIFT DIRECT Collaboratorsによる無作為化非劣性試験によって示された。研究の詳細は、Fischer U, et al. Lancet. 2022;400:104-115.で報告された。欧州とカナダで行われたこの多施設無作為化非盲検評価者盲検試験では、血栓回収術のデバイスとして、ソリティア ステント レトリーバーが用いられ、有効性の主要エンドポイントは、治療後90日の時点での修正Rankin scale(mRS)スコア0~2点の達成とされ、血栓回収術単独治療の併用療法に対する非劣性が評価された(Mantel-Haenszel リスク差の片側95%信頼区間[CI]の下限12%を非劣性マージンとした)。主な安全性評価項目は、すべての症候性頭蓋内出血とされた。

LDL-コレステロール:Still “The lower, the better!”(解説:平山篤志氏)

1994年に発表された4S試験以来、スタチンによるLDL-コレステロール(LDL-C)の低下が心血管イベントを減少させることがすべての試験で示されてきた。ただ、その機序がスタチンのLDL-C低下作用だけによるものなのか? あるいは、抗炎症作用を含めたプレイオトロピック効果が加わることによるのか? 長い間の議論があった。2005年に発表されたIMPROVE-IT試験さらには2017年に発表されたFOURIER試験で、非スタチン製剤の追加投与でLDL-Cを低下させることでイベント減少効果が示され、LDL-C低下の効果から、“The Lower, The Better”という論文がNEJM誌に掲載された。

レビー小体型認知症の初期症状~MEMENTO研究

 主観的認知障害(SCI)と軽度認知障害(MCI)は、レビー小体型認知症(DLB)の初期症状として知られている。フランス・ストラスブール大学病院のFrederic Blanc氏らは、ベースライン時にDLBの初期症状としてSCIおよびMCIを有する患者とそうでない患者の比較を行った。その結果、DLBの初期症状を有する患者では認知が遅く、行動障害、自律神経症状、羞明が多く認められ、脳MRIにおける後頭葉、前頭葉、嗅球の関与は、症状や既知の神経病理学的特徴と一致していたことが報告された。Alzheimer's Research & Therapy誌2022年7月19日号の報告。

コロナ感染後の心筋梗塞・脳卒中発生率、ワクチン接種者vs.未接種者/JAMA

 韓国・国民健康保険公団(National Health Insurance Service)のKim Young-Eun氏らが、新型コロナウイルス感染後のワクチン接種と急性心筋梗塞(AMI)および虚血性脳卒中との関連を調査した。その結果、新型コロナ感染後のAMIおよび虚血性脳卒中の発生率の増加は、血栓症のリスク増加に関連しており、ワクチンを完全接種することでワクチン接種が感染後の二次合併症のうちAMIおよび虚血性脳卒中のリスク低下に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版2022年7月22日号リサーチレターに掲載。

大気汚染と認知症リスク~メタ解析

 大気汚染と認知症リスクとの関連を調査した疫学研究の結果は、矛盾している。インド・National Institute for Research in Environmental HealthのVikas Dhiman氏らは、大気汚染による認知症発症リスクのプールされた推定値を明らかにするため、メタ解析を実施した。その結果、微小粒子状物質PM2.5はすべての原因による認知症、アルツハイマー病、血管性認知症のリスク因子であり、オゾン(O3)はアルツハイマー病のリスク因子である可能性が示唆された。Neurology India誌2022年5-6月号の報告。

日本人アルツハイマー病高齢者の手段的日常生活動作に対する影響

 鹿児島大学の田平 隆行氏らは、地域在住のアルツハイマー病(AD)高齢者における認知機能障害の重症度による手段的日常生活動作(IADL)の特徴を明らかにするため、生活行為工程分析表(PADA-D)を用いた検討を行った。IADLの工程を詳細に分析した結果、著者らは、地域在住のAD高齢者において重症度による影響の有無といった工程の特徴を明らかにできるとし、IADLのリハビリテーションやケアが在宅での生活を継続するうえで役立つ可能性を報告した。International Psychogeriatrics誌オンライン版2022年7月15日号の報告。  日本の医療センターおよびケアセンター13施設より募集した地域在住のAD高齢者115例を対象に、横断的研究を実施した。認知機能障害の重症度はMMSEを用いて3群(軽度:20以上、中等度:20未満10以上、重度:10未満)に分類し、共変量で調整した後、IADLスコアとPADA-DのIADL 8項目について群間比較を行った。PADA-Dの各IADL項目に含まれる5つの実行可能なプロセスの割合を比較した。